昨年2月9日。日帰りで上京し、第一生命ホールで「ルネサンス・ポリフォニー選集」出版記念コンサートを聴いてきた。
本編に先立ち、コンサート開催からこの記事の脱稿まで1年3か月近くあいてしまった言い訳を述べる。
理由は主にふたつ。
ひとつは、気力体力的な事情。
もうひとつは、客席でリアルタイムに聴いた印象の記憶と、そのあとブレーンから発売されたライブCDを聴いた印象が大きく異なり、違いについて私自身の中で折り合いがつけられていないままのため。録音か、当方の再生環境か、客席にいたときのコンディションか、その他の問題によるものか分析できぬまま日々が過ぎてしまった。
とはいえ印象や記憶を記録にとどめるべく、コンサート本番当日〜翌日に連投したツイートを転載したのち、そのあとのことなどを書き足してゆくことにする。
第一生命ホールに到着。名誉部長先生が体調不良とは心配なり。昨年の立教大学グリーフェスティバルではお元気そうだった(杖をついておられたけど)からなあ……。 pic.twitter.com/xeFGPf9NEG
— せき (@chor16seki) February 9, 2019
「 #ルネポリ記念 」こと昨日の「ルネサンス・ポリフォニー選集 宗教曲篇」出版記念コンサートの感想など連投ツイートする。拙ブログにまとめるのは当分先になりそうなので(まだ書いてないことが溜まってまして……)、備忘録として。演目は全日本合唱連盟の公式サイトを。 https://t.co/VCLCIq3fTR
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
演目はブレーンのCD紹介ページやパナムジカのCD売り場を参照ということにする。
#ルネポリ記念 司会進行は全日本合唱連盟副理事長・菅野正美氏。開演に先立ち、選集の編集委員長を務めた今井邦男氏によるご挨拶と、選集監修者のおひとり那須輝彦氏による小講義。那須氏のお話はテンポがよく明快。ほか、各ステージ冒頭に指揮者のスピーチがあった。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
最初に張り付けたツイートの写真にもあるとおり、那須氏による小講義はもともと皆川達夫先生がおこなう予定だった。
ブレーンのCDは演奏の録音のみで、小講義やスピーチは残念ながら収録されていない。ほか、ダイジェスト動画がYouTubeで公開されている。
#ルネポリ記念 首都大学東京グリークラブ。若干ナマ声が混じるもののストレートな発声で、各パートの音程が極めてよく揃っている。おかげで、ポリフォニーならではの線の重なり合いが明瞭だし、ハーモニーも清澄。私のすぐ後ろに座っておられた立教グリーOB会会長が「うまいね」と嘆息していた。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
あとでCDを聴くと、ハーモニーが前面に出ているような印象。個々のパートがフレーズの起伏で線を紡ぐという方向性はあんまり感じとれないかなあ。
なお、首都大学東京グリークラブは今年4月より「東京都立大学グリークラブ」に改称した。
#ルネポリ記念 東京ウィメンズ・コーラル・ソサエティ。岸信介氏は謙遜しておられたが、安定感たっぷりの演奏。ただ、ソプラノに独特な歌いまわしをするメンバーがいて、普段のレパートリーである邦人作品では発語に効果抜群なんだろうけど、ルネサンスものにはやや似つかわしくないかも。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
「独特な歌いまわしをするメンバー」の存在はCDを聞く限り不思議と目につかない。ほんの少しソプラノのピッチが高めに聞こえる箇所はあるけど、サウンドを色付けする方向に作用している。
#ルネポリ記念 松原混声合唱団。1曲目はパートをシャッフルした馬蹄形、2曲目は横2列だか3列だかのSATB隊形で演奏。いかにも日本の合唱団によるルネサンスものという雰囲気の演奏で聴きやすかった。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
あまりルネサンス音楽はとりあげないと演奏前のスピーチで話されていたが、なかなかどうしてしっかりした演奏である。音楽的基礎体力の賜物なのであろう。
#ルネポリ記念 青山学院大学聖歌隊。「Cibavit eos」は華やぎと愉悦に満ちた演奏なのに対し「Super flumina Babylonis」は悲痛さが前面に出た劇的な演奏と、テキスト及び楽曲に即して表情が変わるのが面白い。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
普段からルネサンス音楽に親しみ、音楽が体に染み込んでいるように見受けられる闊達な演奏。
#ルネポリ記念 中世音楽合唱団。なぜか今まで拝聴するチャンスがなく、このたび実演に接することができたのは嬉しい。3曲とも山中真佐子氏による指揮。気品と風格に溢れたステージは、皆川先生(急遽出演中止となって残念)による薫陶のたまもののように感じられる。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
フレーズを手繰り寄せるかのように歌い進めるのが、皆川スタイルの特徴のひとつだと思う。
CDに付属するブックレットでは皆川達夫・山中真佐子の両氏による指揮と記されているが、上記の通り間違い。ブレーン公式サイトのCD紹介ページでは山中氏のみが指揮したと書いてある。
#ルネポリ記念 グリーン・ウッド・ハーモニー。フレージングが練りこまれていて、それがポリフォニーの立体性を増強しているような。このたびの演奏会では、最も芸術作品っぽいステージだったように思う。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
今井邦男氏の指揮による演奏は、この団が全日本合唱コンクール全国大会で歌った実演(2012年の富山と、2017年の池袋)や、東海メールクワィヤーの演奏会録音で聴いたことがある。いずれからも、どこか哲学的とでもいうべき雰囲気が感じられた。その理由の一端が、この度の演奏から見えたような気がする。なんとなくでも、音楽を特徴づけるものがどのへんにあるかが見えると、以後その音楽の聴き方がつかめるようになるものである。
#ルネポリ記念 Combinir di Corista。感情の表出は控えめにし、そのぶんサウンドで譜面のすべてを描くといった趣の、精緻な演奏。特に終止和音が見事。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
Victoriaの曲を演奏した唯一の団。「感情の表出は控えめ」と書いたのは、音そのものにエモーショナルな要素をはらむVictoria作品だからという前提がある。
#ルネポリ記念 ステージ前のスピーチで清水敬一氏がおっしゃっていた通り、ひとくちにルネサンス・ポリフォニーといっても、作曲者や楽曲や演奏者により印象は多種多様なのが興味深く、2時間弱ずっと堪能させていただいた。
— せき (@chor16seki) February 10, 2019
客席やロビーでの出来事は「皆川達夫先生 逝去」という記事の後半で触れたので、よろしければそちらもどうぞ。
末筆ながら、出演者・スタッフ・来場者のみなさま、お疲れ様でした。