長岡メンネルコールの演奏会を聴きに、朝日酒造エントランスホールまで出かけてきた。
わたくし新潟県では現時点で唯一の日本男声合唱協会会員(個人会員)でありながら、地元で活動する男声合唱団の単独演奏会へ足を運ぶのは初めて。演奏自体は毎年12月のリリックコーラスフェスティバルなどで何度か拝聴したことがある。出演メンバーは16名で、壮年の御方が多いような。稽古中のオペラ「てかがみ」でご一緒の方もいらっしゃる。
会場に並べられた椅子は百数十席ぐらいだが、体感で4分の3前後の入りという盛況ぶり。
- オープニング
- 作詞・作曲:ロバート・アレン
指揮:中村美智子
- Sing Along
ミッチ・ミラー合唱団愛唱歌。この団でもしばしば歌っているおかげか、音楽の馴染み方やサウンドのすっきり加減が格別。
- 第I部:愛唱歌
- 指揮:中村美智子/ピアノ:永井典子
- この街で
(作詞・作曲:新井満/編曲:荒武敬) - ともしび
(ロシア民謡/訳詞:楽団カチューシャ/編曲:渡邉匠/コーラス編曲:西脇久夫) - 春を待つ
(男声合唱組曲『雪明りの路』第1曲/作詩:伊藤整/作曲:多田武彦) - 地上の星
(作詞・作曲:中島みゆき/編曲:唐沢昌伸) - Total Praise
(作詞・作曲:R・スモールウッド)
コーラスになじみの薄い人にとっても親しみやすそうな曲を集めたオムニバスステージ。団長さんのMCを挟みながら進められた。
レパートリーの幅広さや旺盛な探求心に驚いた。「この街で」「地上の星」いずれも未出版編曲のはずで、譜面を入手して演奏するということは全国のネットワークにつながっていることの表れであろう。前者を編曲した荒武敬氏は福島県で活動する原町メンネルコールの指揮者。後者を編曲した唐沢昌伸氏は千葉県流山市を拠点に活動する合唱指揮者。
指揮者の中村先生は、オペラ「てかがみ」で共演している長岡少年少女合唱団の指揮者でもいらっしゃる。終演後、中村先生のほうからご挨拶いただき、恐縮。
- 第II部:〈賛助出演〉男声合唱団SOS
- 指揮:新倉幸四郎
- 希望の島
(作詞:小松玉巌/作曲:M.H.ジョーンズ) - 十二人の盗賊
(ロシア民謡/訳詞・編曲:磯部俶) - Were You There?
(スピリチュアル) - Ave Maria
(作曲:ヤコブ・アルカデルト/改作・編曲:P.L.ディーチェ) - Miserere
(作曲:グレゴリオ・アレグリ/編曲:A.T.ディヴィソン)
茨城県取手市からやってきた男声合唱団による外国曲ステージ。長岡メンネルコールの団員でこちらに参加する人がいたご縁での賛助出演。
指揮者の新倉さんはわたくしの先輩で、立教大学グリークラブOB男声合唱団でご一緒していた時期がある。「Miserere」もたぶんそのつながりによる選曲で、1980年代前半頃まで立教グリー男声で愛唱されていた。もともとはハーバード大学グリークラブのレパートリーで、門外不出の秘曲だったものをかのモーツァルトが一度聞いただけで完璧に譜面に起こした逸話で知られるモテットを抜粋したもの。立教大学グリークラブOB会公式サイト内「愛唱モテット集」で楽譜を見ることができる。
「SOS」は「The Seeds Of Sound(ゆたかに響く歌声の種)」の略とのこと。新倉さんがかかわる他の男声合唱団のメンバーが加わり、とても種とは思えない成熟した演奏を16名で繰り広げた。あとで「合わせ練習は3回きり」と聞いて吃驚。
「Were You There?」編曲者はプログラムに記載がないが、Harry T. Burleighの有名な編曲とは違うもの。テナーソロの先唱をコーラスが追いかける編曲だった。
ちなみに今回の演奏会は長岡メンネルコールでなく、男声合唱団SOSの助っ人メンバーのおひとりで、拙サイト内「日本の絶版・未出版男声合唱曲」前回更新で載せた「東鶴 讃歌」作詩者の大山雄一郎さんから聞いて知った。彼はテナーソロをいくつかの曲で担当し、終演後ご婦人がたから絶賛の声を浴びていた。「タダタケを歌う会」演奏会チケットについてたびたびご高配をいただいた方でもあるので、当日つくりたての米菓を差し入れに持参したが、辛党であろう大山さんの御口に合ったかどうか。
- 第III部:〈賛助出演〉男声合唱団SOS
- 指揮:新倉幸四郎
- 風が消してゆく
(作詞:永六輔/作曲:いずみたく) - アカシアの径
(作詩:鈴木薫/作曲:多田武彦) - 見上げてごらん夜の星を
(作詞:永六輔/作曲:いずみたく/編曲:秦実) - からたちの花
(作詩:北原白秋/作曲:山田耕筰) - 雨後
(男声合唱組曲『追憶の窓』第3曲/作詩:三好達治/作曲:多田武彦)
賛助出演団体による日本曲ステージ。「からたちの花」はプログラムに編曲者が書いてなかったが、林雄一郎氏編曲のだったような気がする。
- 第IV部:男声合唱組曲『二度とない人生だから』より
- 作詩:坂村真民/作曲:鈴木憲夫
指揮:中村美智子/ピアノ:永井典子
- 念ずれば花ひらく
- 花・ねがい
- からっぽ・サラリ
- 二度とない人生だから
長岡メンネルコール単独ステージ。
演奏に先立ち、指揮者の中村先生が曲紹介。ご自身にとってもお気に入りの曲たちとかおっしゃっていたような。
曲の持ち味と相まって滋味あふれる演奏だった。
- 第V部:合同演奏
- 武蔵野の雨
(男声合唱組曲『雨』第2曲/作詩:大木惇夫/作曲:多田武彦/指揮:中村美智子) - 秋のピエロ
(男声合唱組曲『月光とピエロ』第2曲/作詩:堀口大學/作曲:清水脩/指揮:新倉幸四郎) - いざ起て戦人よ
(作詩:藤井泰一郎/作曲:J.マグラナハン/指揮:中村美智子)
日本の男声合唱人ならほとんどの人が歌った経験のある曲によるステージ。練習は前日だけだったはずだが、サウンドのブレンド具合は堂に入ったもの。
アンコールは、ご存じ「遙かな友に」。磯部俶によるオリジナル版か林雄一郎氏改作版かは覚えてない。
パンフレット表紙には「男声合唱〜重厚で豊かな響き〜へようこそ」とのキャッチコピー。確かに男声合唱の魅力は聴衆に伝わったのではと思う。