投稿者: せき
「合唱アンサンブル.com」というウェブサイトをやっている者です。

【急告】メールサーバ移転作業 本日実施

【急告】メールサーバ移転作業 本日実施

突然ですが、本日、gassho-ens.com ドメインのメールサーバを移転工事いたします。
(当ブログやgassho-ens.comサイト本体の引っ越しは今週末ぐらいを予定)

移転作業そのものは短時間で終わるはずですが、一時的にメールの配送トラブルが生じることがあるかもしれません。その際はご容赦いただきたく。
上記の作業は2010/3/24早朝に完了しました。
(Google Apps内にメールサーバを変えました)

発表! Nコン2010課題曲

発表! Nコン2010課題曲

本日午前中にNHK教育テレビで放映された「発表! Nコン2010課題曲」を視聴しました。

かつては合唱団の参考演奏と、作詞者による詩の朗読と、作詞者・作曲者・指揮者によるメモや演奏上のポイントを流す番組だったのですが、昨年からは様々な情報を取り込んでバラエティ色を帯びた番組になってます。

作者コメントのボリュームが減ったのは、ポジティブに深読みすれば「そういうことは演奏者自身で答えを探そう」というメッセージがこもっているのかもしれません。

番組内で取り上げられた情報の中では、浄書譜作成のプロセスと、フリー参加・フリー部門(自由曲だけor課題曲だけ歌える、人数制限オーバーでも可)の紹介が印象に残りました。

課題曲については長くなるので別々のエントリにまとめました。

Nコン2010 – いのちのいっちょうめ

Nコン2010 – いのちのいっちょうめ

第77回NHK全校学校音楽コンクール小学校の部の課題曲について。

司会者兼リポーター・パックンマックンのパックンが練習を見学するところで、譜面を見て、8分の12拍子に驚いていました。

確かに8分の12拍子は馴染みが薄いし、少なくとも小学校の指導要領では扱わないことになっている拍子のような気がしますが、付点4分音符1拍の4拍子ととらえればどうってことはありません。

また、パックンがNHK東京児童合唱団に交じって最初に歌った時、小学生の団員からリズム感の悪さを指摘され、歌詞「LA」ばかりで歌わされていました。

8分の12拍子の1拍にあたる付点4分音符は8分音符3つずつに細分化されます。3連符系のリズムに乗ってインテンポを保つのはなかなか難しいもので、それなりにトレーニングが必要なことが見ていて伝わってきました。

作者コメント

作詞者:里乃塚玲央氏
  • 「小学生は命の王様」
  • 「小学生が楽しく歌える詩を心掛けた」
作曲者:横山裕美子氏
  • 「詩を先にいただいて作曲した」
  • 「作曲に当たっては、詩のわくわくどきどき感を生かした」

曲全体に関するせきの感想

いろんなレベルで味わえる、素晴らしい曲ですね。気軽にも歌えるし、その気になればいくらでも突き詰めた音楽づくりができる。

突き詰めた音楽づくりをしたい場合、移り変わる情景一コマ一コマを歌い分ける幅広い表現力が要求されそうに見受けられます。表現力が問われるポイントをひとつ端的に挙げるなら、曲の途中で符頭が×で表記されている箇所の扱い。

昨年の全国大会を見ている限りだと、多くの学校が取り上げた「風と人のオペラ」表題曲で特に、この幅広い表現力に難を感じた団ばかりだったような印象があるので(主として指揮者の問題かな?)、今回の課題曲はいい勉強になるのではと感じました。

Nコン2010 – I ♥ ×××(アイ・ラヴ)

Nコン2010 – I ♥ ×××(アイ・ラヴ)

第77回NHK全校学校音楽コンクール中学校の部の課題曲について。

数日前にNコン公式サイトで歌詞が発表されたとき、唖然とする人や「だから大塚愛はダメだと言ったのに」みたいな拒絶反応を示した人が結構いました。

せきはそういう声を黙って傍観しておりました。テクスト単品で読むなら文学的価値を認めがたいコトバでも曲が付くことで生命が吹き込まれる事例は世の中にごまんとあり、作品の良しあしを判断するのは完成品を聴いてからでも遅くなかろうと判断したからです。

まあ一応、傍観中は表に出さなかった、せきが歌詞だけ見た時点での感想も書き留めておくと。

大塚愛のヒット曲はぶっ飛んだ表現が印象的なものが目につくんですけど、実は愛(作詞・作曲では名字なしでこの名義)氏が書く歌詞って英単語の利用は控え目な傾向があるんですよね。

なので、やたら「I ♥ ×××」に横文字が多いのは意図的なものなんだろうなと認識しております。

フジテレビ系バンクーバー五輪中継イメージソング『LUCKY☆STAR』と語彙の重複が多いのも事実なわけですが、姉妹作として狙ったものか単なる二番煎じかは判断しかねます。

「XXX」は英語では卑猥な伏せ字としても使われるだの「lover」は愛人って意味もあるだのという理由から中学生が歌うにはふさわしくないという評も見かけましたが、昨年度の高校の部の課題曲「青のジャンプ」が飛び降り自殺を推奨するみたいな歌詞だとかいうのと同じで、つまらない言いがかりでしょう。「×××」は卑猥じゃない単語の伏せ字として使われることもあるし、「lover」は恋人という意味で使われることもあります(例:ミュージカル「New Moon」の代表曲かつジャズのスタンダードナンバーである「Lover Come Back to Me」)。

ひとつ疑問なのは、この歌詞のどこにテーマ「いのち」が登場するのやらということです。番組で流れた作詞・作曲者のVTRコメントに「いのち」という語句は出てこず、この疑問は解消されませんでした。

作者コメント

作詞・作曲者:愛(大塚愛)氏
  • 「“愛”は自分の名前に使われていることもあり、生まれてからずっと大切なテーマ」
  • 「愛はいちばん手に入れるのが難しいもの」
  • 「中学生の皆さんには、どれだけ自分が幸せに囲まれていて幸せをつかんでいるか、今ある好きなものを歌にして自分の幸せを再認識してほしい」
編曲者:上田真樹氏
  • 「(参考演奏の実演を聞いて)包み込むようなあったかい演奏だった」
  • 「この曲はメロディが魅力」
  • 「三十何回も歌われる『I LOVE YOU』を、合唱でしか出せないような表現で歌ってほしい」

曲全体に関するせきの感想

編曲者が「いただいた曲はメロディが魅力」とおっしゃっていた通りで、詞が曲と組み合わさると、何ら抵抗も違和感もない、一つの歌として成立してますね。どっちかというと、シングルのカップリング、もしくはアルバムだけに収録されるタイプって曲のような気もしますけど。

そして、上田氏のアレンジは、原曲の持ち味を生かしつつ、各パートに見せ場を与えたり掛け合いを用いたりなどの技を駆使することで合唱曲としても聴いて歌って楽しいものになっていると思います。

近年だとポップス畑の人による課題曲は作者自身がセルフカバーするのが通例になっていますが、セルフカバーが今回の合唱版を超える説得力を持つには、かなりアレンジのハードルが高いのではないでしょうか。

技術面では発音・発語、具体的にはポップスでありがちな細かいリズムでの歌詞にしばしば出てくる促音と英単語の処理が難しそうです。

大谷研二先生が指揮した演奏では冒頭でハスキーな声色を用いてました。おそらく指揮者の演出だろうと推測しますが(かつて大谷先生の指揮によりスペシャルステージでポップス編曲を歌ったときにそういう指示をしたことが根拠。はずれてたらごめんなさい)この曲には似つかわしくないように聴こえました。


2010/08/01付記:曲の終わりのコード進行について間違ったことを書いてしまったので、関係する一文を消しました。ついでにタグを追加し、「×××」と「lover」について加筆。

Nコン2010 – いのち

Nコン2010 – いのち

第77回NHK全校学校音楽コンクール高等学校の部の課題曲について。

手稿譜で練習しているシーンでは、団員さんたちが難しさに四苦八苦していました。

一同が揃って鍵盤ハーモニカを吹いて音を取る(あるいは、試しアンサンブルの代わり?)風景には驚きました。

浄書譜ができると、パックンマックンのマックンができたての譜面を合唱団に届け、おそらくその場で、作曲者と譜面編集者が立ち会っての練習が行われ、いくつかダイナミクスなどを直していました。

作詞者・作曲者が立ち会っての練習風景も流れ、そこで谷川氏が詩を朗読する場面や、団員の問いかけに谷川氏が答える場面がありました。鈴木氏に対しても質問があったものの編集でカットされたようです。

作者コメント

作詞者:谷川俊太郎氏
  • 「〔作曲者との打ち合わせで〕いのちの多様性を歌いたい。たとえば大きな象と小さな蟻の対比などで多様性を象徴した」
  • 「〔練習での試演を聞き〕ダイナミックでスケールが大きい、言葉が立ち上がって空へ飛び立ったみたい」
  • 「〔マックンからの質問に答え〕いのちとは波動、かたちあるもののもとにある目に見えない波動的なもの。波動が動物・植物・人間になると考えれば広く考えられるのでは」
  • 「〔合唱団員からの質問『《いのちをうたう》とは?』に〕あなたもいのちでしょ? いま歌ってたじゃん。そういうあなたのことだと思っていいんじゃないの?」
作曲者:鈴木輝昭氏
  • 「雄大な詩。生命の始まりから今現在わたしたちが生かされている連鎖、悠久の時の流れを、エネルギッシュに、光のほうへ進む輝きをイメージして作曲した」
  • 「作曲にあたっては詩の言葉やニュアンスを取り込んで音楽という形にしている。音そのもの(旋律、ハーモニー、ピアノ)が投げかけるものへ忠実にアプローチすれば、演奏者の個性は自然に表出される」

曲全体に関するせきの感想

音を聞いただけの印象ですが、近年の課題曲の中では技術的に一二を争う難しさでしょう。特に冒頭のヴォーカリーズと、ラストに出てくるハイトーンと、ピアノ。

大雑把に言って、作曲者が詩から読み取った「悠久の時の流れ」が主としてヴォーカリーズに、エナジーが主として歌詞のある部分で表現されているように思われます。

ただ若干ひっかかるのは、とても細かいポイントですが、トビがくるりと空を飛ぶのってあんなにせせこましくないのでは。

楽曲は良くも悪くも鈴木輝昭ふうです。

せきが連想したのは『ハレー彗星独白』の表題曲や、鈴木氏の師匠に当たる三善晃作品で『ゴリラのジジ』など。

また、曲の末尾に三善氏の『バトンタッチのうた』終盤、合唱だけになるLargamenteの箇所(全パート縦割りで歌う「♪ゆーうせーいはー」)以降をくっつけたくもなりました。

参考演奏から女声版・混声版・男声版の3種類を比べると、混声版が突出して演奏効果がよいと思います。

女声版と男声版はクラスター性が前面に出てしまい、なんかゴチャっとしてるような。