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2017/04/29の日記(その2):Tokyo Cantat 2017 オープニングコンサート「第3回紅白合唱合戦」後半戦

Tokyo Cantat 2017 オープニングコンサート「第3回紅白合唱合戦」リポートの完結編です。

断り書きは前半戦に同じ。


20分の休憩をはさみ、先攻と後攻が入れ替わって後半戦スタート。

特別ステージ

【白組】
六本木男声合唱団ZIG-ZAG
指揮:初谷敬史/ピアノ:岩井美貴
  • 男声合唱と管弦楽のための『最後の手紙 〜The Last Message』より「1. フランス」「13. 日本」
    (訳:高橋健二/構成:眞木準/補作:道面宜久/作曲:三枝成彰)

六本木男声合唱団あらため六本木男声合唱団倶楽部が「六本木男声合唱団ZIG-ZAG」と改称していたことを初めて知る。

演奏曲は、第2次世界大戦で亡くなった兵士の遺した手紙13通がテキスト。信長貴富作曲「fragments」を連想させるが、あちらは日本人のみによる複数の手紙をコラージュし単一楽章にまとめたのに対し、こちらはさまざまな国から手紙が集められ(楽章タイトルは兵士の国籍)1通につき1楽章、全曲フルで歌うと2時間弱という超大作。テキスト自体が強烈だし、手紙のもつ訴えかけを生かして作曲されているため、今回みたいな抜粋でも胸に迫るものは大きい。

このたびは管弦楽でなく、出版譜に使われているピアノリダクションとの共演。

精魂込めた演奏だったが、トップテナーばかり目立って下3声が埋もれた場面が約8割。全体にトップテナーがやたら高く、それ以外のパートが低音域に偏って作曲された箇所の多いことが理由のひとつ。ベース系が高めの音域になるとパートバランスが取れてサウンドがぐっと安定するから、六本木男声合唱団ZIG-ZAGの人数や技量以外のせいばかりではなかろう。

第1曲終盤で譜めくりストが銃声を鳴らし(譜面で効果音として指定されている)突然のことに客席のほとんどが驚いた様子だった。

余談その一。紅白合唱合戦では舞台両端に、団体名プレートを設置する場所として譜面台2台を横に並べたものが設けられた。六本木男声合唱団ZIG-ZAGのステージで団体名プレートを台に置いたのは、私の見間違いでなければケント・ギルバート弁護士。

余談その二。三枝成彰団長が演奏前のトークで、米国ニューヨークのカーネギーホールでの公演が予定されていることについていわく「あそこは貸し小屋だから、お金さえ払えば誰でも使える」。謙遜のつもりかもしれないけど、第2ステージに出演したN.F.レディースシンガーズは同ホールで日米親善公演が控えていることを誇りをもってアピールしていたわけで、いささかデリカシーに欠ける発言のように聞こえた。

【紅組】
神楽坂女声合唱団
指揮:辻志朗/副指揮:栗原寛/ピアノ:黒尾友美子
  • ララルー LaLaLu
    (編曲:大田桜子)
  • 女声合唱曲「ファンタジー・ワールド」より 「Heigh-Ho, Heigh-Ho」
    (編曲:青島広志)

ディズニー映画曲集。「ララルー」は「わんわん物語」、「ハイホー ハイホー」は「白雪姫と七人の小人たち」より。

それなりに練習を積み重ねていることがわかる歌声。リラックスした空気が流れるステージから、辻ファミリーらしさを感じ取る。副指揮としてクレジットされている栗原さんは合唱に混ざって歌っておられたような。

パンフレットを読むと、指揮者によるステージ解説に《男3人兄弟で、たった1人!太った兄弟がいる!というだけで、友達に「3匹の子豚!」といじめられたことは、苦い思い出ですが…。》という一節が。長兄・辻秀幸さんのことですね。

司会のひとりである竹下景子さんはもともとこの団員だったが「卒業した。今は応援に回るのみ」とのこと。もうおひとりの司会者・辰巳琢郎さんは六本木男声合唱団ZIG-ZAG休団中という扱いとのこと。

第5ステージ:歌謡対決

【白組】
Nekko Male Choir
指揮:藤井宏樹/ピアノ:五味貴秋/演出:しままなぶ
  • 『若者たち〜昭和歌謡に見る4つの群像』より「ヨイトマケの唄」「若者たち」
    (編曲:信長貴富)

編曲者ご臨席。

演奏は編曲の意図を十二分に汲み取ったもの。「ヨイトマケの歌」は労働歌の要素を拡大した“編曲は再創造”色の濃いアレンジだが、労働歌が実に労働歌らしくて、間宮芳生作品あたりを聴いているような感覚だった。「若者たち」では迷いの中で光を見つけて確信を抱くかの如き変化をとげる歌声。

これに、しまさんによるステージ演出が施された。「ヨイトマケの唄」では3人組に分かれて滑車を引っ張る作業をしながら、「若者たち」ではメンバーが駆け出そうとするストップモーションを次々としながらという動作を加え、歌詞を視覚化するアプローチで演奏の説得力が倍増した。もっとも、歩くと歌っているのに走る姿勢だったことに少しばかり違和感をおぼえた。

ロビーでは演奏曲の楽譜がいろいろ販売されていたが、出版されたばかりの『若者たち〜昭和歌謡に見る4つの群像』楽譜は演奏の力もあり終演後またたく間に完売。せきも興味をもって楽譜販売ブースに飛んでいったがタッチの差で間に合わず。最後のお一方へ信長さんが楽譜にサインをしておられる最中だった。

【白組】
安積フィメールコール東京
指揮:菅野正美/ピアノ:庄司紀子
  • 女声合唱とピアノのための『日本浪漫歌抄』より「初恋」「ゴンドラの歌」「砂山」
    (編曲:鈴木輝昭)

福島県立安積女子高等学校合唱団あらため福島県立安積黎明高等学校合唱団のOGによる女声合唱団の、東京支部。

演奏から漂う品格は他に類をみない。鈴木輝昭作品は音取りの歯ごたえが強くて譜面に振り回されたり「なんとなくこんな感じ」なアンサンブルを雰囲気で補ったりという演奏が大半のような印象があるが、この団体はちゃんと楽譜に書かれた音を鳴らしているものと見受けられるし、その次元にとどまらず余裕をもって先を見通し音楽を表現したと思う。

この対決の前、ピアニストの五味さんと庄司さんがインタビューを受けていた。お二方は別のところで接点があるようで、庄司さんが五味さんを見守るかのような受け答えをしておられた。微笑ましい光景。

第6ステージ:最終対決

【白組】
栗友会男組
指揮:栗山文昭/ピアノ:須永真美
  • 『Phra-a-phay-ma-nii for Men’s chorus』全曲
    (作詞・作曲:中村ありす)

拙サイトで「日本の絶版・未出版男声合唱曲」リストをまとめる者としては、この曲が目当てのひとつだった。楽曲情報がネット上でほとんど見つからなかったからである。

八ヶ岳ミュージックセミナーのために書き下ろされた曲ということで小難しそうなものを予想していたけれど、先入観は見事に裏切られた。歌詞こそタイ語・英語・日本語が混在するものの、テキストはタイの民話で、物語に沿って音楽が動いてゆき、曲に散りばめられた様々な個性を強調する味付けの演奏とあいまって、とても聴きやすい。途中に挿入された寸劇も含め、近年の六連での早稲田大学グリークラブ単独ステージを思い起こした。

演奏に先立ち、第6ステージの指揮者お二方へのインタビューがあったが、栗山さんは声の調子が芳しくないとのことで横山琢哉さんが立ち会って代わりにしゃべっていた。栗山さんの指揮する姿はお元気そうだったが、ちょっと気がかり。

【紅組】
舫の会女声合唱団
指揮:岸信介/ピアノ:法嶋晶子/チューブラーベル:法嶋太郎
  • 女声合唱とピアノのための『雪崩のとき』より「崖」「雪崩のとき」「Miserere nostri, Domine」
    (作詩:石垣りん/作曲:松下耕)

松下さんは近年ご自身の思想信条をストレートに伝えようとする作品が増えている。そのうちの一作。今月に入って楽譜が出版された。委嘱・初演はこの団体。高嶋みどりさんの戦争もの作品に近い系統だが「Te Deum」終盤の文言による終曲を足すのは松下さんならでは。

大トリならではの、ずっしりした重みあるステージ。曲そのものに強いメッセージ性があるうえ、演奏者も各人の願いを音に込めるものだから、相乗効果による有無を言わせぬ説得力で、せきはただただ圧倒された。

チューブラーベル(NHKのど自慢でおなじみの鐘)は終曲にのみ登場する。打楽器奏者はピアニストの御子息という紹介があった。


対決は、特別な機械で測定した客席の拍手の大きさを点数化して勝負をつけるという趣向。結果は89対87、僅差で白組の勝ち。

エンディングは、白組で最初のステージに登場した須賀敬一さんの指揮による全員合唱「ふるさと」。須賀さんは、見るからに振りづらそうなト音記号の形をした指揮棒を渡されて使っておられた。せきは悪い癖でついフルボリュームで歌ってしまう。


会場で挨拶できたのは、えちごコラリアーズ指揮者の木越さんぐらい。近藤基さんの姿も見かけたが挨拶しそびれた。とツイッターに書いたら、えちごコラリアーズの他のメンバーから「姿を見かけたけど会場が混雑していて挨拶できなかった」というお返事をいただき、恐縮しきり。

その後、ホテル(終演時間が遅いと聞き、あわてて会場近くに宿を取った)に向かう帰り道で信号待ちをしていたら、伊東恵司さんが通りかかった。ご挨拶しようとしたが、指揮者としても詩人みなづきみのりとしてもおつきあいのある田中達也さんとお話し中だったので会釈どまり。


末筆ながら、出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。

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