「えちごコラリアーズ Whiteday Concert 2015」を聴きに、だいしホールへ出かけてきた。
濃密な演奏会であったと思う。出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
この男声合唱団、せきは初練習から一昨年8月下旬まで参加していた。ホワイトデーコンサートへは第1弾にあたる2012年と翌2013年の2回出演している。聴衆として伺うのは初めて。昨年行かなかった最大の理由は、貯金を食いつぶして求職活動に悪戦苦闘していた時期で、恥ずかしながら長岡市外へ出かける交通費さえも捻出できない有様だったからである。
チケットは今年の新潟県ヴォーカルアンサンブルコンテストの帰り道に、新潟市中央区のCDショップ・コンチェルトで合唱団NEWSさん演奏会チケットと一緒に購入しておいた。
昨日で販売終了したSきっぷを使って上越新幹線で新潟市まで移動し、新潟駅からは路線バスで演奏会場へ。
開場の14時をまわって早々にホール入りし、フロントで仕事をする団員3名ほどに声をかけ、客席に座る。
ホールは見た感じ4分の3前後の来場者で埋まっていたであろうか。合唱仲間もずいぶん見かけたが、半分ぐらいは挨拶できずじまい。隣席にVOX ORATTAのメンバーが来て「ブログ見ましたよ」と言われる。
- オープニングアクト:Ceann Dubh Dilis
- 作曲:Michael McGlynn
指揮:木越智彦/トムトム:齋藤陽介
プログラムに載せない曲目を演奏会冒頭に演奏するのは吉例。ホワイトデーにちなんで毎回「愛の歌」という隠しテーマに沿って選曲されている。海外作品に疎いせきは日本語でないことしか分からず、第1ステージ後の指揮者MCで初めて何の曲か把握した。
指揮者の木越さんは作曲者に会って話す機会があったそうで、この曲を取り上げることを報告したら、演奏の録音を送って欲しいというリクエストを受けたとのこと。
- Stage 1:男声合唱組曲『雨』
- 作曲:多田武彦
指揮:木越智彦
- 雨の来る前
(作詩:伊藤整) - 武蔵野の雨
(作詩:大木惇夫) - 雨の日の遊動円木
(作詩:大木惇夫) - 雨 雨
(作詩:尾形亀之助) - 雨の日に見る
(作詩:大木惇夫) - 雨
(作詩:八木重吉)
ハーモニーの移り変わりによる色彩の変化で音像を描写していくという趣の演奏は作曲者が高く評価しそう。ただせきの個人的趣味として、もう少し発語からのアプローチによる表現がなされてもよかったのではとも感じた。
なにわコラリアーズの流儀を感じさせるハモらせかた。ここからいろいろ気づき考えたことがあるが、長くなるので稿を改めて記すことにする。
このステージと次のステージの間、歌い手は舞台袖に退場して着替えなど。指揮者ひとり残り、前述のMC。
- Stage 2:ア・ラ・カルト
- 指揮:木越智彦
- Ubi Caritas
(作曲:Ola Gjeilo) - 『Zwei geistliche Choere Op.115』より Periti autem
(作曲:Felix Mendelssohn-Bartholdy) - 無伴奏男声合唱による日本名歌集「ノスタルジア」より 鉾をおさめて
(作詩:時雨音羽/作曲:中山晋平/編曲:信長貴富) - Set down Servant
(Spirituals/編曲:横山昭) - 赤いスイートピー
(作詞:松本隆/作曲:呉田軽穂/編曲:霜野裕輝) - Ramkali
(Indian Raga/編曲:Ethan Sperry)
会場が暗転したままステージが始まった。壁際に沿って歌い手が客席を取り囲む形でキャンドルを持って並び「Ubi Caritas」を歌う。
歌い手が舞台に戻って並び直す間に指揮者によるMC。このMCは以降も曲間に挟まった。
この団による「Periti autem」「鉾をおさめて」を聴くのは2度目だか3度目だか。どちらも前に聴いた時は舞台の中だけで音が閉じていたように感じたが、今回は客席までサウンドが届いていた。
「Set down Servant」は雄々しくもオーソドックスな演奏。
「赤いスイートピー」はメンバー(せきが離れたのち入団したため存じ上げない人)が書き下ろしたという、男声合唱を鳴らすツボを心得た編曲。
ア・ラ・カルトステージの最後に大曲を演奏するのも吉例。今回は「Ramkali」で、様々な声が飛び交う、耳に面白い曲。
- Stage 3:Vocal Communication こしひめ 賛助ステージ
さとう恭子の詩による愛唱曲集『やさしさに包まれて』より - 作詩:さとう恭子/作曲:松下耕
指揮:木越智彦
- そらまめ
- なつめ II
- コスモス
- ざぜんそう
- あこがれの大地へ
- (ステージアンコール)ごきぶり五郎伝
途中に賛助出演団体によるステージがあるのも吉例。毎回異なる団体が出ている。今回は、えちごコラリアーズの妹として生まれた女声合唱団。
演奏を聴くのは昨年の新潟県合唱祭以来。前回に比べると、ピラミッドのような音量バランスのアンサンブルは安定感と躍動感が増し、団のキャラクターが明確化してきているような。
この人たちがこの曲集を演奏するにあたっては、譜面を持たないほうがコミュニケーションが取りやすそうに見受けられる。
- Stage 4:Veljo Tormis 男声合唱曲集
- 指揮:伊東恵司
- Kaksipuhendusより“Uete laulu tahaks laulda”
- Kaksipuhendusより“Taehed”
- Varjele, Jumalam soasta(タムタム:齋藤陽介)
- Halletused(ソプラノ独唱:横田聡子)
創立から念願のひとつであった伊東音楽監督のタクトによるステージがついに実現。
1曲目と2曲目は切れ目なく続けて演奏された。それ以降の曲間では伊東音楽監督による曲紹介MCが挟まった。
歌い手19名という規模で伊東メソッドにより整理整頓されたサウンドはすっきりしていながらも、しばしばフォルテを要求する指揮により団が自らの殻を破るかのような響きが聞き取れた。
- アンコール:Pseudo-Yoik NT
- 作曲:Jaakko Mantyjarvi/指揮:伊東恵司
「Pseudo-Yoik NT」を歌うことも団にとって念願のひとつであった。一昨年のホワイトデーコンサートで候補曲に挙がっていたが、そのときは人数などの問題で見送られた。演奏が叶ったのは昨年の全日本合唱コンクール新潟県大会。そのときも今回も、りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)コンサートホールで行われた第58回全日本合唱コンクール一般の部の全国大会で、なにわコラリアーズが自由曲として演奏したときの演出が、少々アレンジの加わった形で再現された。
- アンコール:A・RA・SHI
- 作詞:J&T/作曲:馬飼野康二/指揮:木越智彦
ホワイトデーコンサート吉例のひとつが、クロージングのアンコールにおけるこの種の曲。ラップが入ったり、後半では団員がみな振り付きで歌ったり、今年も大盛り上がりであった。
アンコール1曲目と2曲目の間に来年の告知。伊東先生は来年もお振りになるという。その曲は、信長貴富作曲「Fragments -特攻隊戦死者の手記による-」とのこと。選曲の経緯は知らないが、歌い手ひとりひとりが個として表現することが要求される(という趣旨のことを出版譜に作曲者が記している)作品に取り組むことは団にとって意義深いものになりそうな予感がする。
終演後、ロビーストームとして竹花秀昭編曲「齋太郎節」。
そのあと知り合いの団員諸氏にご挨拶。握手で応えてくれた人もいた。「悲願が叶いましたね」と声を掛けたら、一人から「何を言ってるんですか。『満場のりゅーとぴあ』など、まだまだ達成してない目標がありますよ」と返答される。
伊東音楽監督ともご挨拶。昨年のThe Premiereで当方が差し入れをしたことを認識してくださっていた。
彼らはそのまま打ち上げをし、翌日昼に新潟を発って栃木市栃木文化会館で行われた第4回関東ヴォーカルアンサンブルコンテストに出場し4位金賞を獲得したとのこと。おめでとうございます。それにしてもタフですねえ。