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『明日も会えるのかな? 群青 3.11が結んだ絆の歌』を読みました #群青本

東日本大震災発生から本日で6年。あの震災で被災し避難生活を余儀なくされていた人たちが生んだ、「群青」という合唱曲があります。その「群青」の成り立ちや生育歴を、レコーディング・ディレクターの坂元勇仁さんが著した『明日も会えるのかな? 群青 3.11が結んだ絆の歌』がパナムジカから出版されました。

『明日も会えるのかな? 群青 3.11が結んだ絆の歌』は今月4日付での発売ということになっていますが、パナムジカで事前予約を受け付けていました。わが手元に届いたのは先月26日のことです。早速ひもとき、息もつかず通読しました。


この本は「群青」のテキストを構成して作曲した小田美樹教諭のモノローグが5章に分けられて軸をなします。巻頭言としてこの曲を広めた一人である合唱指揮者・本山秀毅さん書き下ろしの原稿が付され、巻頭言および各章の間には、本山さんのFacebook記事や、周辺者の皆さんによる「証言」が挿入され、本全体を立体的にしています。著者・坂元さんご自身による言葉は「エピローグ」のみです。

「証言」は、当時の合唱部員である芹沢功太さん(「プロローグ」として掲載)・中島鈴奈さん・齋藤舞子さんによるものと、小田教諭の大学時代の指導教官でもある作曲家の藤原義久さんによるものと、「群青」が生まれた福島県南相馬市小高区で語り部を務める島尾清助さんによるものが単独の節として採録されています。またエピローグには、ほかの教え子らや、合唱版を編曲した信長貴富さんによる発言も登場します。証言者のうち、島尾さんは小田教諭と面識なし(少なくとも取材時点では)とのことです。

小田教諭が「群青」に続けて書いた「青の絆」「青の軌跡」(「青の三部作 — 群青・青の絆・青の軌跡 オリジナル版楽譜集」にまとめられ出版された)についても紹介されています。


最近は耳にする頻度が減りましたが、震災発生当初「あすという日が」という曲がしばしば歌われました。『明日も会えるのかな? 群青 3.11が結んだ絆の歌』ではこの曲についても言及があります。第一章ではこの曲と「群青」との関係が、あとがきではこの曲の成り立ちについて詳細に記されています。

東日本大震災の翌年「あすという日が」作詩者・山本瓔子さんにの詩によるアンサーソングとして「心に花を咲かせよう」という合唱曲が生まれ、この曲を中心に震災復興支援をはかる「心に花を咲かせようプロジェクト」が発足しました。同プロジェクトの事務局長が著者の坂元さんです。『明日もあえるのかな? 群青3.11が結んだ絆の歌』では同プロジェクトについて触れられていませんが、「あすという日が」についての記述と関係があることは想像に難くありません。


小田教諭や地元の証言者が語る言葉は当事者ならでは。通読し、避難生活を送る教え子たちと向かい合う小田教諭の苦悩を追体験する思いでした。「群青」という曲がもつ重みの一端が分かったような気がします。

『明日も会えるのかな? 群青 3.11が結んだ絆の歌』に採録された本山さんのFacebook記事は、先行して今年1月に出版された『喝采、その日その日。うたごころの現場から』とは重複がありません。感想文「『喝采、その日その日。うたごころの現場から』を読みました」を書いたとき「群青」についての記事がないことに何も感じなかった己の不明を恥じます。


特徴的に思われる編集についてひとつ。時折、新しい事実が説明なしにポンと提示され、あとで別の章や証言でその事実についての説明が加えられるという構成がなされています。謎がしばらく経って解決するという流れが何度か繰り返されるのですが、「この件の詳細は稿を改めて」みたいな註釈は付けられていない一方、いわゆる伏線に比べると「後の説明のためのフラグを立てました」という意思表示のはたらきが強く、読者の興味をひきつけ続ける効果は大きいと感じました。新しい事実の提示と説明との間にあえてタイムラグを設ける語り口を当方あまり目にした記憶がありません。

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