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組曲「吹雪の街を」考 (6) II. また月夜

今年初めにやらかしたポカで、せきにとっては今後も悪夢になりそうな曲です(微苦笑)。
この楽章について真っ先に指摘しないといけないのは、組曲「雪明りの路」第3曲『月夜を歩く』とのつながりです。
テクストが採られた詩集「雪明りの路」では『月夜を歩く』の一つおいて次に『また月夜』が載っています。ほぼ同じ頃に書かれた詩と思われますし、内容的にも『また月夜』は『月夜を歩く』の続編もしくはバリエーションとみて間違いではないでしょう。
たぶんこれを踏まえたのか、多田氏は『また月夜』を『月夜を歩く』と同じe-moll(ホ短調)で書きました。曲想の指示は異なるものの、4分音符=88というテンポは『月夜を歩く』末尾(「あゝ 何のための」以降)と同じです。
(4) 楽章の流れ・構成」で「舞台となっている季節は晩春〜初夏にあたる時期と思われます」と記しました。その理由説明を。
この詩の中では草が長く伸びているので、少なくとも秋や冬や早春ではありません。
それ以上は『月夜を歩く』がヒントになります。『月夜を歩く』には、桐の花がにおうという描写が出てきます。桐は北海道では5月終わり〜6月初めに花が咲くので、前段落を踏まえると、『また月夜』は『月夜を歩く』と同じぐらい、もしくは少しあとの時期を描いているものと推測できるのです。
『また月夜』に描かれているのは、思春期ならではの片思いからくる妄想です。妄想内恋愛のお相手は、第1楽章『忍路』最後の「まなざしの佳い人」と同一人物で、伊藤氏自身がのちに著した小説「若い詩人の肖像」では「浅田絶子」という名前で登場します。彼女の本名が角田チエということも、のちの研究で判明しています。
伊藤青年は浅田(角田)さんの住む忍路にしばしば通い、浅田(角田)さんへのプチ・ストーキングっぽいことをして思いを寄せていたんですが、結局この片思いは実らないまま終わりました。
この曲の構成はわかりやすいですね。Bari.とBas.のユニゾンからTen.IIが加わる音型が冒頭に提示され、そのあとの展開のバリエーションで曲が進んでゆき、これがもう一度あったのち、サビにあたるフォルテのくだりとレシタティーボ的なつぶやきが挿入され、再び冒頭の音型で締めくくられるという形です。
冒頭の音型を核にした部分は情景描写、サビ〜つぶやきは恋のゆくえについての心情の吐露。
個人的には歌っていてモヤモヤしたものが残る曲です。
多田作品ならではの気持ちよいハモりは抑えられていて、サビでいわゆるタダタケ節が顔を出すものの、5小節ぐらいで高揚は鎮まり、和音が転回形になったり、ぶつかったり、ユニゾンで2声になったりします。
前半に出てくるBas.の半音進行は詩の主人公の自己陶酔が反映されているのでしょうか?
—— 組曲「吹雪の街を」考の目次へ ——

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