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2015/06/28の日記:第64回東西四大学合唱演奏会

第32回立教大学グリーフェスティバルを聴きレセプションにお邪魔したあと泊まって、翌日の東西四大学合唱演奏会、略して「四連」を聴いてきた。四連は第48回(1999年)以来、実に16年ぶりである。当然このブログに感想を書くのは初めて。

出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。やはり四連は濃密な演奏会ですね。


チケットは関西学院グリークラブから購入。S席を申し込んだら、2階1番1列のチケットが届いた。

6月19日の夜、当日券を買いに並ばなきゃかなと思いながら各団体のウェブサイトを回っていたら、早稲田・慶應は締め切っていたものの関学が受付中なことに気づき、締め切り間際ということで大急ぎで購入を申し込んだ。すると女子マネージャーのおひとり(演奏会パンフレットには14人のお名前あり)から22日に注文確認のメールをいただき、24日に速達郵便でチケットが到着。「本番直前のため迅速に代金を振り込んでください」ということで、翌日その通りに手配し、26日付けで入金処理完了。

時間のない中、有難うございました。


開場時間の15時ちょっと前に、すみだトリフォニーホールに到着。開場早々に入場し、合同ステージで委嘱初演される男声合唱組曲『達治と濤聲』の出版譜を購入。

合同ステージを指揮する山脇卓也氏(今年5月3日に酒席をご一緒させていただいて以来)とロビーで会釈したのが開演間際だったかな。


エール交歓

同志社グリークラブはプログラム本編に比べると若干粗かったかな? 関西学院は伝統の力で盤石。早慶は六連のときの感想に同じ。

第1ステージ:同志社グリークラブ

男声合唱のための『ラプソディー・イン・チカマツ』
作詩:近松門左衛門/作曲:千原英喜
指揮:伊東恵司
  • 壱の段
  • 貳の段

今年5月に男声合唱版が全曲初演されたばかりな曲の再演。東京初演でもある。

原曲の混声合唱版出版譜には[近松門左衛門狂想]というサブタイトルが付けられている。特に「貳の段」で、このサブタイトルにふさわしいパフォーマンスが繰り広げられた。和太鼓やちゃんちきが打ち鳴らされる中、途中で歌い手はステージコートを脱ぎ捨て法被姿になり、時には手拍子も交えつつ、クモの糸みたいに広がるテープ(ペーパーストリーマーというらしい)も投げられつつ、まさしくお祭り騒ぎ。

一方、順序が前後するが「壱の段」は基礎体力の充実ぶりと伊東メソッドが深く浸透していることが十二分に伝わる、かっちりした演奏。

欲を申すなら、演奏順は慶應ワグネルと逆のほうがよかったのではと思う。ツカミにしてはインパクトの強烈なステージだったから。

第2ステージ:慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団

Quatre petites prieres de Saint Francois d’Assise(アッシジの聖フランチェスコへの4つの小さな祈り)
作曲:Francis POULENC
指揮:佐藤正浩
SALTARELLE(サルタレッロ) Op.74
作曲:C.SAINT-SAENS
指揮:佐藤正浩

『アッシジ(後略)』。教会で歌われる聖歌ならではの静謐さというイメージを、この曲に私は抱いている。だが今回の演奏は、その個人的印象とは対極ともいうべきバイタリティ溢れるもので「こんなアッシジもあるのか!」と目を見開かされる思いだった。臨時記号や転調が多用され音取りの難儀な曲だけど、むろん音符に負けている様子はまったくない。この曲は、半円フォーメーションで演奏された。少人数でアカペラ宗教曲を歌う際にありがちな並びだが、ワグネルみたいな四十何名かの規模では珍しい。

山台に沿ってまっすぐに並び替え、『SALTARELLE』。目配りの行き届いた、しゃれっ気たっぷりの演奏。ちなみにこの曲はプログラム本編の中で唯一せきも歌った経験があり懐かしく聞いた。


ここでインターミッション。ロビーに出て男声合唱団 タダタケを歌う会の新倉会長とお目にかかり、前日の立教大学グリーフェスティバルについて少々話す。また、同会音楽監督の高坂徹氏と、昨日のグリーフェスティバルに引き続いてご挨拶。立教グリーOBだと他に昭和58年卒の先輩や昭和63年卒の先輩のお姿も見かけたが、昨今あまり折り合いのよろしくない方々ばかりなのでご挨拶は差し控えた。

近くに伊東恵司氏がいらしたが、お姿を見かけて早々に予ベルが鳴りだし急いで客席へ戻られたので、ご挨拶しそびれた。


第3ステージ:関西学院グリークラブ

トルミス男声合唱曲集
作曲:Veljo Tormis
指揮:広瀬康夫
  • Pikse litaania(雷鳴への祈り)
  • Kokko lenti koillisesta(北東から鷲が舞った)
  • Incantio maris aestuoi(大波の魔術)

広瀬氏が指揮する演奏の持ち味のひとつは、居合の達人が藁の束や竹を一刀両断で斬るかの如き、切れ味の鋭いフォルテだと思う。それが遺憾なく発揮されたのが「雷鳴への祈り」。バスドラムや足踏みも効果的だし、それに拮抗する合唱も見事。

並びが変わって「北東から鷲が舞った」。前後の曲とは対照的な、和やかなサウンド。

また並び替えて「大波の魔術」。力強さと丁寧さがうまくミックスした演奏。関学が歌うとこうなるのですね。7月5日に「第4回全日本男声合唱フェスティバルin京都」で再演するようなので、関西方面にお住まいの方は是非。

「大波の魔術」といえば曲中に挿入されるWhistleが印象的だが、今回、前半は恐らく手笛2名だか3名だかによる指笛、後半は指笛だか口笛だか口笛で演奏された。譜面の指示は「Whistle」のみで、前半と後半で鳴らし方を変えるのは解釈の範疇であろう。ただ、前半の最後(ユニゾンで「saeviendum」と連呼するくだり)、譜面だとWhistleは最高音までずり上がるよう記されているが、演奏では音高が変わったように聴こえなかったのが気になったずり上がる幅が狭いようで音高の変化がよく分からなかった。意図したものか、単なる事故かは分からないが、場面転換で重要な役割を果たす動きなのでもったいなく思う。

第4ステージ:早稲田大学グリークラブ

男声合唱のためのカンタータ『土の歌』
作詩:大木惇夫/作曲:佐藤眞
指揮:小久保大輔/ピアノ:清水新
  1. 農夫と土
  2. 祖国の土
  3. 死の灰
  4. もぐらもち
  5. 天地の怒り
  6. 地上の祈り
  7. 大地讃頌

2008年に早稲田大学グリークラブが委嘱初演した作品の、後輩による再演。委嘱作品を歌い継ぐことは大事である。

明るい発声で、指揮の描くディクションを忠実に歌い上げた演奏。テンポ設定からは、有名な終曲へ至る物語が感じ取れた。

ただ、終始同じような表情の演奏とも聴こえ、そこらへん物足りなく思った。原曲は混声合唱とオーケストラのために書かれた曲で、男声合唱とピアノという編成だと楽器の種類が減りサウンドパレットが少なくなってしまうことは否めない。ゆえに、演奏する側が場面に即して音色や表情のバリエーションを加える工夫(たとえば荻久保和明氏が自作を振るときのような)をすると、物語がより伝わりやすかったのでは。

第5ステージ:四大学合同ステージ

男声合唱組曲『達治と濤聲』(委嘱初演)
作詩:三好達治/作曲:多田武彦
指揮:山脇卓也
  1. 不知火か
  2. すみれぐさ
  3. 荒天薄暮
  4. 紅花一輪
  5. 九十九里ヶ濱

一言でいうと「タダタケの勘所を的確に押さえた演奏」。子音のタイミングなど縦がところどころズレたのは、全体の雄渾さと色彩美に比べれば些末な話。詩曲への深い洞察とスタミナが要求される組曲を見事に歌い切った。

余談その一。パンフレットの冒頭で学長のかわりに作曲者が寄稿したメッセージもあってか「これまで多田武彦氏が四連合同のために書き下ろしていなかったとは」という驚きの声が散見されるが、実は東西四連合同での委嘱初演自体が希少なのだ。中田喜直作曲/福永陽一郎編曲『海の構図』(第19回:1970年)、信長貴富編曲『THE BEST SONGS ON BROADWAY』(第53回:2004年)、信長貴富作曲『饗宴の歌』(第55回:2006年)、下薗大樹・前田勝則・広瀬康夫編曲『ブロードウェイミュージカル“Wicked”』より(第61回:2012年)、北川昇作曲「翼」(第63回:2014年アンコール)ぐらい。

余談その二。近年の多田武彦氏には「8分の6拍子の楽章がある」「ソロ付きの楽章がある(しばしば複数)」「バスとバリトンがオクターブで根音を鳴らした上に、セカンドテナーが第3音、トップテナーが第5音という和音で終わる楽章がある」の特徴を2つ以上備えた組曲を書く傾向が見受けられる。だが『達治と濤聲』はそのいずれも満たさない(8分の12拍子とか、終止和音でバスとバリトンが同音とかいう変形はあるが)。さまざまな曲を書いてきたうえで一周まわって原点に戻ってきたとでもいうべき趣の組曲といえよう。

アンコール
帆船の子
作詩:丸山薫/作曲:多田武彦
指揮:山脇卓也

プログラムや出版譜ライナーノーツでも触れられていた、作曲者のご指名で山脇氏が早稲田大学グリークラブ創立100周年記念演奏会で初演の指揮を執った曲。『達治と濤聲』が多田作品には珍しくすべて短調の楽章で構成された組曲なのに対し、この曲は基本的に長調で、すっきり締めくくったという感覚があった。あ、終止和音は前述の「バスとバリトンがオクターブで根音を鳴らした上に、セカンドテナーが第3音、トップテナーが第5音」ですね。

ついでながら、のちに多田氏が『航海詩集』という組曲を改訂した折「帆船の子」を終曲として追加した。組曲増補改訂版の初演者は広瀬康夫氏指揮による新月会(関西学院グリークラブOB合唱団)。ここでも四連とつながりがあるのですね。

ステージストーム
  • 同志社グリークラブ「Didn’t My Lord Deliver Daniel」(編曲:Fenno Heath)
  • 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団「Slavnostni sbor」(作曲:Bedrich Smetana)
  • 関西学院グリークラブ「U boj」(口伝版/作曲:Ivan Zajc)
  • 早稲田大学グリークラブ「斎太郎節」(編曲:竹花秀昭)

十何年かぶりの四連でもストームの選曲は変わらない。演奏スタイルも含め、まさに伝統。


19時ちょっと過ぎに終演。

ロビーで広瀬康夫氏のお姿を目にし「来週の男声合唱フェスティバルでは宜しくお願いします」と名乗り出たものか迷ったが、これまでご挨拶したことがなく、人見知りゆえ一歩を踏み出せず。

あと、福永暁子氏(陽一郎氏の奥様、すなわち小久保大輔氏の祖母)や牛尾孝氏のお姿も見かけた。


しばらく出入口付近でたたずんだのち、駅前のコンビニで夕食を買って、新幹線に乗りつつがなく帰宅。楽しい上京であった。



追記(2015/07/06)

昨日おこなわれた「全日本男声合唱フェスティバルin京都」で関西学院グリークラブが「大波の魔術」を再演しました。それを目の前で聴き、Whistleがらみで記載ミスがあったことが判明したので、該当箇所を修正しました。

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