だいしホールで「えちごコラリアーズ ホワイトデーコンサート 2017」を聴いてきた。
出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
正午近くまで長岡市内で用事があり、車を飛ばして現地に着いたら開場時刻の13時半を過ぎていた。近くのラーメン屋で昼食をという計画だったが、開演14時に間に合わなそうだったため、あきらめてコンビニおむすびで済ませる。
チケットは1月の新潟県ヴォーカルアンサンブルコンテストでメンバーから購入済。
会場に入ったら、チラシらしき図版にメンバーが肉筆で何やら書いたものが張り出されていた。わざわざポスターに手書きでと思いながらパンフレットを受け取ると、パンフレット表紙にも手書きメッセージが。つまり張り出されていたのはパンフレット表紙を拡大コピーしたもの。チラシやパンフレットにはアイドルグループに扮した古参メンバーの姿が描かれていて、手書きメッセージはそのメンバー(+描かれていない指揮者)によるもの。アイドルコンサートでありがちな物販グッズをまねた趣向なんだろうな。
- Opening:斎太郎節
- 宮城県民謡/編曲:竹花秀昭
指揮:木越智彦(以下すべて同じ)
男声合唱でおなじみのレパートリーを丁寧に演奏。
- 1st Stage:男声合唱組曲『心象スケッチ』
- 作詩:宮沢賢治/作曲:高田三郎/編曲:須賀敬一
- 水汲み
- 森
- さっきは陽が
- 風がおもてで呼んでいる
オープニング曲も含め、半年ほど前の「秋の交歓演奏会2016」の再演。感想はそのときに同じ。
説明を補うなら、高田三郎作品というと作曲者ご本人が自作を振るときなどみたいに語頭の子音をやたら強調するという様式が存在するが、今回はそういう要素が皆無なハーモニー重視の演奏。
第3曲と終曲はattaccaで演奏された。
- 2nd Stage:無伴奏男声合唱による『コルシカ島の2つの歌』
- 編曲:信長貴富
- Diu vi Salvi Regina
(コルシカ島の伝承歌・国歌) - O Barbara furtuna
(コルシカ島の伝承歌)
この曲集をちゃんと聴くのは女声版・混声版も含め、初めて。
全ステージの中で、この曲が最も完成度が高かったように思う。団との相性のよさも恐らく理由のひとつ。
そういえばこの演奏会、いつもシークレットで賛助出演のステージがひとつあったのだが、今回は初めて自前で全ステージ歌い切った。あと、昨年アナウンスされていた箕輪久夫先生による客演ステージは行われず、その変更についての告知もなし。
- Stage 3:ア・ラ・カルト
- 指揮:木越智彦
- Joshua Fit The Battle Of Jericho
(Traditional Spiritual/編曲:David Wright) - Pange lingua gloriosi
(作曲:Costanzo Porta) - 男声合唱組曲『富士山』より 作品第肆
(作詩:草野心平/作曲:多田武彦) - Betelehemu
(作曲:Via Olatunji/編曲:Wendell Whalum) - Memories of SMAP 〜 SMAPメドレー 〜
(編曲:霜野裕輝) - GAGOT
(作詩:GABRIEL T. Guillaume/作曲:Sydney Guillaume)
1曲目は2014年ホワイトデーコンサートの再演とのことだが、せきは初めて聴く。バーバーショップ系ヴォイスアンサンブル向け編曲。編曲スタイルにしてはトップが強め・リードが弱めだったかも。
2曲目は昨年の全日本合唱コンクール課題曲のひとつ。
3曲目は毎年とりあげているという多田作品。けっこうスタミナが要る曲なんだけど、難なく歌いとおしていたかな。
4曲目はヨルバ語によるナイジェリアのクリスマスソング。団員によるジャンベとカホンを加えての演奏。せきが在団していた当時から代表氏らがやりたがっていた曲。打楽器を伴うため(楽譜ではカット可ということになっているが)団の規模的に厳しいのではないかと申し上げていたが、演奏を実現させたとは。
5曲目は「夜空ノムコウ」「ダイナマイト」「SHAKE」「世界に一つだけの花」「がんばりましょう」「らいおんハート」から成る。曲目はアンケート用紙でのクイズという企画になっていて、演奏会の翌日だか翌々日だかにSNSで正解が明かされた。編曲は団員による書き下ろしで、譜面ができたのは今年に入ってからとのこと。趣向を凝らしたカッコよい編曲。ハイトーンが多用されているので、なにわコラリアーズみたいな団体に好適そうな印象。
しめくくりは、この団体が昨年の全日本合唱コンクール自由曲にとりあげたうちの1曲。コンクール新潟県大会が日本初演だった由。コンクールでの演奏音源がYouTubeで公開されている。これから国内でも広まっていけばよいな。
- Stage 4:日本のうた 〜福永陽一郎の世界〜
- 編曲:福永陽一郎
- そうらん節
(北海道民謡/作曲:清水脩) - 砂山
(作詩:北原白秋/作曲:中山晋平) - 大島節
(伊豆大島民謡) - 音戸の舟唄
(広島県民謡) - おてもやん
(熊本県民謡)
蓑や笠をかぶったり、首や腰に手拭いを掛けたり、腰に前掛けを下げたり、法被を着たりで団員が登場。
すべて「グリークラブアルバム」全3集に収録された編曲。福永編曲のみを集めたプログラムビルディングは50代以上の多い合唱団ではしばしばみられるが、えちごコラリアーズみたいに若者ばかりの合唱団では珍しく、サウンドも含めて新鮮である。
「そうらん節」は作曲者が混声合唱のために書いたものを福永氏が男声合唱向けに改作したバージョン。作曲者自身による男声合唱版と比べると、清水版はバスパートの低音を多用した和音の重厚さ、福永版はバスパートの中〜高音域を多用して声の力が強調された編曲となっている。
「おてもやん」では和太鼓が加わった。
ステージ冒頭に指揮者MCが入る段取りになっていたが飛ばされ、そこでしゃべる予定だった内容のダイジェストを木越さんがアンコール前に話す。
- アンコール:ふるさと
- 作曲:オナーティン/訳詞:オリオンコール
- ダブルアンコール:花は咲く
- 作詞:岩井俊二/作曲:菅野よう子/編曲:霜野裕輝
「ふるさと」も「グリークラブアルバム」に載っている曲。指揮者や代表氏の出身団体である信州大学グリークラブが合宿でお世話になっている施設が「ふるさと」という名前で、合宿の最後に歌うのが恒例だったという紹介。
「花は咲く」は、同じ編曲者による「Memories of SMAP」が凝りまくった大曲だったからということで「なるべくシンプルにしてほしい」という要望のもと編曲依頼されたとのこと。確かにユニゾンが多用されていて、音数も控えめ。
演奏会は3月11日。「斎太郎節」に始まり「花は咲く」で終わる選曲は東日本大震災を意識したものかなと思ったが、プログラムでもMCでも言及されず。当事者に確かめる機会もこれまでなし。
終演後、ロビーストームとして「斎太郎節」ふたたび。今回、団員への挨拶は会釈程度。
余計なおせっかいかもしれないけれど、著作権がらみで引っかかったことをあえて記しておく。
挟み込まれていた歌詞カードにはSMAPメドレー以外の全曲の歌詞が載っていたが、JASRACの許諾番号が書いてなかった。パブリックドメインなテキストの曲だけならともかく「作品第肆」も。1988年に亡くなった心平は2038年まで著作権が生きているので歌詞として印刷物に乗せるなら権利処理が必要。この演奏会のものみたいに、歌詞カードだけコピーの別刷りにして本番間際に制作しJASRACの許諾番号を入れないという演奏会パンフレットが主に大学合唱団界隈でみられるのだが、アウトなのですよ。合唱業界では著作権について出版譜のコピー利用ばかり槍玉にあがるのに歌詞カードの件があまり騒がれず、常々合点がいかないところ。
SMAPメドレーで用いられている楽曲については、別の問題があるかも。JASRACについては演奏の申請さえすればよいけれど、著作権を有するジャニーズ出版については管理楽曲を編曲する際プログラム等で「SMAP」の表記をしないという条件が設けられているんだそうで、つまり権利者の編曲許諾を得ていない可能性が疑われる。