大型連休に演奏会を3公演ハシゴしてきた、第1弾。
埼玉県にある高校の男声合唱団が集ってのジョイントコンサートが通称「五連」として行われていたが、時代の流れなどで途絶えてしまった。それが浦和高等学校グリークラブの旗振りにより、昨年10年ぶりに「埼玉県高等学校男声合唱団合同演奏会」として開催された。今回はその第2回。
各校の単独ステージは部員によるMCのもと進行がなされた。
エール交換
川越高校→春日部高校→熊谷高校→慶應義塾志木高校→浦和高校の順番で各校が自校の校歌を演奏。どの団もきちんと歌い、ホールをしっかりと鳴らしている。
パンフレットに「演奏時間の都合上により一部分の演奏のみとなる場合もございます」と断り書きがあった。実際、どの団体も1番のみで終了。
さっき校歌と書いたが、慶應は「塾歌」ですね。同じワグネルだけあって、大学生が歌っているのと同じ編曲を、譜面通りハ長調で歌う。ちょっと他団体に比べると粗削りだったかしらん。
他に印象に残ったのは、熊谷高校の「燃ゆるーッ、」「集えるーッ、」みたいな語尾の切り方。
第1ステージ:川越高校音楽部
- 作曲:木下牧子/指揮:岡田直
- 無伴奏男声合唱組曲『いつからか野に立つて』より 彼
(作詩:高見順) - 無伴奏男声合唱組曲『いつからか野に立つて』より いつからか野に立つて
(作詩:高見順) - 夢みたものは…
(作詩:立原道造) - 無伴奏男声合唱のための『わたしはカメレオン』より わたしはカメレオン
(作詩:有馬敲) - 無伴奏男声合唱のための『わたしはカメレオン』より うみつばめ
(作詩:H.H.ドラックマン/訳詩:佐藤俊彦)
木下牧子無伴奏男声合唱曲集ですね。学生指揮者によるタクト。
リズムも和音も歯ごたえのある曲ばかりな上、木下作品は換声区をまたがって反復横飛びするかの如く主旋律の跳躍が激しくてテノール泣かせな曲が多いのだが、最初から最後までしっかりとした演奏であった。
トップテノールはエース級の人材1名だか2名だかに負うところが多かったかも。
しいて粗を探すなら、4曲目に演奏した曲は「カメレオン的に」という指示が出版譜の冒頭に記されているのだが、演奏がひたむきかつ真面目で、どのへんがカメレオン的なのか歌からは感じ取れなかったという程度。
第2ステージ:春日部高校音楽部
- 北酒場(作詞:なかにし礼/作曲:中村泰士/編曲:源田俊一郎)
- 無伴奏男声合唱のための『あの日たち』より またある夜に
(作詩:立原道造/作曲:北川昇) - 宇宙戦艦ヤマト(作詞:阿久悠/作曲:宮川泰/編曲:猪間道明)
全編無伴奏。パンフレットには指揮者の名前が書いてなかったが、生徒さん(会計を兼務する神田くんとかMCで紹介されていたような)。
確か2曲目では一同が曲の締めくくりに腕を広げ、3曲目は終止和音と共に握り拳を自分の胸板に当てる敬礼(宇宙戦艦ヤマトの劇中でみられた方式)をする演出が加わった。
「宇宙戦艦ヤマト」は、サニーサイドミュージック(既に会社そのものがない)から出版されていた『アニメヒーロー・ヒロイン伝説』収録曲と思われる。この譜面に載っている編曲はピアノ付きなのに無伴奏で歌ったばかりか、無声音でエンジン音を表現するイントロ部分と、ピアノソロによる間奏部分もカット。この改変にあたって編曲者に許可を取ったのだろうか?
第3ステージ:熊谷高校音楽部
- 指揮:櫻井寛/ピアノ:二宮万莉
- 男声合唱組曲『日曜日 —ひとりぼっちの祈り—』より おやすみ
(作詩:蓬莱泰三/作曲:南安雄) - スロバキアの歌
(作曲:E・スホニュ) - 今咲き誇る花たちよ
(作詞・作曲:小渕健太郎/編曲者クレジットなし) - 麦の唄
(作詞・作曲:中島みゆき/編曲者クレジットなし) - 最上川舟唄
(山形県民謡/作曲:清水脩)
インターミッションが挟まって第3ステージへ。後半3団体は顧問の教諭がタクトをとった。
歌もピアノもなかなかのもの。ただ、合唱は山台の1段目と2段目に並ぶ計2列のフォーメーションだったが、せきの座る場所からだとピアノに歌が埋もれて聴こえたのが残念。3段目やそれより上を使うほうがバランスがよかったのではと思う。
3曲目はコブクロが歌ったNHKソチ五輪・パラリンピック中継番組のテーマ曲、4曲目はNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」テーマ曲で、どちらもピアノ付き。コブクロのほうは部員による打楽器も加わった。
第4ステージ:慶應義塾志木高校ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
- 男声合唱組曲『海に寄せる歌』
- 作詩:三好達治/作曲:多田武彦
指揮:吉川誠二
- 砂上
- 仔羊
- 涙
- この浦に
- 鴎どり
- 既に鴎は
- ある橋上にて
サウンドはエール同様やや粗削り気味ながら、表現は丁寧な演奏だと思った。
5曲目は近年「かってー」が「かーつて」へと改訂された。この版での演奏は初めて聴く。今回は「つ」を無声音で処理していたような。
第5ステージ:浦和高校グリークラブ
- 男声合唱組曲『Enfance finie』
- 作詩:三好達治/作曲:木下牧子
指揮:小野瀬照夫/ピアノ:松井晴美
- Enfance finie
- 物語
- 毀れた窓
- 乳母車
今年3月の定期演奏会で取り上げた曲の再演とのこと。いっぺんステージに乗せた曲だけあってか、ずいぶん曲が体に馴染んでいるものと見受けられ、安心して聴けた。
このステージと第1ステージは同じ木下作品でも対照的である。片や初期のピアノ付き合唱曲、片や比較的新しい無伴奏合唱曲で、木下氏の作風の変化が感じ取れるような気がする。
第5ステージ終了後、客席を退出。
第6ステージ:合同演奏
- 男声合唱組曲『富士山』
- 作詩:草野心平/作曲:多田武彦
指揮:伴野創志(浦和高校学生指揮者)
- 作品第壹
- 作品第肆
- 作品第拾陸
- 作品第拾捌
- 作品第貳拾壹
16時50分頃までに錦糸町駅に着かなくてはいけないので、時計を気にしつつ、ロビーでモニター越しに拝聴。
全体にアップテンポ気味なあたりが若々しく聴こえた。プログラムには「5校総勢約200名の規模」と書いてあったが、モニターの映像を見る限りでは選抜メンバーで演奏されたのではと思った。
終曲のエンディングを聴き終えて早々に会場を飛び出した。15時半をちょっと過ぎていたかな。アンコールは「グリークラブアルバム」でおなじみの定番「いざ起て戦人よ」「Ride the Chariot」「斎太郎節」だったとのことだが、そういう事情で聴いていない。
出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。このジョイントコンサートが第3回、第4回、第5回(以下略)と、末永く続くといいですね。