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2017/08/12の日記:合唱団お江戸コラリアーず 第16回演奏会

お盆休み早々、真夏日の土曜、日帰りで「合唱団お江戸コラリアーず 第16回演奏会」を聴きに上京してきた。

たいへん面白くて刺激的な演奏会であった。出演者・スタッフ・来場者の皆さま、お疲れ様でした。


会場の文京シビックホール大ホールは恐らく初体験の場所。大学時代の演奏会回りでは足を運んでないはずだが、あやふや。

入り口付近で開場を待っていたところ、駆けずり回る村田雅之氏らしき人の姿とすれ違う。


一般に合唱の演奏会では舞台袖のアナウンサー(いわゆる影アナ)が演目を読み上げる形で進行することが多い。オムニバスステージだけ団員や指揮者がマイクを取って壇上で進行する演奏会もある。でも今回は演奏会全編まったく影アナを用いず、団員にして演奏会マネジメント最終責任者である宇田さんがMCを務めた。

この方式だと、会場の温まり具合などを見ながらアドリブ等の加減ができ、舞台と客席との距離を縮めることが可能である。携帯電話や飲食についてのマナー注意もしやすいし、ロビーで行われた物販や募金などの告知もしやすいし、歌い手でもあるから踏み込んだステージ紹介も自然にできる。こういう進行スタイルもあるのだなと、興味深く拝見した。


Opening

無伴奏男声合唱曲「今、ここに」
作詩:伊藤玲子/作曲:松下耕
指揮:山脇卓也

楽曲のテーマである、歌う幸せ・喜びをストレートに表現した、コンサートの導入にふさわしい演奏。

ちょっと気になったのは、全パート縦が揃う箇所で、主旋律がセカンドテノールなはずなのに、そこでもトップテノールが主役であるかのように歌う箇所が散見されたところ。作編曲者によってはダイナミクスに差を付けたり歌詞を違えたり何かの印をつけたりによってトップテノールがオブリガードであることを明記する人もいらっしゃるのだが、松下氏はそういう書き方をなさらないので、演奏者側が音型で判断したり他の編成の版と比較したりする必要があるのだ。

1st Stage

トルミス男声合唱作品から
作曲:Veljo Tormis
指揮:山脇卓也
  • Varjele, Jumala, Soasta (神よ、我々を戦いから守りたまえ)
    打楽器:目等貴士
  • Muistse Mere Laulud (古代の海の歌)

今年1月に亡くなった作曲者への追悼と銘打たれたステージ。どちらも緊張感と集中力に満ちた演奏だった。

「Muistse Mere Laulud」は今年6月の東西四連以来。立て続けに聴くのはなかなか面白い。

実は当初この演奏会で三宅悠太氏に委嘱した新作を初演する予定だったところ本番半月ほど前にこのステージへの変更が発表された。詳しい事情は不明だが、まあ何となく察しはつく。それはともかく、あまり時間のない中だったろうに、他のステージと遜色のない仕上がりはさすがである。

なお、ソリストについては「おえコラのあゆみ(演奏履歴) − 2017年」を参照ください。このあとの演目に出てくる特殊文字(ウムラウトなどが付いたアルファベット)の正式な表記についても同様です。

2nd Stage

男声合唱とピアノのための『感傷的な二つの奏鳴曲』
作詩:金子光晴/作曲:高嶋みどり
指揮:村田雅之/ピアノ:須永真美
  1. くらげの唄
  2. 落下傘

めりはりがきいていて、物語性のはっきりした演奏。特に「落下傘」では、落下傘で降下してゆく目まぐるしさよりも、風景や心象の移り変わりを描写することに重点がおかれ、今までこの曲を聴いてきた中では比類なき説得力であったように思う。

昨年「おっとせい」が書き足され『感傷的な三つの奏鳴曲』に改題されたが、今回は旧題。その理由についてプログラムパンフレットで山脇氏が《あえてノスタルジックに二つに絞って取り上げてみたいと考え》と記している。

3rd Stage

The Four Faces of Love(初演)
作曲:John August Pamintuan
指揮:山脇卓也
  1. Eros
  2. Storge
  3. Philia
  4. Agape

新作初演だが委嘱作品でなく、作曲者から献呈を受けたもの。テキストはラテン語で、新約聖書『コリントの信徒への手紙一』13章全篇。ただし順番が入れ替えられている。第1曲は4〜10節、第2曲は11節、第3曲は1〜3節、第4曲は12〜13節。せき個人にとって最も興味を惹かれたのは終曲。

高嶋みどり作品もテノールにハイトーンがしばしば出てくるが、この新作では「くらげの唄」以上にハイトーンが駆使され(もしかしたらカウンターテノールという指示かもしれないけど)取り上げる団を選びそう。ともあれ、様々な団によって再演されるといいなと願う。

4th Stage

(アラカルトステージ)
  • Listen to a Jubilant Song
    作曲:Tim Sarsany
    指揮:村田雅之
  • Badn Lat
    作曲:Edvard Grieg
    指揮:山脇卓也
  • Stars
    作詞/Sara Teasdale/作曲:Eriks Esenvalds
    指揮:山脇卓也
  • Huszt
    作曲:Kodaly Zoltan
    指揮:山脇卓也
  • Ain’-a That Good News!
    Spirituals/編曲:William Levi Dawson
    指揮:村田雅之
  • Baba Yetu
    訳詞:Chris Kiagiri/作曲:Christopher Tin/編曲:Derek Machan
    指揮:山脇卓也/ピアノ:村田雅之/ジャンベ:目等貴士
  • Go the Distance
    作曲:Alan Menken/編曲:Aaron Dale
    指揮:村田雅之

エンタテイメント性やバラエティ性を前面に出したステージ。「Stars」では団員の何割かがグラスハープを鳴らしながら歌ったり、「Baba Yetu」では目等氏が客席から出てきてジャンベを叩きながらステージに移動したり。

このステージが一番いきいきしていて、個人的に最も魅力を感じた。本日おこなわれた全日本合唱コンクール東京支部大会では、審査時間の短縮と有効活用を図るべく、シード演奏を務めるこの団体が講評対象外となる代わりに、課題曲・自由曲に加えて、こんな形式のスペシャルオムニバスステージを組んだという。オムニバスステージでの演目に重複はないけれど、きっと本領発揮で楽しい空間となったことであろう。

曲ごとに指揮者が交代するステージだと、指揮者の持ち味の違いも伝わってくる。ひとことでいうと、山脇氏の音楽はスクエアにして理知的、村田氏の音楽は丁寧にしてエモーショナル。

Encore

  • 群青
    作詞:福島県南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生(構成:小田美樹)
    作曲:小田美樹/編曲:信長貴富
    指揮:山脇卓也/ピアノ:村田雅之

最近つくられた男声4部合唱版。実に熱がこもっていて、説得力たっぷり。

編曲者ご臨席。お隣には前田勝則氏。前田氏は立教グリーOB男声時代にお世話になったし、信長氏はこの5月にサインを頂戴したということで、せきが座っていたすぐ後ろの列にいらしたお二方にご挨拶しようと思っていたが、しそびれた。


蛇足。

この団の実演に接するのは、当ブログには記載していない、2012年に富山で行われた全日本合唱コンクール全国大会以来。そのとき、課題曲「はらへたまつてゆく かなしみ」は堂に入った演奏で感銘を受けたのだが、自由曲「INICIAL CALL」「バトンタッチのうた」について、後者で歓喜大爆発という演奏を好む私の趣味としては肩透かしをくらったような印象を持った。コンクールという場ゆえ安全運転したのかなと思ったが、同行者の方々にそう話しても同意されず、ずっと理由がわからなくて胸にとどまっていた。

このたびの演奏会で答えが見つかったような気がした。もしかしたら、指揮者・山脇氏の特性によるところが大きいのかもしれない。起伏が激しくてエネルギーの量が曲の中で変化する楽曲よりも、エネルギーが安定してこんこんと湧き出し続けるタイプの楽曲(有名な「くちびるに歌を」終曲もこちらだと思う)のほうが相性がいいということなんだろうな、と。

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