blog.合唱アンサンブル.com

せきと申します。ウェブサイト「合唱アンサンブル.com」を動かしております。

ステージ出演予定などは告知カテゴリをご覧ください。

2018/06/09の日記:第19回北とぴあ合唱フェスティバル第2夜コンサート<ルネサンスは再び生まれる>

久々のコンサートリポート記事。拝聴してから記事公開まで半年以上が経ってしまった。


泊まりがけで上京し、まずはJCDAこと日本合唱指揮者協会が開催している「JCDA合唱の祭典2018〜第19回北とぴあ合唱フェスティバル」を聴いてきた。

コンサートは、仁階堂孝氏によるミニレクチャーと合唱団による実演ステージを交互にさしはさむ形で進められた。

ミニレクチャーは、それに続けて演奏される楽曲の作曲者が歩んだ生涯や時代背景を説明するというもの。パワーポイントらしき画像の映写が活用された。映写では、海外合唱団によると思われる演奏の録音も紹介された。パワーポイントには録音ファイルを添付できるのだが、その機能を活用したプレゼンテーションは初めて見たような。

仁階堂氏の司会進行はギャグが散りばめられる軽妙なもの。冒頭の自己紹介では「ジャニーズ事務所のニカイドウタカシです」。Kis-My-Ft2(通称キスマイ)という男性アイドルグループに二階堂高嗣という、名前の発音が同じメンバーがいることにひっかけたものであるが、わかった聴衆は少なかった様子。

作曲家紹介の大半が「○○(作曲家名)、Good Jobです」と締めくくられた。最初のうち客席はぽかんとしていたが、どうやら決まり文句らしきことが認識されてから「Good Jobです」で笑いが起こるようになった。

グレゴリオ聖歌を歌う会(指揮:片山みゆき)

  • グレゴリオ聖歌「Ave Maria」
  • ミサ9番より「Sanctus」「Agnus Dei」

片山氏はかつて皆川達夫先生の下振りとして立教大学グリークラブにかかわっておられた時期がある。そんなわけで私にとっては今回の出演者の中で唯一ご指導をいただいた経験がある。当時の記憶および印象に間違いがなければ、教会の聖堂で場の響きを活かして歌うかのように舞台上で歌うというスタイルの指揮者でいらっしゃる。

合唱団は、片山氏が指導する複数の合唱団メンバー有志が首都圏各地および長野県から集まって、片山氏と一緒にグレゴリオ聖歌を歌うという集まり。指導者の方針そのまま、聖歌隊が礼拝として歌うありようをそのままステージ上で行うとでもいうべき趣の演奏を繰り広げた。

蛇足。立教大学グリークラブOB男声合唱団の第2回リサイタルのときも片山氏は皆川先生ステージの練習指揮者を務めた。ただ、OB男声の中核メンバーの一部とはあんまり折り合いがよろしくなかった模様(個人的には、諸先輩が漏らしていた批判は的確だと思う一方、対応しきれないOB男声にどこか硬直した部分があるとも感じるようになった。委細割愛)。そのせいか立教グリーファミリーとのつながりはこのときが最後となった。

広域指定合唱団 青山組

  • 「Ave virgo virginum」作者不詳の3声コンドゥクトゥス(13世紀フランスの写本 “MSPluteus 29.1” より)
  • Gloria(作曲:G.Dufay)

指揮者なし。ただ、練習やリハーサルは仁階堂氏の指導により進められたとのこと。ひとことでいうと、外形的なアプローチから入るパフォーマンス。でも見栄えだけでなく安定したアンサンブル。惜しむらくは、低声系パートがやや不安定だったような。

1曲目、コンドゥクトゥスは日本語で「行列歌」と呼ぶらしい。会場後方から舞台に向かって客席を練り歩きながらの歌唱であった。

2曲目はミサの1節でなく、独立した形で当時の楽譜資料に収められた作品とのこと。舞台上に置かれた大きな譜面(クワイヤブックという)を一同で囲んで演奏された。クワイヤブックについては、この日の午前中、花井哲郎氏によるワークショップで取り上げられたもの。今年4月29日の「小さな夜の音楽会#06」でもルックスエテルナが使っていた。

また蛇足。今年の全日本合唱コンクール、某支部の大会でクワイヤブックを使って演奏した団体があった。それに対し「初見で歌っているのかと思った」と講評した審査員がいらしたらしく、のちのちツイッターで失笑が散見された。

クール シェンヌ(指揮:上西一郎)

  • Salvator mundi(作曲:T.Tallis)
  • Te lucis ante terminum(作曲:T.Tallis)
  • Sicut cervus(作曲:G.P.da Palestrina)

この団については昨年の全日本合唱コンクールで、さらに指揮者については今年の六連合同で、おぼろげながらも音楽的キャラクターを多少なりとも認識できたように思う。

このたびの演奏も、ドイツロマン派の楽曲を積極的に取り上げているためか、音色もフレージングもロマン派楽曲によって育まれたかのような、かぐわしきもの。ポリフォニーならではの線の絡まり合いや豊かな声が織りなす響きを満喫した。

coro Lunetta(指揮:早川幹雄)

  • Ave Maria(作曲:G.P.da Palestrina)
  • Missa Ave MariaよりKyrie(作曲:C. de Morales)
  • Memento salutis auctor(作曲:W.Byrd)

杜の都・仙台で昨年から活動している女声アンサンブルグループ。

プログラムによると「キリストの受胎、誕生に対する賛美、マリア賛歌をテーマとして選曲いたしました」とのこと。瑞々しいアンサンブルによる、聖母が宿した新しき生命の描写。

*休憩*

ロビーに出たら、harmonia ensemble代表の福永一博氏(このブログにコメントを寄せてくださった)が物販コーナーの呼び込みをしておられた。福永氏は私が来たのを見て驚いた様子だった。

ご縁のある方々が来場していたとのことだったけど、お姿を見かけることは残念ながらなかった。

VOCE ARMONICA(指揮:黒川和伸)

  • Missa O Magnum Mysterium (作曲:T.L.de Victoria)より「Kyrie」「Gloria」「Agnus Dei」

このミサ曲、私は皆川達夫先生の指揮で歌った経験があるもので、懐かしく聴いた。

かっちりしたアンサンブルで、声の交わし合いがとても緻密。他の出演団体はホール全体を声で満たすかのような歌唱法だったのに対し、唯一この団は歌い手ひとりひとりが客席に声を届けるかのようなアプローチでの歌唱法だった。なんとなくアメリカのユース合唱団っぽいアンサンブルという感想。あとで2018年度の全日本合唱コンクールでSamuel Barber作曲「Agnus Dei」を取り上げると知り、いろいろ腑に落ちた(とっくにコンクールが終わった時期に書くのは後付けっぽいと言われても仕方あるまい)。

メンバーには今夏「大迫半端ないって」でブレイクした作曲家・片岡大二郎氏がいた。

Ensemble Evergreen(指揮:仁階堂孝)

  • O nata lux de lumine(作曲:T.Tallis)
  • Vigilate(作曲:W.Byrd)

イギリスのモテット2曲。合唱団との相性抜群。

どちらも爽やかで、かつなんともいえない和やかさが感じられた。越の国室内合唱団VOX ORATTAやインカレ合唱団KIRARA☆Mixedの演奏からも同様の印象を受けるので、指揮者の持ち味が反映されているところが多少なりともあるのかもしれない。

(指揮:三好草平)

  • Duo seraphim(作曲:T.L.de Victoria)
  • Come Again(作曲:J.Dowland/編曲:John E. West)
  • The Nightingale(作曲:T.Weelkes/編曲:Mao Yang)
  • The Silver Swan(作曲:O.Gibbons/編曲:John E. West)

ステージ上のメンバー皆が楽曲に共鳴共振し、ひとつひとつの音を慈しみ愛おしみながら歌を紡いでいるかのように見受けられた。

三好氏について、ステージマネージャーや演奏会プロデューサーとしての姿に触れることのほうが、私は多い。指揮者としての演奏を聴くのは彼が明治大学グリークラブ学生指揮者だったときの六連のエール以来かも(その年度の定期演奏会へは行けなかったはず)。

Angelic Voices(指揮:中館伸一)

  • Missa in illo temporeより「Sanctus〜Benedictus」(作曲:C.Monteverdi)
  • Cantate Domino(作曲:C.Monteverdi)
  • Adoramus te Christe(作曲:C.Monteverdi)
  • Ecco mormorar l’onde(作曲:C.Monteverdi)

あえて細い線で歌う発声から、本場ヨーロッパでルネサンス音楽を専門とする合唱団の演奏から多くを吸収していることが感じ取れた。

演奏そのものも風格・気品・安定感に満ち溢れ、大トリにふさわしいと思う。今回とりあげられた作曲家の中では最も劇的な作風


ひとくちにルネサンスものといっても、作曲者や作品世界のバリエーションは幅広いし、演奏者側のアプローチも多種多様なこと(たとえば様式感の表現方法、発声発語やアンサンブルのスタイル)を改めて実感した。

惜しむらくは若干作曲家が偏っているあたりかなと思っていたら、コンサート締めくくりに仁階堂氏いわく「Josquin des PrezやOrlando di LassoやCarlo Gesualdoなど取り上げることが叶わなかった作曲家がたくさんいるので、またこの企画でコンサートをやりたい」。第2弾、第3弾などに期待したいところ。

末筆ながら、出演者・スタッフの皆様、Good Jobです。来場者の皆様、お疲れ様でした。

コメントする

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.


    ケータイ利用者さまへ

    当ブログは携帯電話から直接アクセスできます。コメントも可能です。

    なお、アクセントやウムラウトが付いたアルファベットや「髙(ハシゴ高)」などの文字を正しく表示できない携帯電話端末が存在するので、そういう文字は代替表記しています。

One in a Million Theme by WordPress theme