今月のパナムジカ「新刊&新譜案内」で、ドヴォルザークによる独唱曲集を福永陽一郎氏が合唱編曲した男声合唱とピアノのための「ジプシーの歌」がキックオフから復刊されたという告知が載っていました。
そこに、ぶったまげる記述が!!
《出版社の廃業により長い間入手困難な状況になっておりました》
ここでは固有名詞が伏せられていますが、もともと男声合唱版「ジプシーの歌」を発刊していたのは、サニーサイドミュージックというところでした。「福永陽一郎コーラスコレクション」というシリーズの1冊(ほか、男声合唱版「さすらう若人の歌」と男声合唱版「Liebeslieder」の計3タイトル)でした。
昨年、男声合唱団トルヴェールが「アタックNo.1の歌」を取り上げました。猪間道明氏による編曲で、サニーサイドミュージック刊の男声合唱曲集「アニメヒーロー・ヒロイン伝説」に収録されているのですが、当時この楽譜を入手するのにとても難儀しましたっけ。
そのときは絶版になったのかなとも思っていたんですが、いま思えば廃業ということだったようですね。
余談ながら、「アニメヒーロー・ヒロイン伝説」は早稲田大学グリークラブが1994年の定期演奏会で「アニメの森にきてみろリン」というタイトルで初演しました。せきはこの演奏会の客席にいて、楽しいステージだったという記憶があります。
山古堂ブログさんの『号外!!2006年9月3日、「早稲田大学グリークラブ定期演奏会ライブ記録集」ついに完成!! (09/10)』で、このステージについて「著作権関連の許諾が得られなかったとのことで、最終的にライヴCDの販売が凍結された」とありますが、これを読んで譜面が出版されたこと(曲目は初演そのままのはず)に改めて驚いたものです。
閑話休題。
サニーサイドミュージックは、1997年1月の創業だそうです。
「Internet Archive Wayback Machine」に残っている記録によると、2007年2月6日時点では同社の公式サイトにアクセスできたようです。ということは、廃業はその前後と思われます。営業期間10年弱ですかね。
サニーサイドミュージックが特に力を入れていたのはトライトーンをはじめとするアカペラアンサンブルの楽譜出版だったように思います。
引越しでなくしてしまいましたが、せきは「アカペラ新聞」なる情報紙の準備号だか創刊号だかを読んだ覚えがあります。
ほか、せきが知る刊行物は、猪間氏・鈴木憲夫氏・倉知竜也氏・松永ちづる氏らによるポップスやアニメソングの編曲集とか、林光氏による合唱劇「ヴィヨン 笑う中世」とか、寺嶋陸也氏がフォスターの歌曲を女声合唱に編曲したものとか、カール・ホグゼット氏の発声教科書とか。
こうした出版物が埋もれてしまうことなく、「ジプシーの歌」みたいに、どこかの出版社が拾い上げて復刊してくださるといいですね。
付記(2014年7月)
男声合唱とピアノのための「さすらう若人の歌」は、2010年にカワイ出版から復刻出版されました。現在は受注生産扱いのようです。
「アニメヒーロー・ヒロイン伝説」収録曲のうち「銀河鉄道999」は、カワイ出版が刊行した男声合唱のための「アニソン・フラッシュ!」に、若干の改訂を加えた形で収録されました。また「宇宙戦艦ヤマト」は混声合唱に改作され、カワイ出版が刊行した混声合唱のための「アニソン・フラッシュ!」に収録されました。