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田中信昭著『絶対! うまくなる 合唱100のコツ』を読む

2014年2月2日付『「未来へ響け! 復興のハーモニー」を読む』に続き、当ブログでは2件目の読書記録記事です。


先月半ばごろから、田中信昭先生がヤマハミュージックメディアから上梓した『絶対! うまくなる 合唱100のコツ』という本のことが話題となっています。奥付には今年8月10日初版発行と記されています。

せきもツイッターで知り、今月初めに購入しました。田中先生ならではの経験と知恵が詰まっていて、わが意を得たりと思った記述もあれば、わが身を三省した記述もあります。いずれ演奏活動を再開する暁には、この本の記載を道しるべの一つにできればと思いました。


拙サイト来訪者の皆様に田中信昭先生が何者でいらっしゃるかのは説明は不要でしょう。

「先生」という敬称を付けているのは、今のところ一度きりながら、御指導いただいたことがあるからです。せきが大学2年次の東京六大学合唱連盟定期演奏会で、曲目は合同ステージ「哀しみの歌」およびアンコール「路標のうた」でした。田中先生は六団体各校に出向いて団ごとにレッスンするという話だったような記憶があるものの、スケジュールの調整がつかなかったらしくて立教にはいらっしゃらず、合同練習が初対面となりました。


本の書きぶりからは、田中先生の語り口が聞こえてくるように感じられます。もっとも、前述した20年ちょっと前の六連合同練習では、歌い回し・発語とか音の取り方とか作曲者の意図のアナリーゼといった、演奏曲に即した御指導が中心で、あの本に記されたようなベーシックなお話があったかどうかの記憶は残念ながら定かではありません。

近年の実際の練習では、もう少し踏み込んだご指導をなさっているようです。現時点ではマーキュリー・グリークラブ公式サイト「田中信昭先生指導語録」から一端を知ることができます。かつて他にもいくつかの合唱団公式サイトで田中先生のレッスン記録が公開されていたのですが、サイトリニューアルなどに伴い読めなくなってしまいました。


この本は8章から構成されています。

第1・2章では野口三千三氏の発言を参照しつつ、身体のありようにクローズアップしています。この本のユニークさが特によく表れていると感じた部分です。

第3・4章では練習でやるべきことについての記述が主です。

第3章に固定ド唱法と移動ド唱法を比較した節があり、田中先生は《現在では「固定ド」唱法のほうが、どんなことにも対応できるので歌いやすいでしょう》という結論を記しています。異論がおありの人も大勢いらっしゃることでしょうが、田中先生が好んで取り上げる演目は移動ド唱法では対応困難なものが多いという前提によるところが大きいように思われます。

第5章は発語やディクション。題材の一つに、ご存じ第九の有名な8小節が取り上げられています。田中先生と第九をめぐっていろいろ想起したことがあるのですが、脱線が著しくなるので、日を改めて別記事で記すことにします。(付記:2014/8/16付で「田中信昭氏と第九と——『絶対! うまくなる 合唱100のコツ』から思い起こしたこと」として公開しました)

第6章以降は章題のとおり。


巻末に合唱曲リストが付いています。サブタイトル「田中信昭のレパートリーより」や、田中先生が初演した曲に印がつけられていることなどを考え合わせると、著者のプロフィールに対する補足資料として読むべきでしょう。リストに出版情報がなく、未出版曲も遠慮なしに紹介されているのは、読者が選曲する際の参考資料としてはやや親切さを欠くかもしれません。

たとえば三善晃作品の項でいうと、近年比較的演奏頻度が高い『遊星ひとつ』「その日 −August 6−」などが挙がってなかったり、『クレーの絵本 第2集』が男声合唱作品としか記載されていなかったり(混声合唱版も存在します)というたぐいに引っ掛かった読者がいらっしゃることでしょう。いずれも田中先生が取り上げたことのない曲であるためと思われます。

かといって田中先生が演奏した経験のある曲目が網羅されているというわけでもなく、指揮したことがあるのにリストアップされていない曲も少なからず存在します。取捨選択の基準が謎なところです。


併せて読むのに好適と思われる本として、『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』講談社文庫『発声と身体のレッスン 増補新版 ——魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために』白水社あたりを挙げておきます。この2冊はいずれも脚本家・演出家の鴻上尚史氏による著作ですが、演劇にとどまらず広く体を使って声を発する人に向けた本です。そして鴻上氏と田中先生には、野口三千三氏の考案した「野口体操」という共通項があります。



末筆ながらご参考までに。

田中先生を著者として推薦したのは、第15回朝日作曲賞を受賞している作曲家・堀内貴晃氏だそうです。

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