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『喝采、その日その日。うたごころの現場から』を読みました

合唱指揮者・本山秀毅氏がFacebookに記したことを抜粋再構成した書籍『喝采、その日その日。うたごころの現場から』をパナムジカ出版から出しました。


奥付の初版第一刷発行日は2017年1月1日となっていますが、版元がかかわっている楽譜通販サイト・パナムジカでは昨年12月半ばから予約を受け付けていて、せきの手元には12月30日に届きました。

この本は「第一章 合唱指揮者は走る」「第二章 私に息づく出会い」「第三章 合唱指揮者はまた走る」「第四章 美の本質を求めて」「最終章 今ここから未来へ」の5章構成で、ほか書き下ろしの「はじめに——現場主義」「おわりに」と、「編者あとがき——教育学の視点から」が目次に並びます。おおまかにいうと、第一章・第三章は合唱指導の実践記録、第二章は合唱指揮の前史、第四章は随想集、最終章は提言を含む記事といったところです。指揮者・佐渡裕氏からの推薦コメントが記された帯も付いています。

第一章・第三章については、事例で紹介される的確な処方箋にただただ感服します。豊富な引き出しから何を選んで合唱団に示すかを瞬時に判断することは難しいもので、指揮者やパートリーダーなど前に立って合唱を指導する経験がある人ほど、その凄さが分かるはずです。

他の章も示唆に富む記述が多く、全体として「すこぶる面白い」という感想を持ちました。卑近なトピックから歌のアンサンブルや合唱指導に活かせる教訓を導き出す観察眼・分析力は指揮者の面目躍如。

せきもFacebookアカウントを持っているものの友達関係にあるのは今のところ直に存じ上げているお相手だけです。本山氏の投稿はツイッターで他の人が紹介したときぐらいしか読んでいないのですが、あまり熱心な読者でなかったことを少しばかり残念に思いました。これからはもう少し自分のタイムラインに表示されない範囲に対するアクセス頻度を上げようかなあ。

それにしても、125〜127ページ「女王様」を読んで、ソプラノパートの方々がどういう反応を示すか興味のあるところです。


Facebookになされた発言群の抜粋再構成をおこなったのは堀雄紀氏。京都大学で教育学を研究しつつ、ご自身も合唱団で歌ったり指揮したりする御方です。緊張と緩和を交えた発言のチョイス・並べ替えは絶妙といえましょう。

抜粋再構成の労に敬意を表しつつ、あえて苦言を呈するなら、編集がところどころ不親切なところがあります。最も端的と思われる例は、25ページで唐突に出てくる「かの洋子先生の名言」。本の中で洋子先生はそこが初登場です。次の章、41ページに、ピアノ教師・岩淵洋子氏について記した節があり、おそらく前述の「洋子先生」と同一人物をさしているのでしょう(断言まではできませんが、文脈から推測すると)。初読の人は間違いなく引っかかるところです。再版の折には、この箇所だけでも加筆いただけないものでしょうか。

10〜12ページ、ある中学の部活で練習した曲「COSMOS」「夢みたものは」の作曲者が書いてない点も同様ですが、合唱専科の版元から上梓された本であることを踏まえるなら、前者はミマス作曲/富澤裕編曲、後者は立原道造作詩/木下牧子作曲であろうと推測できる人を読者層として想定してのことなのですかね。2012年度、ただ、28〜30ページ、別の中学で合唱部員が歓迎に歌った「アヴェマリア」については誰の作品か推測困難と思われます(説明なしに書くということはアルカデルト作曲のかな?)。ディテールは大した問題ではないから割愛したということかもしれませんが。

補足解説ついでに。「においもするだろう」というフレーズを含む宮澤賢治の詩をテキストにした合唱曲が全日本合唱コンクールの課題曲になったのは2012年度です。男声課題曲のひとつに選ばれた西村朗作曲「松の針」(同声三部合唱とピアノのための『永訣の朝』第2曲)と、混声課題曲のひとつに選ばれた林光作曲「鳥のように栗鼠のように」(無伴奏混声合唱のための『無声慟哭』第1曲)の2曲が該当します。ただ、本山氏の記述がどちらをさしているか当方には判断いたしかねます。


以下余談。

せきが本山氏が指揮する実演に接したのは今のところ一度きりです。大学生時代、東西四連の同志社グリークラブ単独ステージでのアメリカ現代合唱曲オムニバス。生でないものも含めると、関西学院グリークラブの歌う『いつからか野に立つて』をYouTubeで聴いて感銘を受けた覚えがあるという程度ですかね。

演奏以外だと、2013年12月にNHK Eテレで放映された「こころの時代」で本山氏がゲスト出演した回を拝見しました。福島県南相馬市立小高中学校から生まれた「群青」が広まる後押しとなった番組です。その内容は第三者による書き起こし「歌声は生きる力」で読むことができます。『喝采、その日その日。うたごころの現場から』では端折られている、中学校教師を辞めてからドイツ留学するまでの経緯も語られています。

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