CANTUS ANIMAE 第21回演奏会「つながる魂のうた vol.2」とのハシゴで、一昨年の第64回以来の東西四大学合唱演奏会こと四連を聴いてきた。
インターミッションで第一生命ホールを飛び出し、すみだトリフォニーホール@錦糸町に着いたのは開演数分前だったか。
各大学から指定席完売の報が出た直後すみだトリフォニーホールのチケットセンターに慌てて電話したら(本番の十日くらい前だったか)ラッキーにもまだチケットがあったので、そちらで手配した。残り数枚、危ないところであった。
エール交歓
さすがに2か月近くあけたら記憶に残ってなく、すみません。
第1ステージ:関西学院グリークラブ
- 男声合唱組曲『富士山』
- 作詩:草野心平/作曲:多田武彦
指揮:広瀬康夫
- 作品第壹
- 作品第肆
- 作品第拾陸
- 作品第拾捌
- 作品第貳拾壹
関学の伝統・タダタケを見事に歌い切った。
ものすごく譜面や作曲者の意図に忠実な演奏。たとえば第3曲「上天に金隈取の雲一点」と繰り返すくだりは音量に見落とされがちな指示があるのだが(前半はmfだったり、バスが主役の箇所とトップテノールが主役の箇所の切り替わりだったり)、ちゃんと再現されていた。たとえば第4曲の冒頭、パートソロが歌い継いでいくくだりは能楽をイメージしたものだそうだが、実に謡らしかった。
終曲について、せきは第1回OB六連の合同ステージで作曲者の指揮により歌った経験がある。当時の練習で、多田先生から「この曲の後半は多少ざっくりした歌唱で構わない。ベルリンフィルも一つの曲を丁寧に演奏するのは前半だけである」という趣旨のご指導をいただいた。このたびの演奏もその通りになっていて、作曲者の狙い通りと感心したものだが、広瀬先生が指揮台を降りた直後に首をかしげておられたところを見ると演奏者が意図したものではなかったのかも。
第2ステージ:早稲田大学グリークラブ
- 北東欧アラカルトステージ 〜若人と海〜
- 指揮:松原千振
- Muistse mere laulud/古代の海の歌(作曲:Veljo Tormis)
- Pisen Na Mori/海の歌(作曲:Bedrich Smetana)
1曲目を聴くのは明治大学グリークラブ定期演奏会(1996年)での日本初演以来。当時は正直よくわからない曲だなと思いながら客席にいたような。20年近く合唱経験を積み重ね、いくつものトルミス作品を知った耳で聴き直すと、様々な要素がいかにもトルミス。それが分かるぐらい整理された演奏であったともいえる。
2曲目の生演奏は初体験。これを含むスメタナの男声合唱曲はCDでいろいろ聴いてハマったものだ。CDで聴いたときの記憶や早稲田大学グリークラブということで脂マシマシなサウンドを想像していたけれど、実際の演奏は幾分すっきりしたもの。
それにしてもスメタナ作品はカッコいい。「Slavnostni sbor」ばかりなのはもったいない。
ちなみにツイッター等で「2曲目は本邦初演」という前宣伝を見かけたが、過去に国内団体による演奏履歴があることが指摘されたためか、パンフレットでは一切触れられなかった。
第3ステージ:同志社グリークラブ
- 『Missa Mater Patris』
- 作曲:Josquin Des Prez/編曲:Eliot Forbes
指揮:伊東恵司
- Kyrie
- Gloria
- Credo
- Sanctus
- Benedictus
- Agnus Dei
なかなか難儀な曲を頑張って歌いこなした。フレージングはもっと流麗でもよさそうな気がするが、ルネサンスポリフォニーならではの線の絡み合いとのバランスが難しいところ。
聞けば、昨年度の定期演奏会の再演らしい。現役の要望か指揮者の意向かは分からないが、皆川達夫先生いわくルネサンスポリフォニーは書道でいう楷書にあたる様式なので、伊東メソッドの基礎固めに適した選曲であろうというのが極私的感想。
Forbes編曲を選んだのは同志社だからか、指揮者がこの編曲をレパートリーとした福永陽一郎門下の伊東先生だからか。Forbes版はトップテノールへの負担が大きく、このたびもSanctus以降でスタミナ切れの気配がちらほらと。もっとも、皆川達夫編曲は特に内声パートで音域の上下動が激しく、特にバリトンにはForbes編曲のほうが適しているのかも。
第4ステージ:慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
- 男声合唱組曲『ひたすらな道』
- 作詩:高野喜久雄/作曲:高田三郎
指揮:佐藤正浩/ピアノ:前田勝則
- 姫
- 白鳥
- 弦
作曲者いわく、ご自身の作品の中でも極めて劇的な組曲。その劇的なところを、レシタティーヴォを生かして、より激しく歌い上げた。
なお、パンフレットでは紹介がなかったが、この男声版は慶應ワグネルの委嘱初演作品。せきが大学3年のとき早慶交歓演奏会(かつて東西四連が関西公演の年に行われていた。4団体とも人数がかつて並に増えている昨今、復活してもよさそうなものだが)の慶應学生指揮者ステージで取り上げられたこともある。
第5ステージ:四大学合同ステージ
- 男声合唱版『唱歌の四季』
- 編曲:三善晃
指揮:佐藤正浩/ピアノ:前田勝則,細見真理子
- 朧月夜
- 茶摘
- 紅葉
- ゆき
- 夕焼小焼
男声合唱版初演に参加した身にとっては懐かしい曲集。そのへんの思い出話などは、当ブログで「三善晃編曲『唱歌の四季』にまつわる折々」や「三善晃編曲『唱歌の四季』にまつわる折々(続)——男声合唱版楽譜公刊に至るまで」という記事を書いたので、よろしければどうぞ。
ベタな選曲をベタに演奏すると思いながら聴き進めていたら「ゆき」で驚いた。前奏と後奏のピアノに聞き覚えのないフレーズが出てきたからである。あとで伺ったところ、指揮者の要望で2台ピアノだけのための版から引用したものとのこと。確かに、いかにも三善晃なサウンドであった。
更に「夕焼小焼」では、一部メンバーは山台から降り合唱がステージいっぱいに広がって歌い上げた。この曲でも前奏と後奏で2台ピアノだけのための版からの引用が混ざる。冒頭は無伴奏のほうが個人的には好み。
アンコール
- 忘却(男声合唱とピアノのための『満天の感情』より)※4手ピアノ版初演
- 作詩:池澤夏樹/作曲:鈴木輝昭
指揮:佐藤正浩/ピアノ:前田勝則,細見真理子
男声合唱と2台ピアノのためのレパートリーは少ない。昨年ワグネルが男声合唱版を初演した松本望『二つの祈りの音楽』なのかなあ、三善晃だったら「いのちのうた」は長大だよなあ、『遊星ひとつ』から「バトンタッチのうた」あたりなんだろうかなあなどと想像していたら、指揮者のスピーチで「私はアンコールに凝る癖がありまして。男声合唱版『唱歌の四季』出版譜を監修した鈴木輝昭先生にお願いして、このたびのために『満天の感情』終曲のピアノパートを2台4手に改作していただきました」。
鈴木輝昭作品らしく込み入った音を、しっかり演奏。いずれ各団体の定期演奏会などで組曲全曲を歌うなんてことがあるかもと期待したくなった。
この『満天の感情』、今のところ再演頻度が低い。もしかしたら東京初演だったのではなかろうか。
ステージストーム
- 関西学院グリークラブ「U boj」(口伝版/作曲:Ivan Zajc)
- 早稲田大学グリークラブ「斎太郎節」(編曲:竹花秀昭)
- 同志社グリークラブ「Soon Ah Will Be Done」(編曲:William Levi Dawson)
- 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団「Trinklied」(作曲:Felix Mendelssohn Bartholdy)
関・早は恒例のやつ。同・慶は変化球だったような。
出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
ホール近くのラーメン屋で晩飯をいただき、新幹線で帰宅。もりだくさんな週末であった。