「第70回全日本合唱コンクール全国大会」大学職場一般部門を聴いての感想。
混声合唱の部で全国大会に出場したのは20団体。他部門の倍。今までみたいな調子で書くとあまりにも長大となりそうなので、この部門だけ2分割する。
この部門は、1階席中央ブロック、カミ手寄り前から4列目で聴いた。隣にあたる端から3席には朝日新聞の取材班が。
前置き
各団体の自由曲についてはパナムジカ公式サイト「コンクール情報」の「平成29年度(第70回)全日本合唱コンクール出場団体・演奏曲目・結果」(ただし演奏順にあらず)を、課題曲の中身については同じく「平成29年度(第70回)全日本合唱コンクール課題曲」を参照ください。
ナニサマな表現が混じってます。気分を害する御方におかれましては何卒ご容赦いただきたく。
室内合唱の部について書いた記事にも記した通り、当方の合唱経験や記憶力などに起因する事情で、特に現代の洋物について記述が薄ぼんやりした傾向が強くなります。
それと、今まで断り書きをし忘れてましたが、ときどき脱線や余談が混じります。
もうひとつ追加。全日本合唱連盟による季刊誌「HARMONY」で、審査員による選評座談会や審査員個々人による順位表の載った号が今月第2週あたりに発刊されました。ただ、せきは現在この号を入手しておらず(入手できるのは次に上京した折、恐らくゴールデンウィーク以降)、未読のまま記事を書き進めてます。
感想など
- 大分市民合唱団ウイステリア・コール
- 指揮:後藤秀樹
自由曲は、このところ流行りつつある作曲家お二人の取り合わせ。
課題曲も含め、作品のキャラクターを描き分けるのが見事だったような。
- 合唱団ことのは
- 指揮:高嶋昌二/ピアノ:藤澤篤子(課題曲・自由曲とも),平林知子(自由曲のみ)
課題曲は、この曲がもつ1980年代っぽい香りが最も濃厚に表れていたと思う。
自由曲は近年ブームで、ご縁があれば聴いてみたかった。宗左近の詩だと誰が作曲しても独特の説得力があるが、この曲は闇と光が特徴的かな。深奥なる詩曲の世界を紐解くような演奏。
- Baum
- 指揮:大木秀一
重心が低くて安定感たっぷり。
- 合唱団 やえ山組
- 指揮:岩本達明
ツイッター @chor_aoyamagumiでは時々犯行声明を模した物騒な表現を用いて告知をする団。構成員である男声が「広域指定合唱団青山組」という名前で活動してるし。でも演奏は凶悪でも暴力的でもなく、どちらかというと繊細できめ細かいように思う。
この団による課題曲を聴いて、同じ指揮者による東京工業大学混声合唱団コール・クライネスでやろうとしたことが見えたような気がする。大学ユース合唱の部の記事にも記したとおり、小さくて壊れやすい宝物を掌でそっと包み込むような演奏だった。
自由曲。曲の肌触りを的確に歌い分けていた。だからこそなおさら『人間の顔』と「私が歌う理由」を続けたことに違和感をおぼえる。同じ『地球へのバラード』からならば「地球へのピクニック」のほうが相性がよかったのでは?
- 合唱団ユートライ
- 指揮:名島啓太
これまで定期演奏会やコンクール新潟県大会などで拝聴したのと比べ、声や表現の方向性にばらつきが少なく、そのぶん説得力が強かったように感じる。歌いこんできた賜物か、楽曲との相性か、会場の響きに後押しされたか。
- scatola di voce
- 指揮:森田悠介
「Alleluja」の躍動感が特に印象的。
大分市民合唱団ウイステリア・コールと選曲の方向性が近いが、雰囲気はだいぶ違う。メンバーの年齢層やバックボーンの幅広さ←→均質性ゆえかなあ。
- VOCE ARMONICA
- 指揮:黒川和伸/ピアノ:松原賢司
課題曲は「光りながら」が言葉通りに光り輝く演奏。
自由曲。2016年5月に聴いた栗友会の演奏は投石器で巨岩が飛んできたみたいな印象を受けた。それに対し、このたびは、お手玉やらラグビーボールやら様々な大きさの礫を一人一人がこれでもかと果てしなく投げつけ続けるみたいな熱演。
この指揮者・ピアニスト・歌い手による高嶋みどり作品を聴いてみたい。
- 岡崎混声合唱団
- 指揮:近藤惠子
課題曲、このたび聴いた中では恐らく最も楽譜に忠実な演奏なんだろうなというサウンド。
自由曲のペンデレツキ。どうもスラヴ系の言葉らしいという程度しか聞き取れなかったけど、なんとなく大聖堂にいるみたいな音空間。
- 混声合唱団うたうたい
- 指揮:高嶋昌二
課題曲は「屈託」「恐怖」というネガティブな言葉を強調することで、逆説的に希望を描くように聴こえた。
自由曲、「人さし指秘抄」からは濃い目なブルース色によるどす黒さ、「ヒスイ」からは瑞々しさと熱情を感じた。
- 鶴岡土曜会混声合唱団
- 指揮:柿崎泰裕
課題曲は課題曲、自由曲は自由曲としての演奏。
自由曲は混声合唱組曲『五つの願い』第1〜3曲。第2曲は課題曲G3でもあるが、課題曲でなく組曲という物語の一楽章で、単品で演奏するのとは異なる説得力があるように感じた。
全国大会直前に定期演奏会を催した由。定期演奏会の勢いにのってコンクールなんて、タフ!
おまけで蛇足:ユートライがらみで
なにしろ同じ新潟県が地元で、県内の合唱界は割と世間が狭いため、全国大会出場メンバーには相互に面識のある知り合いが何名かいる。団長(表彰式で白いカーディガンを羽織っていたソプラノさん)は新潟ユース合唱団つながりで、このたびは表彰式前に少し話すことができた。東京芸術劇場の歌いやすさに驚いていた。かぷとくんは彼が高校生時代「直江の婿えらび」で出会い、えちごコラリアーズでご一緒したことがある。ici_alphaさんも、えちごコラリアーズ以来。この2人にも東京芸術劇場のロビーで声をかけることができた。Miekoさんは少し前に某演奏会ロビーで「○○さんと一緒にいるあなたは何者?」と尋ねられ、のちツイッターでも相互フォロー関係となったが、なぜかその後はご挨拶しそびれてばかり(10月に行われた女声アンサンブルirisの演奏会でも)。
指揮者の名島さんにも遭遇するかなと下記のツイートをしたのに、果たせなかった。不明な部分がございましたら名島さんとのつながりについて書いた記事を参照くださいませ。
総会にはOB会事務局の一員として渡辺亨先輩が。一方、立教から徒歩数分の芸劇にはコンクール出場者として、亨さんの代に立教グリーを飛び出し鈴優会を立ち上げた名島啓太氏が。ちょっとした感慨。
— せき (@chor16seki) 2017年11月26日
ユートライは中5日を挟み、次の週末が定期演奏会であった。伺いたかったけど、全国大会直後に大雪が降り、退勤後に小一時間高速道路を飛ばして新潟市中央区へというのは危険と判断したため諦めた。