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2017/08/26の日記:harmonia ensemble 第12回定期演奏会——三善晃作品個展[第1回-1960年代-]

日帰りで横浜までharmonia ensemble(ハルモニア・アンサンブル)の「harmonia ensemble 第12回定期演奏会——三善晃作品個展[第1回-1960年代-]」を聴きに出かけてきた。

三善晃が残した膨大な合唱作品を、10年ごとに5つの創作期に区分し、1期分の作品を年1度の演奏会で取り上げるという企画の初回。三善作品は詳しくはないものの好きなほうなので、馳せ参じることにした。


横浜は、大学生時代の演奏会まわりで神奈川県立音楽堂に2〜3回ほど足を運んだことがある程度。今回の演奏会場である横浜みなとみらいホールに行くのは初めて。もちろん、その小ホールも。

ホールに入ったら、TBSホールディングス総務局CSR推進部からの花束が飾られていた。時々出演するBS-TBS「日本名曲アルバム」や、ドラマ前半で歌声中心に出演したり代表の福永氏が合唱監修を務めたりしたTBSドラマ「表参道高校合唱部!」などでのつながりによるものであろう。でも宛名が「三善晃様江」ということで、ついツイート。


混声合唱曲『小さな目 子どもの詩による13の歌』
作曲:三善晃(全ステージ)
指揮:福永一博
  1. せんせい(作詩:きょうたに たかし)
  2. かめ(作詩:大しま あきひこ)
  3. 先生のネックレス(作詩:松井ゆみ子)
  4. ひろちゃん(作詩:やまなか よしこ)
  5. みそしる(作詩:尾田じゅん子)
  6. いもおい(作詩:小柳つるお)
  7. あかちゃん(作詩:よしざわ ゆうこ)
  8. やけど(作詩者不詳)
  9. けんか(作詩:梶山としあき)
  10. あさ ないたこと(作詩:いのうえ さかえ)
  11. いぬとねこ(作詩:小西りえ子)
  12. うちのミーコ(作詩:まき ゆうじ)
  13. ピアノ(作詩者不詳)

1963年作曲。せきは初めて聴く。小学生の詩を集めた合唱組曲は、この時期に湯山昭や多田武彦といった作曲家が書いた。三善作品にはこの他1965年に作曲された『子どもの季節』という混声合唱組曲もある。

三善作品にしては比較的とっつきやすそうな、それでいて三善作品ならではの響きが随所にみられ、連続演奏会への導入にふさわしい曲集という印象を持った。バリエーションや表情の豊かさは、この団の本領発揮といったところ。

混声合唱組曲『嫁ぐ娘に』
作詩:高田敏子
指揮:福永一博
  1. 嫁ぐ日は近づき
  2. あなたの生まれたのは
  3. 戦いの日日
  4. 時間はきらきらと
  5. かどで

1962年作曲。大学生時代いっぺんだけ聴いたことがあったっけか。

このたびの演奏からは、前半2曲について生をうける喜び、後半3曲について死や生命のはかなさが前面に出ていたように聴こえた。

白く
作詩:佐川ちか
ソプラノ独唱:田村幸代/ピアノ:里見有香
  1. 白く
  2. 他の一つのもの
  3. むかしの花
  4. Finale

この連続演奏会で特徴的な企画のひとつとして、ゲストを招いて合唱以外の作品によるステージを設けることが挙げられている。このたびは独唱。

「白く」は1962年作曲。事前告知では別のピアニストと共演することになっていたが、体調不良ということで交替した由。

ソプラノの田村さんはharmonia ensemble団員として歌っていたこともあり(そのときの演奏だと2015年の「3rd Christmas Concert」を拝聴した)、アンサンブルでも歌う人ならではのノンヴィブラートで軽めな声。感覚的で難解な詩曲を、身振り手振りを交えつつ歌芝居さながらに演奏しきった。

ピアノパートを聴いていて、翌年に作曲された男声合唱作品『三つの時刻』の終曲「松よ」を時々思い起こした。「松よ」は協奏的な要素が多いのに対し『白く』はピアノパートの自立性が強いということで歌との関係性はずいぶん異なるが、ピアノの鳴らし方に近いものが感じられる。ちなみに作曲者は『三つの時刻』について、この次に演奏された『五つの童画』へピアニズムが受け継がれているという趣旨のことを述べておられる。

合唱組曲『五つの童画』
作詩:高田敏子
指揮:福永一博/ピアノ:里見有香
  1. 風見鶏
  2. ほら貝の笛
  3. やじろべえ
  4. 砂時計
  5. どんぐりのコマ

1968年作曲。個別の楽章はコンクールのTV中継で聴いたことがあるが、組曲フルで聴くのは初めて。

曲目紹介がわりに転載されていた市販CDの自作解題文に《どの詩にも破滅や絶望失意の相をもたらしたと思うのだが、私は、それらを胎生の糧としない愛を信ずることができない》とある。絶望が愛を育むとかいう言い回しは作曲者が好んで用いたものであるが、このような遠近法を内包する合唱作品としては最初期にあたるものと思われる。

演奏は、三善作品ならではの錯綜と三善作品ならではの高揚ぶりが見事。混沌っぷりは『嫁ぐ娘に』も近いものがあるが、あちらは人肌ぐらいの温和さ、こちらはどんどん熱を帯びてゆくという違いがある。


アンコールに1969年度Nコン高校の部の課題曲として書かれた「道」を歌い、終演。指揮者のスピーチでは「当時は激ムズと言われたらしい」と紹介されたが、『五つの童画』に続けて聴くと非常に分かりやすい音。近年のNコン課題曲はこれより難易度が高そうなものばかりなので、時代が変化したということもあるのかもしれない。1960年代に発表された合唱曲としては恐らく最後の作品だし、この合唱団はかつてNコン課題曲だけでプログラムが組まれた演奏会を催したことがあったしということを踏まえると、演奏会の締めくくりにはこれしかあるまいという選曲。

出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。三善作品の諸相が余すところなく味わえたように思います。


終演後、客席からロビーに出ようとしたら、代表および指揮者である福永さんと鉢合わせし、ご挨拶。

演奏会場を出て帰りの新幹線に向けた時間調整やらスマホいじりやらをしつつ佇んでいたところ、福永さんと再会。ソプラノ団員にして事務局員を務める斉藤歌織さんをご紹介いただいた。


余談ながら、この連続演奏会の第2回以降で演奏機会がある際に当方のスケジュール調整がつくかどうかわからないのでここに記すと、harmonia ensembleのサウンドによる三善作品は谷川俊太郎のテクストと相性が抜群そうな予感がする。

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