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組曲「吹雪の街を」考 (4) 楽章の流れ・構成

「合唱曲集」と「合唱組曲」を比べると、「曲集」だと小品の集合体という色合いが表に出ているのに対し、「組曲」はあるテーマを軸に収録曲(楽章)が並んでいて、しばしば楽章の順序に何らかの物語性が込められているところに違いがあるものと、せきは認識しております(もちろん例外もありますけど)。
そして、多田武彦氏は「合唱組曲」にこだわり「組曲の構築性」という言い回しを用いることもしばしばある作曲家です。
組曲「吹雪の街を」は、次の順で楽章が並んでいます。

  1. 忍路
  2. また月夜
  3. 夏になれば
  4. 秋の恋びと
  5. 夜の霰
  6. 吹雪の街を

タイトルを眺めただけでも、なんとなく四季の移ろいに沿ったっぽい並び順なんだろうなという感じがしますね。
第3曲以降で描かれている季節はタイトルどおり。第2曲「また月夜」の舞台となっている季節は晩春〜初夏にあたる時期と思われます(詳しくは「(6) II. また月夜」の項で)。第1曲「忍路」では冬のひとこまと夏のひとこまが描かれています。
多田作品では、楽章を四季の移ろいに沿った順序に配列することで、組曲全体にひとつの物語性を持たせる作品がしばしば見られます。せきが出版譜を所有する組曲に限っても「雪明りの路」「雨」「尾崎喜八の詩から」「わがふるき日のうた」「季節のたより」「尾崎喜八の詩から・第二」「樅の木の歌」「ソネット集」「尾崎喜八の詩から・第三」「叙情小曲集」などがこのパターンです。
ところで、組曲「吹雪の街を」では、季節のほかにもう一つの流れがあります。
(2) 伊藤整におけるテクストの位置づけ」および「(3) 多田武彦におけるこの組曲の位置づけ」で、この組曲では思春期の恋愛模様がクローズアップされていると述べました。
ここで偶数楽章だけ取り出すと「片思い状態(恋愛の前段階) → 別離の予感(恋愛中) → 失った恋への未練」という恋物語が浮かび上がるのです。
自然界と心象風景をダブらせた詩作は伊藤氏に限らないのですが、それを巧みに組曲のサブストーリーにした多田氏の構成は見事なものと言えましょう。
そして、組曲全体の導入である第1曲と、内向的で重たい前の楽章の空気を和らげ和ませる第3曲と、いったん男女関係から離れて荒ぶる自然を勢いよく描く第5曲を取り合わせることで、組曲全体に緩急をつけているわけです。
蛇足その1。
今年1月のアンコンで、男声合唱団トルヴェールは組曲「吹雪の街を」から第2・4楽章を選んで演奏しました。
本番前日でしたか、tree2氏が音楽監督を務める混声合唱団「カンターレ」がトルヴェールに引き続き同じ部屋で練習するということで、カンターレの女声メンバー何人かが早めに来ておりました。
練習の最後のほうでゲネプロみたいな感じで2曲通して歌ったところ、聞いていた女声陣が一言「……暗い」。
蛇足その2。
初出の詩集での掲載順(「日本詩人愛唱歌集」内「伊藤整 詩一覧」を参照)と、組曲「吹雪の街を」および「雪明りの路」での詩の並び順とを見比べると、異同があります。組曲における楽章の配列は、作曲者の創意によって再構築されたものなのです。
もっとも、詩集『雪明りの路』に収録されている詩群は、連作詩という意識で書かれたものではないようです。序文の中盤にこんな記述があります。

この詩集は或は一つのストオリーを追っているかも知れないが、それは私が編纂して了うまで気付かなかったものである。
作品の配列は主として制作の年代によったので、類同その他のことを少し考慮したに過ぎない。

—— 組曲「吹雪の街を」考の目次へ ——


【追記: 3月14日】
当エントリは当初3月14日の午前0時過ぎに掲載したものです。
そのあと大幅に改稿したので、公開されたタイムスタンプを同日午前11時付けに書き換えました。
なお、序文全体は北海道中央タクシー株式会社の公式サイト内で読めます。
【追記: 3月29日】
曲の順序と季節の流れが連動している組曲リストに、せきの思い違いによるミスで含めてしまったものが混ざっていたので、修正しました。

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