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2014/05/25の日記:花いっぱい音楽祭 2014 〜響き合う三善ワールド

日曜の昼下がり「花いっぱい音楽祭 2014 〜響き合う三善ワールド」を聴きに長岡リリックホールへ出かけた。


花いっぱい音楽祭は毎年「長岡市花いっぱいフェア」に併せて行われるイベント。せきが足を運ぶのは「花いっぱい音楽祭 2008 〜ボンジョルノ イタリア」および「花いっぱい音楽祭 2011 〜ウィーンからの贈り物 音楽の花束」以来、3回目。

近年は前述したような、西洋クラシック音楽としてなじみ深いテーマが設けられていたが、今回は昨年亡くなった三善晃氏の特集。三善晃氏は1996年から15年間にわたって長岡市芸術文化振興財団の芸術顧問として、長岡リリックホールのプログラム・アドヴァイザーを務めてきたというご縁があるためとのこと。

一般人にはなじみの薄いテーマだからか、チケットの前売りは例年になく苦戦しているという噂を小耳に挟んでいたが、開演したら客席は3分の2前後の入りであったように見えた。出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。


ピアノソロ

三善晃氏は20年もの歳月をかけ「Miyoshi ピアノ・メソード」という独自のピアノ教則本をまとめた。

そこに収録されている練習曲を小学生3名が演奏。昨今の小中学校では個人情報の取扱いが厳しくなっていることを考慮して奏者の氏名記載は差し控えるが、1人目は「風さんみーつけた」「かかしも踊る」、2人目は「波間のバラード」「オルゴール変奏曲」、3人目は「さざめく光たち」「仮面の踊り」を弾いた。

入門者の子ども向けに書かれたせいか、技術的な入口は低め。ただ、左手と右手に同格の運動性やフレージングを要求する曲ばかりなのが特徴的。合唱曲で耳馴染みのある和音も時々顔をのぞかせる。ピアニストならずとも、多少なりともピアノの手ほどきを受けたことのある人(合唱だと指揮者やパートリーダー)が三善作品に取り組む際に「Miyoshi ピアノ・メソード」に触れておくと、いろいろと得るものがあるかもしれない。

弦楽四重奏

〈黒の星座〉弦楽四重奏曲第III番
弦楽四重奏:アンサンブル・オビリー

オリジナルはギターと弦楽四重奏のために書かれた曲だが、今回は作曲者自身が弦楽四重奏のみのために改作したバージョンでの演奏。

演奏者は、新潟県を地盤に活動するチェロ奏者・片野大輔氏らによるカルテット。ナビゲーター(いわゆるMC)の藤井芳氏が紹介していたコメントによると、練習していて一瞬たりとも気の抜けない曲という感想だったとのこと。

ヴァイオリン2つとヴィオラとチェロが各々異なる旋律線で動きながら、ときおり全楽器がユニゾンで揃って同じ線をたどる曲。三善氏の合唱作品だと『王孫不孫』冒頭を拡大したみたいな書法なのかな?

歌曲

三善晃詩「貝がらのうた」「仔ぎつねの歌」「栗の実」
萩原朔太郎詩『抒情小曲集』より「ほほづき」「小曲」
茨木のり子詩「一人は賑やか」
ソプラノ:佐藤晶子/ピアノ:金子陽子

独唱者の軽妙洒脱な歌いくちが楽曲それぞれの持ち味と相まって、興味深く聴くことができた。

最初の3曲は児童合唱でも親しまれている。男声合唱とも相性がよさそうな曲に聴こえた。

次の『抒情小曲集』からの2曲は、古風。どことなく典雅。

「一人は賑やか」は作曲者自身が好んで歌ったというカンツォーネ。混声合唱版や男声合唱版があるし、共演パートもピアノ2手and/orギター版や、ピアノ4手版がある。ちなみに男声合唱版を初演したのは合唱団「弥彦」の男声パート(今年また取り上げるみたいですね)。

ギター

プロターズ
デュオ:荘村清志・畠山徳雄
エピターズ
ソロ:荘村清志

幅広い音域が駆使され、運動性の高い曲。クラシックギターの、これまで見てきたものとは違う顔が見えたような思い。三善氏は古くからウクレレやギターを好んで爪弾いていたそうで、楽器について思い入れが深かったのではないかと、ナビゲーターの藤井氏が語っていた。

荘村氏は、音楽祭プロデューサー畠山氏の畏友にして、三善氏とゆかりの深いギタリスト。三善氏とのエピソードとして「三善氏に新作を委嘱したときの打ち合わせで、朝8時に家に来るように言われた。自分は夕方から晩に練習をして夜は呑むという生活だったので朝8時は厳しかったが、三善氏が夕方に寝て夜更けに起床し周辺の物音が静まり返った午前2時頃から作曲のペンをとることを知り納得した。打ち合わせの場でスペインのお酒をすすめられた」みたいな話をしておられた。

休憩(15分間)

例年はホワイエにいけばな作品が並んでいるのだが、今年は長岡大手高等学校書道部による「書道ガールズ」さながらのパフォーマンスが披露された。その様子を、最終ステージ出演者の福島章恭氏がカメラにおさめていた。

ロビーでは、三善氏がらみの新聞記事と、このたび演奏される「エピターズ」「新潟県立長岡大手高等学校校歌」「長岡市立旭岡中学校校歌」の楽譜と、荘村氏を取り上げた雑誌記事と、16年前に行われた「第33回 長岡市民音楽祭」三善晃合唱作品特集のプログラムと、そのときの三善氏ご夫妻・清水敬一氏(ゲストとして合唱団「甍」を指揮)・畠山徳雄プロデューサーを撮った楽屋写真が展示されていた。畠山氏は本日のプログラムで「第33回 長岡市民音楽祭」について《今回と同じ気持ちで三善作品に臨もうとした。ところが先生からOKをもらえず、代りに合唱曲だけでプログラムを組んだほろ苦い過去がある》と記しておられる。

吹奏楽

長岡ファンファーレ
吹奏楽のための クロス・バイ・マーチ
吹奏楽:楽器の動物園ウヰンドバンド長岡

「長岡ファンファーレ」は三善氏が長岡市のために書き下ろした、金管アンサンブルのためのごく短い曲。リズムの鋭い切れ味が格好いい。

「クロス・バイ・マーチ」は1992年全日本吹奏楽コンクール課題曲として書き下ろされた。リズム隊はずっと行進曲っぽいリズムを刻んでいるものの、それ以外のパートでは変拍子による小節内不等分割ばかりで、課題曲の中では難曲のひとつと言われているそうな。ただ、こういう拍節の取り扱いで書かれた曲って、小節の拍節と歌詞のフレージングがズラされているという形のなら、合唱には結構あるんですよね。三善作品だと、「木とともに 人とともに」とか、「死と炎」(『クレーの絵本 第2集』終曲)とか。

思い出を語る

(公財)長岡市芸術文化振興財団で専務理事を務める神林茂氏と(公財)東京フィルハーモニー交響楽団で広報渉外部長を務める松田亜有子氏と、聞き手の藤井芳氏による鼎談。

神林氏からは、長岡市芸術文化振興財団の芸術顧問に三善氏を招聘した経緯についての話など。

松田氏は長崎県の活水女子大学でピアノを専攻していた当時、長岡リリックホールで三善氏プロデュースにより行われた人材育成事業「響き合うピアノ」に参加したことをきっかけに長岡リリックホールとの縁ができ、卒業後は長岡市芸術文化振興財団に就職して神林氏のもとで働いていたという人。在職中、現在の職場から声が掛かり、三善氏に相談したら背中を押していただいた、などの話。

ここで三善氏の令夫人・由紀子さんからのメッセージが代読される。このたびの音楽祭には令夫人にも招待状を出していたのだが「夫の作品を聴くのが今もつらく、この種の催し物はすべて失礼申し上げている」とのこと。

校歌

長岡市立旭岡中学校 校歌“宇宙の鳥”
歌・ピアノ:旭岡中学校 生徒の皆さん
新潟県立長岡大手高等学校 校歌
歌:永井優子(ソプラノ)、長岡大手高等学校書道部/ピアノ:金子陽子

三善氏が遺した作品の中で、音楽に興味の薄い人からも多くの注目を集めているのが、実は校歌だったりする。中でも、福島県立清陵情報高等学校校歌「宇宙の奥の宇宙まで」に登場する「発信 ゆんゆん」という文言は、ネット界隈で時々ネタにされているところ。

「宇宙の鳥」は、三善氏と数多く共同制作をした宗左近氏による作詩。前述の「宇宙の奥の宇宙まで」もこのコンビによるもので、いかにもというフレーズがちらほら。宗氏と長岡市には、第二次世界大戦や縄文という共通項があるのだが、なぜか接点は皆無で、おそらくこの校歌が唯一のコラボレーションであろう。

楽曲は若々しく快活で、ちょっとポップなもの。終盤で歌パートが2声に分かれるが、3度並行とユニゾンだけ。

長岡大手高等学校はもともと女子高だったが、1974年に男女共学となった。そこで、従来の校歌が男子生徒にとっては音域が合わず歌いにくいから新たに校歌を作ろうということになり、この曲が生まれたとのこと。

楽曲は、小千谷市出身の詩人・西脇順三郎氏による詩と相まって、シンプルにして格調高いもの。

なお、長岡大手高等学校にはちょっと前まで合唱部があったのだが、顧問の転任に伴って部が消滅したとのこと。

混声合唱

唱歌の四季
指揮:福島章恭/合唱:長岡混声合唱団/ピアノ:小山恵・齋藤淳子

隅々まで目配りのされたフレージングで、合唱もよくコントロールされており、いわゆるクラシック音楽らしさが前面に出て、品格にあふれたサウンドであった。「紅葉」と「ゆき」をattacca subitoでつないだり、それまで使っていた指揮棒を終曲「夕焼小焼」では持たずに振ったりなども新鮮。それだけに「夕焼小焼」の終盤、ソプラノの「り(A5音;2点イ音)」で音が割れてしまい、最後までハーモニーが立ち直らなかったことは残念至極。


エンディングは出演者一同(都合で退館した人もいたけど)が舞台に集まり、客席と一緒にパンフレット表紙の花を掲げてホール内を花いっぱいにするという、毎年恒例の演出。


三善作品を集めた演奏会は日本各地でたくさん開かれているけれど、「Miyoshi ピアノ・メソード」や校歌なども取り上げたのはこれが唯一であろう。たいへん意義深い演奏会であったと思う。

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