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2011/5/3の日記:第60回東京六大学合唱連盟定期演奏会

5月3日は上京して「六連」こと東京六大学合唱連盟の演奏会を聴いてきた。客席で聴くのは第57回以来。

何しろ正味7〜8ステージあるので、演奏会前の出来事(夜行で上京して新橋のネットカフェで仮眠して銀座のYAMAHAで買い物してゆうぽうとの大浴場で身を清めたのち客席へ)と、演奏会後の出来事(ゆうぽうとに泊まって表参道のKAWAIで買い物して六厘舎TOKYOで行列して新幹線で帰宅)は割愛。


エール交歓

明治、堅実な演奏。

慶應は譜面通りハ長調での演奏だが、今回のメンバーだったら嬰ハ長調で歌ってもよかったのでは。

法政、人数が少ないからってことで新入生を混ぜてるっぽいけど、混ぜるなら若手OBとかのほうが和音が安定しやすくなってよいと思う。

東大、学生指揮者が丁寧に仕事をしていることがよく分かった。

立教、後半で走ってなかったかしらん(ありがちな演奏だが)。最後のD-durの10度、和音が決まるのに1〜2秒ほどかかってた。

早稲田、ユニゾンで倍音が鳴るのは流石。ただ、一部のメンバーが [k] と [s] の子音をやたら出していたのが気になった。

第1ステージ:明治大学グリークラブ

『五つのオアハケーニャによる憧憬』
編曲:信長貴富
指揮:外山浩爾

メキシコ合衆国の南部にあるオアハカ州に伝わる民謡が原曲。信長氏にしてはひねりが少なく取り組みやすそうなアレンジなので、譜面が出版されたら取り上げる団体が結構いそう。

演奏はエール同様、小ぢんまりと整った破綻の少ない優等生のアンサンブル。4・5曲目ではパーカッションや足踏みが加わって楽しいステージだったが、主旋律とそれ以外のパートの対比がもう少し鮮明だとメリハリが増したかも。

第2ステージ:慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団

男声合唱曲『島よ』
作詩:伊藤海彦 作曲:大中恩
編曲:福永陽一郎
指揮:高村祐太(学生)
ピアノ:前田勝則

作曲者ご本人による男声合唱編曲が出版されているにもかかわらず、わざわざ未出版の福永編曲で演奏。まあワグネルにとって福永版のほうが相性はよいのかもしれない。

演奏は終始一貫して熱を帯びた濃密なもの。欲を申すなら、Second Tenorはもっと自己主張してよかったと思う。

第3ステージ:法政大学アリオンコール

『あなたへ 島』男声合唱と小石のために
作詩:李静和 作曲:高橋悠治

舞台に譜面台が6本並べられた。あれと思っていたら入場してきた演奏者は6名。『あなたへ 島』は2声なので(PDF形式の楽譜が作曲者のウェブサイトで公開されている)演奏可能だったわけだが、今後の六連はどうするんだろう。

パンフレットには指揮者として田中信昭先生のお名前が記されていたが、田中先生は入場して団の現状や曲目解説をしゃべったのち「この人数なら指揮者はいりませんよね。私は客席で聴かせていただきます」とのたまい舞台から降りた。そういえば田中先生はスピーチ冒頭で「アリオンとおつきあいしだした当初は70〜80人いました。今年は6人です」とも。

少人数での演奏、かえって曲にハマっていたのかもしれない。「島」とは韓国の済州島をさし、1948年に済州島で起きた民衆蜂起およびそれによる虐殺も描かれている作品なのだが、題材から想起されるような激越さは抑えられており、むしろ虐殺の後の悲しみや諦観みたいなものが感じられた。

余談ながら、拙ブログに「高橋悠治氏の合唱曲について小リポート」という記事がある。そこに書いた見解は現在も変わっていないので、ご興味のある方はどうぞ。

第4ステージ:東京大学音楽部合唱団コールアカデミー

『Good Old Melodies』
指揮:有村祐輔

例によってカウンターテナーを駆使したステージ。だがルネサンスものではない。伝統の力で安心して聴ける。

ところでパンフレットの曲目紹介は「異国の郷愁に身を任せてみてはいかがでしょうか」とかいう体裁で、解説ゼロ。おそらく余計な先入観抜きに聴いてほしいという意図なんだろうけど、作者のクレジットが「作詞:John Petre 他」「作曲:Henry R. Bishop 他」って不親切すぎではなかろうか。

家に帰ってから調べてみたら、どうも19世紀後半〜20世紀初頭に書かれた小品を集めたステージらしい。「Foresters sound the cheerful horn」は「埴生の宿」作曲者によるオリジナル合唱曲。「I Do Like To be Beside the Seaside」はイギリスのミュージックホール発祥の歌で、QUEENが「輝ける七つの海」のエンディングに引用しているそうな。「Calme des nuits」はサン・サーンスの混声合唱曲。「The Mermaid」はイギリス民謡が原曲で、もしかするとキングズシンガーズのレパートリーかな? 「The Long Day Closes」はアーサー・サリヴァン作曲のパートソング。最後に演奏された「Wiegenlied」は当方の不勉強で作曲者情報にたどりつけず(追記:ブラームスの独唱曲を合唱アレンジしたものであると、ツイッター上で団員さんからご教示をいただきました)。

第5ステージ:立教大学グリークラブ男声合唱団

男声合唱組曲『白き花鳥図』
作詩:北原白秋 作曲:多田武彦
指揮:高坂徹

唯一ブラヴォーの声がかかったステージ。ネットで見かける感想にも賞賛の声が多い。確かに、これだけ演奏できれば、入場券なりの値打ちはある。特に終曲の独唱は見事だった。

だけど『白き花鳥図』を歌うなら、もっと流麗かつ繊細に磨き上げてほしいと思う。引っ掛かった点を端的に挙げるなら、パートソロがところどころ朴訥だったし(特に1曲目冒頭)、曲の途中で転調してもサウンドの色彩感があまり変わらないように聞こえたし。高坂先生がどこまで練習および演奏に納得しておられるか気がかりなところ。

第6ステージ:早稲田大学グリークラブ

『ヒメサマクエストXI 〜伝説の花束〜』
編曲・ピアノ:久田菜美 エレクトーン:並川弥央
指揮:東松寛之(学生)

ポップスの合唱編曲を寸劇でつないでいくステージは、賛否両論なのも含め、もはや恒例。せきは支持派であることをここに明記する。自己満足と評する人もいらっしゃるようだが、それは狭いターゲット(主に、演奏者に近い世代の層)のネタが多いことなどによるものだろう。聴衆を楽しませようとする思いに溢れていることは、客席の反応を見れば一目瞭然。

ターゲットの狭さが特に如実に表れたと思われるのは、一同が歓喜する中に緑の葉を貼りつけたブリーフ一丁の男たちが乱入し「YATTA!」と連呼するエンディングへの反応。あれは、10年以上前にフジテレビ系列で放映されていたバラエティ番組「笑う犬の冒険」の代表的コントのひとつ「はっぱ隊」を再現したものである。せきは懐かしさに大笑いしたものだ。体のたるみ加減も、意図したものかどうかはともかく、オリジナルに忠実。

ほか、2群合唱でAKB48「逢いたかった」とピンク・レディー「UFO」が交錯するシークエンスも秀逸だと思った。一方、別の歌で、あるパートだけ違う歌詞を歌うくだりについて、その違う歌詞が聞き取りづらかったのは残念。

なお、早稲グリのバラエティステージが他団体より長時間である点について苦言を呈する人が毎年いらっしゃることを付記しておく。

第7ステージ:合同演奏

男声合唱のための『よいしょ!』
作詩:桑原茂夫、谷川俊太郎
作曲・指揮:松下耕
ピアノ:前田勝則

曲間で松下先生がしゃべりながらの進行。松下先生の指揮は、歌い手を泳がせ、そのエネルギーを「祈り」などのキーワードによって特定の方向に振り向けてまとめる音楽づくりのように見受けられる。今回も合唱団員はイキイキと歌っていた。

新作は5曲とも喜んで取り上げたがる人たちが多そう。「Sanctus-Benedictus in G」はシンプルで清澄な曲。「Cantate Domino in B♭」との連作かな? 「Ave Maria Scholaris」はラテンフレーバーのポップスで、サンバパーカッションと共演したらさらに面白くなりそう。「眠れない夜に舞いつづけよう」は白眉というべきラブバラード。「俵積み唄」「今年」は他の編成で定評のある曲で、男声合唱版を待ち望んでいた人も多かったことだろう。

アンコールとして「Cantate Domino in B♭」男声合唱版(ステージ初演かな?)と、本編3曲目の再演「眠れない夜に舞いつづけよう」の2曲が演奏され、後者では前田先生も合唱に混ざって歌った。


満ち足りた後味の演奏会であった。合同演奏によるところが大きいだろう。出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。

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