わが出身団体による「第106回立教大学グリークラブ男声定期演奏会」を聴いてきた。男声単独の定期演奏会は昨年の第105回以来。
OBなのでどうにも見方が厳しくなってしまいますが悪しからず。
上越新幹線に乗り、13時20分に東京駅に到着。駅の中で昼食をいただき、地下鉄を乗り継いで清澄白河駅で下車、15時になるのを待ってホテルにチェックイン。
演奏会場は練馬文化センター、最寄は練馬駅。都営大江戸線で一本なので乗換えがないのは楽だが、乗車時間が約50分。開演16時だとぎりぎりかなと踏んでチェックインを先に済ませたが、部屋に荷物を置いたりしたら想定より時間がかかり、乗れた電車は15時19分発。間に合わないことが確定してしまった。
チケットは当日預かりということで手配していたので、会場で代金とチケットを受け渡ししていたら、スピーカーからエールが始まったのが流れた。
プログラムパンフレットに記載されたメンバーは、Top Tenor=15名、Second Tenor=11名、Baritone=13名、Bass=11名、計50名。久邇先生がプログラムのパンフレットに寄稿した文章の最後に《合唱は「数は力」です。頑張って同志諸君を増やすようにしてください。この歌う喜びをできるだけ多くの朋輩にわけ与えてください》と書いておられた。
エール
- 「St.Paul’s will shine tonight」
- 編曲:鶴岡陽一
指揮:若井瞭(学生)
そんなわけで、この曲だけロビーでスピーカー越しに聴いた。
今年の六連で「the」の発音に「ザ」が混じっていたのは直っていたようだが、音程があまりよろしくなかったのが心配。
プログラムパンフレットの「’s」は正しく印刷されていた。
第1ステージ
- 『Missa Dominicalis』
- 作曲:Joseph Kromolicki
指揮:黒岩英臣
作曲者は20世紀前半に活動したポーランド生まれの教会音楽家。ちょっと調べたところでは、昨年の『MISSA in honorem Sancti Huberti』同様、日本では関西学院グリークラブが林雄一郎氏のステージで取り上げたことがある程度らしい。林氏が亡くなって以来、関西学院グリークラブは定期演奏会で宗教曲を取り上げなくなったため、今やこの種の曲を毎年演奏する大学男声合唱団は立教グリーぐらいなのである。
黒岩先生がパンフレットに寄稿していわく《この曲は、2年前に演奏したばかりですし、ここでまた諸君が取り上げようとは思い及びませんでした。もう少し掘り下げてこの曲を自分たちのものにしたいと思って……などと殊勝なことを話しておりましたが、もちろん私はそのまま鵜呑みにした訳ではありません。ですが、きれいな曲ではありますから、私ももう一度この曲に向かい合い、グリーの諸君と共に、演奏に魂を傾けてみようと思っています》。
修道士経験のある黒岩先生は典礼の衣装をまとって登場。今回も黒岩先生ならではの濃厚な表現が随所にみられたものの、残念なことに歌う側の対応がいまひとつで、指揮者の音楽が十全に伝わらなかったように聴こえた。中でもトップテノールのばらつきが気になった。フレーズ終わりの決め所では下3声がきちんと和音を鳴らしていたことに助けられたが。特にバスは、やや荒削りながらもよく揃っていて、サウンドに十分な安定感をもたらしていたと思う(ほかのステージも同様)。
第2ステージ
- 男声合唱組曲『永久ニ』
- 作詞・作曲:鈴木憲夫
指揮:若井瞭(学生)/ピアノ:内木優子・廣瀬康
もともと混声合唱組曲。男声合唱版は一昨年四国で初演され、そのとき指揮者を務めた広瀬康夫氏が「はまってしまいました」ということで初演直後に広瀬氏の指揮で関西学院グリークラブにより東西四連と定期演奏会で再演された、という曲。
せきはまったく初めて。鈴木作品に対し「永訣の朝」『二度とない人生だから』などで派手さが少ないというイメージを持っていたが、この組曲はイメージと違い、ずいぶん力強い。
若井くんは暗譜で指揮した。合唱は、とにかくよく声が出ており、音程・ハーモニーもなかなか。ただ欲を言うなら、せめて終曲のラストぐらいは歓喜とか躍動とかいった表情があると、もっと説得力が増したのでは。
第3ステージ
- 男声合唱組曲『中勘助の詩から』
- 作詩:中勘助/作曲:多田武彦
指揮:高坂徹
この組曲を現役が高坂先生の指揮で取り上げたのを聴くのは2回目。前回はいつだろうと思って調べたら2008年の六連。とても完成度の高い演奏だったような記憶があるが、あれからもう7年半も経ったんですねえ。
先週タダタケを歌う会“コンサート第肆”で『雨』を聴いたときにも感じたが、近年の高坂先生の音楽づくりは、せきが合唱に混ざっていた一昔前から、ずいぶん変貌を遂げつつある。今回もそう。
合唱も健闘し、丁寧に歌っていた。ただ「かもめ」「ふり売り」でスタミナ切れの兆候がみられたかしらん。「追羽根」のハミングで体勢を立て直したみたいだったけど。
第4ステージ
- 男声合唱組曲『IN TERRA PAX 地に平和を』
- 作詩:鶴見正夫/作曲:荻久保和明
指揮:高坂徹/ピアノ:久邇之宜
高坂先生が「先生」として立教グリー現役を指揮したのは1996年の第87回男声定期演奏会が最初(いきさつは「北村協一先生にまつわる思い出 (3)」で少し触れてます)。そのとき取り上げたのが『IN TERRA PAX』で、今回の選曲理由である終戦70年とは違う意味でも背景があるのだ。そういえばこのとき幹部学年(せきの1年後輩)でバリトンパートリーダーを務めた人が今日聴きに来ていたな、挨拶だけで感想は聞かなかったけど。
このステージは全体の照明を落とし指揮者とピアニストにだけスポットライトが当たった状態で演奏が始まり、Allegroに入ると同時に明転するという演出が行われた。
演奏はとてもシンフォニック。「かえせ」の連呼を限りなく無声音に近く発音したり、「ヒュルリー」でhの子音を立てたり、終曲エンディングでテヌートをかけたりが効果的。
アンコール
高坂先生+久邇先生のアンコールは、F.P.Tosti作曲/北村協一編曲「Addio!」。譜面の調性はAs-durだが、今回は半音上げたキーで演奏。クライマックス、バリトンのパートソロでレシタティーボ的にテンポをまくったのが印象的。
第1ステージと同じ衣装で登場した黒岩先生のアンコールは、Felix Mendelssohn作曲「Beate Mortui」。やはり黒岩先生の振るロマン派音楽は深みがひとあじ違いますね。
学生指揮者・若井くんのアンコールは、岩間芳樹作詩/新実徳英作曲「聞こえる」。あれ、昨年に引き続き新実作品だ。起伏に富む楽曲を、フィナーレにふさわしく演奏した。
しめくくりとして恒例の「神共にいまして」を、引き続き若井くんの指揮で。いろんな事情があるんだろうけど、指揮が皆川達夫名誉部長でないのはやっぱり切ない。
会場では、スタジオ全の駒崎さんや、大久保昭男先生のマネージャーさんや、先輩後輩諸氏(久々の方から前回お目にかかって半月経たない方まで様々)や、ツイッターで知遇を得た方々とご挨拶。
だが今回の終演後はひとりで晩飯。その後ホテルに戻り、当記事を書き始めた次第。これが公開されたら就寝して、明日は男フェスにフル参戦の予定。
末筆ながら、出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
おはようございます。ブログ、拝見させていただきました。
女声定期演奏会のミサ曲では、チャントに触れていましたが、
男声のチャントはどのような印象を受けましたか?
聞いたところによると、今年度入団した1年生がチャントを務めたようです。
匿名の方、いらっしゃいませ。
お尋ねの件ですが、てっきり技術系の4年生か3年生がソロをとったものと思ってました。プログラムに『中勘助の詩から』を組み込むぐらいなので相応に歌えるメンバーがいるんだろうなという先入観があって。従って1年生がチャントを歌ったというのは驚きです。経験者さんなんでしょうかね。