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2018/8/11の日記:第10回東京六大学OB合唱連盟定期演奏会

「OB六連」こと東京六大学OB合唱連盟の演奏会を聴いてきた。2014/7/13の第8回以来。

隔年で行われている演奏会だが、第9回は親戚筋の法事と重なってしまい行けなかったため、4年ぶりということになる。

会場は東京芸術劇場コンサートホール。13時半開演、16時半過ぎ終演。


チケットはぴあで購入。当日ホールのボックスオフィスでチケットを受け取るつもりだったが、正午過ぎにボックスオフィスへ寄ったら「チケットはコンサートホール受付に移した」とのこと。

第1ステージ:東京大学音楽部OB合唱団アカデミカコール
男声合唱と8人のアンサンブルのための『Missa pro Pace』
作曲・指揮:三澤洋史
弦楽器:Ambition String Quartet(第一バイオリン:吉岡麻貴子/第二バイオリン:大和加奈/ビオラ:村田恵子/チェロ:江口心一)
コントラバス:本山耀佑
打楽器:大場章裕
アルト・サックス:佐藤温
ピアノ:三木蓉子

委嘱初演。ただし全曲フルだと1時間を超えるため、今回は演奏時間の都合で「Kyrie」「Gloria」「Agnus Dei」のみを抜粋。全曲初演はちょうど1年後にあたる2019年8月11日に同じ会場で予定されているとのこと。

楽曲は、同じ作曲者・指揮者により第8回OB六連で初演された『Le Preghiere Semplici 〜三つのイタリア語の祈り』同様、ラテンフレーバーたっぷりで聴き疲れの少ないサウンド。三澤氏のウェブサイトでは御自ら《熱心なカトリック信者だったら怒る人もいるかも知れない。とにかく、こんな風にGloriaを始めた人は世界広しといえども僕くらいなものだろう》《こんなことしてたらバチが当たるで!》などと書いておられるが、Paul Basler作曲『Missa Kenya』、Bob Chilcott作曲『A Little Jazz Mass』『Nidaros Jazz Mass』、松下耕作曲『Ave Maria for youth choir』などを知っていると、驚くほどブッ飛んだ曲想というほどでもない。

構えずに聴けるサウンドではあるものの、演奏はサックスが合唱を食ってしまっているように聴こえた。もしかするとサックスよりジャズクラリネットのほうがバランスよいかも。あと、楽曲に要求されるポップスのリズムセンスやビート感が、歌い手にはやや難儀そうに聴こえた。

第2ステージ:立教大学グリークラブOB男声合唱団、法政大学アリオンコールOB会・男声合唱団オールアリオン
男声合唱のための『王孫不帰』
作詩:三好達治 作曲:三善晃
指揮:田中信昭
ピアノ:中嶋香

白眉というべきステージ。肚の底にズシンと重たいものがくる演奏であった。

パンフレットの解説文は、練習指揮者を務めた立教の前川和之先輩による。三善作品には珍しく作曲者がテキストを選んでいること、三善作品の中で三好達治をテキストにした唯一の合唱曲であること、唯一なのは達治の甘美な詩を情緒的に歌い上げる作曲を三善晃の知性が許さなかったからではないかという指摘がなされている。

ステージアンコールとして三善晃編曲「夕焼小焼」が演奏された。法政大学アリオンコールOB会の仲介を得て立教大学グリークラブOB男声合唱団が男声合唱版の編曲をお願いした『唱歌の四季』終曲。そして『王孫不帰』も「夕焼小焼」も、三善にとっては第二次世界大戦と強い結びつきを持つ合唱作品である。

第3ステージ:明治大学グリークラブOB会合唱団 駿河台倶楽部
男声合唱アルバム『ペルホネンのレター』
作詩:ミナ ペルホネン
作曲・指揮:相澤直人

塩野静一記念男声合唱振興基金による委嘱作品の初演。駿河台倶楽部がもともと持つロマンティシズムと相まって、今様で小粋なうたが奏でられた。

作曲者兼指揮者は古くからの男声合唱経験者なはずで、この新作も男声合唱サウンドのツボを押さえまくった曲。2019年2月に楽譜が出版されたので、おしゃれな小品集のレパートリーを望む男声合唱団が喜んで取り上げるのではないか。

パンフレットの解説文は出版譜のライナーノーツと概ね共通。相違点は、塩野基金によるプロジェクトにかかわった感想を記した段落がカットされていることや、「それでいてナウい」→「常に洒落っ気を」といった程度。作曲の方針として《難しくない(譜面の見た目で驚かせない。)》とあるが、音域が広めな点や、ところどころに出てくるシンコペーションに対し、せきは出版譜面を見て軽くたじろいだ。実演を聴くと想像できる範囲内ではあろうけど。

パンフレットには、ファッションブランド「ミナ ペルホネン」主宰のデザイナー・皆川明氏によるメッセージも載っていた。ただ、出版譜では皆川明氏個人についてほとんど言及されていない。ライナーノーツにちらっと「皆川さん」が登場するが、この皆川さんが何者か説明が記されていないのは不親切だと思う。

第4ステージ:早稲田大学グリークラブOB会・稲門グリークラブ
男声合唱組曲『IN TERRA PAX 地に平和を』
作詩:鶴見正夫/作曲:荻久保和明
指揮:松井慶太
ピアノ:前田勝則

第4曲が抜群にシンフォニックだったし、終曲もエピローグにふさわしい演奏。一方で、第1曲や第3曲に出てくるAllegroからは野性や狂気があまり感じられず、荻久保作品特有の「縄文なるもの」を求めて聴いたら少し物足りなさをおぼえた。

合唱団員に荻久保氏直々の洗礼を受けた歌い手が多かったおかげで物足りなさが「少し」で済んだのかもしれないし、逆に合唱団員に対する先入観から期待値を上げ過ぎてしまったのかもしれない。あるいは別の要因として、同じ戦争ものである『王孫不帰』の衝撃がまだ残っていた影響もあるのかもしれない。

いずれにせよ、指揮者は荻久保サウンド体質でいらっしゃらないように見受けられる(だから良いとかダメとかいう話にあらず)。

第5ステージ:慶應義塾ワグネル・ソサィエティーOB合唱団
合唱による風土記『阿波』
作曲:三木稔
指揮:大久保光哉

一同、法被を着用。

エモーションが喚起されやすい曲なれども暴走することなく腰の据わった大人の『阿波』。土俗性を強調するのでなく、素材は労働歌なれども西洋音楽の流れを汲む楽曲として音楽に向かい合う演奏。今年の現役六連の慶應単独「Fragments」に通じるアプローチだったように感じる。

第6ステージ(前半):追悼 作曲家 多田武彦
男声合唱組曲『柳河風俗詩』より「柳河」
作詩:北原白秋/作曲:多田武彦
指揮:田中信昭

合同演奏に先立ち、2017年12月に亡くなった多田武彦氏の思い出を田中信昭氏が語り、引き続いて田中氏の指揮で「柳河」を合同演奏するという趣向がおこなわれた。よきところで合唱団員が入場するという流れだったのだが、スピーチを始めたときステージは空だったことに田中氏は戸惑っておられたように見受けられた。

お二方は旧制高等学校の先輩後輩で、田中氏らが合唱部を立ち上げ合唱の魅力にハマっていったことと、そこに多田氏が入部したというお話。田中氏が多田作品を取り上げることは稀だし、多田氏についての談話も少なくとも私は寡聞にして接したことがないため、とても貴重な機会。お話の終盤、合唱を熟知した多田氏だったから多田作品を皆が喜んで歌ったとおっしゃったあたりで、田中氏は感泣したご様子だった。

パンフレットでは、各団が多田氏および多田作品について語る特集が2ページ組まれた。

第6ステージ(後半):東京六大学OB合唱連盟によるエール交換
  • 東京大学の歌「大空と」(指揮:昭和53年卒・酒井雅弘)
  • 立教大学カレッジソング“St. Paul’s will shine tonight”(指揮:昭和63年卒・前川和之)
  • 法政大学校歌(指揮:平成3年卒・原 倫朗)
  • 明治大学校歌(指揮:平成14年卒・筑紫貴博)
  • 早稲田大学校歌(指揮:平成24年卒・東松寛之)
  • 慶應義塾塾歌(指揮:昭和59年卒・澤口雅昭)

後半は第1回からの恒例であるエールの合同演奏。大学の壁を越え大人数で演奏される校歌・応援歌には独特の感興がある。


21時半くらいに東京駅を出る上越新幹線の臨時増発に乗って帰宅。終演から5時間ほどどう時間を潰したか、もはや覚えていない。


末筆ながら、出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。

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