ポジ太会企画、および一部参加者との夕食会のあと、豊洲文化センターのシビックホールへ移動し「小さな夜の音楽会 #06」を聴く。
「小さな夜の音楽会」、略して「さよコン」は、合唱指揮者という枠では収まらないくらい多面的に活動している三好草平さんの企画・主宰・プロデュースによる演奏会。概要は、さよコンwebサイト表紙の「コンセプト」を。気軽に良質な演奏がコンパクトに楽しめるコンサートはコロンブスの卵みたいな企画。
ツイッターで流れてくる合唱演奏会情報に接し、上京するタイミングと合えば(以下、ポジ太会参加を決めた動機と同じ)。
さよコンの入場券は公式サイトから申し込んだ。手続きして早々に郵便でチケットが届く。どうも三好さん御自ら送付の手配をしてくださった模様。ご多忙そうなところ恐縮である。
ロビーで、会津混声合唱団で活躍中のほしくんと落ち合う。彼は新潟大学合唱団の学生指揮者だった人で、せきとは新潟ユース合唱団つながり。そのまま隣の客席に座る。
入場のため受付に並ぼうとしたら、新潟ユース合唱団の創設者であった佐藤匠さんに会う。挨拶。
豊洲文化センターは初体験。
シビックホールは舞台後方や客席カミ手側の壁がガラス張りになっていて、なかなかよく響く会場。ヴォーカルアンサンブルや小規模〜中規模の合唱団に好適そう。
開演に先立ち、主宰の三好さんによる前口上。演奏会の内容説明とか、客席のマナーについての注意とか。
ルックスエテルナ 単独ステージ
- Missa“Ave Regina caelorum”より Kyrie
(作曲:Guillaume Dufay) - Missa“Pange lingua”より Gloria
(作曲:Josquin des prez) - Mass for five voicesより Sanctus & Benedictus
(作曲:William Byrd) - Mass for four voicesより Agnus Dei
(作曲:William Byrd)
ルックスエテルナはルネサンスものに積極的に取り組んでいる、栃木県を拠点に活動する混声合唱団。ここの演奏を聴いたのは、2012年に富山で行われた全日本合唱コンクール全国大会以来(当時は正直よくわからなかった)。今回は、様式を守りつつも骨董品ぽさが全くなく、時代を超えた雄渾な流れといった趣の演奏という感想を持った。各パートが大きな筆で揮毫するかのような旋律線のフレージングで歌っていて、それが実に活力いっぱいの音楽となって編み上げられている。アルトにしっかりした歌い手がいて、彼女が団全体のサウンドの要となっているかのように見受けられた。
舞台上には開演前からスケッチブックらしきものが置かれた高いスタンドが置かれていた。「Kyrie」と「Gloria」で合唱団は、そのスタンドを囲んで歌うという、当時のやりかたに沿った演奏。置いてあったものは楽譜。この演奏会では説明がなかったが、使った楽譜はクワイヤブックと呼ばれるタイプのものだったらしいことを後で別の機会に知った。
バードのミサはスタンドを囲まない形での演奏。「Agnus Dei」は今年の全日本合唱コンクール課題曲のひとつ。せきはこのミサ全曲を大学2年のとき歌ったが、諸先輩も含め一同悪戦苦闘したおぼえがあり、ずっとあとになってLalariでモテットを歌うまで苦手意識を持っていた。
チラシには「指揮:内田等」と記されていたが、このステージでの内田さんは、少なくともクワイヤブックを使った曲ではアンサンブルリーダーみたいな役割で合唱団に混じって歌っていたような。
混声合唱団 鈴優会 単独ステージ
- 四人の作曲家による連作ミサ曲『深き淵より』
- 指揮:名島啓太
- Kyrie
(作曲:森山至貴) - Gloria
(作曲:相澤直人) - Sanctus
(作曲:市原俊明) - Agnus Dei
(作曲:名島啓太)
今年3月に行われた、名島さんの合唱指揮者生活30周年を記念する演奏会で、合唱団ユートライ・北区民混声合唱団・鈴優会・新潟大学合唱団の合同で初演されたばかり。演奏に先立ち、作曲者4名がステージ上に集まって、この連作ミサ曲についてのプレトーク。といっても名島さんは指揮者、市原さんはアンサンブルトレーナーおよび団員ということで、客席から登場したのは森山さんと相澤さんのお二方。
ミサ全体にまとまりをもたせるべく、ルター作曲のコラール「深き淵より」の定旋律を各曲のどこかに用いるという縛りが取り入れられた、とのこと。ただ自分には楽章ごとの差異に注意がいってしまい、共通項については正直わからなかった。12月1日に合唱団ユートライが定期演奏会で再演するそうなので、行くことが叶えば(勤務日なのでどうなるか未確定だが)そちらに意識を向けて聴き直したいところ。
森山さんはKyrieについて、バッハの様式を勉強するつもりで作曲に取り組んだとのこと。言われてみればバッハの宗教合唱曲に通じる雰囲気があるような気がする。
相澤さんはミサ曲を書いた経験があるものの、他のお三方同様クリスチャンではないとのこと。お姿を見るのは前日の四女連以来、2日連続である。Gloriaは起伏や物語性に富んだ楽章だったような。
市原さんはラテン語も宗教曲も書くのは初めてとのことで、これまで日本語の詩に作曲してきたのと同様のスタンスでテキストを読み解きながら作曲したとのこと。間奏みたいな感じで、ちょっと長めのスキャットやボディーパーカッションなどが挿入されていたような。これまでの作風を踏まえると相澤さんと市原さんは担当が逆になりそうなものだが、あえてそうしなかったのがこのミサ曲の持ち味につながっているのであろう。
名島さんによるラテン語の宗教曲『ミサ曲第1番“日本から”』「Ave Maria」に比べると、いろいろ詰め込んだという感じが減り、音楽が集約された印象。この楽章だけヴォーカリーズやスキャットが使われなかったはず。
あ。名島さんの出自や鈴優会の成り立ちについては、2009年11月3日付け記事「名島先輩 → 名島先生」に書きました。ご興味のある方、よろしければどうぞ(宣伝)。
合同ステージ
- Ave Maria
- 作曲:Tomas Luis de Victoria
指揮:内田等 - Ave Maria
- 作曲・指揮:名島啓太
同じテキストに作曲された2群混声合唱曲。
1曲目は三好さんの発案・要望による選曲とのこと。第1群と第2群の対比が立体的で、2群間の掛け合いや線の絡み合いが面白い。
2曲目は三善晃作品にみられる1群・2群が相補的にテキストを歌い合う前半と、多声部で複雑に和音が移ろう後半で構成され、いかにも今どきの混声合唱曲。
出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
終演後、名島さんにご挨拶したのち、ホールすぐそばの豊洲駅に駆け込む。上越新幹線の最終便(東京駅21:40発)に乗るには豊洲駅21:07発の有楽町線がリミットだったが、無事間に合い、乗り過ごすこともなく予定通り帰宅。
濃密で有意義な2日間の上京にできたと思う。