かつて混ぜていただいたことのある、立教大学グリークラブOB男声合唱団の単独演奏会を聴きに、上京。
出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
会場は、渋谷区文化総合センター大和田6Fの伝承ホール。別フロア、さくらホールへ足を運んだ経験はあるけど、伝承ホールは初体験。壁沿いに畳敷きの桟敷席があるのは合唱の演奏会場としては珍しい。
客席では、久々にお目に掛かる大先輩や、しおんのお姉さま方とご挨拶。
- 第1ステージ:Missa O quam gloriosum est regnum
- 作曲:Tomás Luis de Victoria
編曲・指揮:渡辺亨(1995年卒)
- Kyrie
- Gloria
- Credo
- Sanctus
- Agnus Dei
演奏会パンフレットによると、元のミサ曲に出会ったのは現役時代で、グリーフェスティバルの混声合唱ステージで取り上げることを考えていたが、そのとき(せきが3年生の年度)は指揮者・皆川達夫先生の意向で「Missa Pange Lingua」を歌ったため実現せず。以来、ずっと温め続けてきた曲とのこと。
一方、辻荘一名誉部長が遺したお言葉に沿い、立教大学グリークラブOB男声合唱団は宗教曲を単独リサイタルで必ず取り上げてきたのだが、今に至るまで歌い継がれているルネサンスのミサ曲は皆川先生の編曲した「Missa O magnum mysterium」「Missa Mater Patris」「Missa Pange Lingua」の3作品で(皆川先生が現代男声合唱仕様に編曲したミサ曲は他にも複数あるが埋もれかけている)、この路線を突き進むなら新たにレパートリーを開拓する必要があろう。
そんなわけで、このステージのために「Missa O quam gloriosum est regnum」が現代男声合唱仕様に編曲された。つまり初演。
皆川先生の編曲はテノールにハイトーンを要求することが少ない代わりバリトンに広い音域を動き回らせる傾向があるが、亨先輩の編曲はどのパートも昨今の男声合唱曲としては標準的な音域。
演奏は、立教グリーの伝統の力を感じさせるものだったように思う。
ステージアンコールは、亨先輩が編曲し、前回のリサイタル(当ブログにはリポートを書かなかったので、代わりに当時のツイート群へリンク)のステージアンコールとして初演されたTomás Luis de Victoria作曲のモテット「O quam gloriosum est regnum」。演奏が始まってから、この原曲を歌った経験があることを思い出し、2022年に合唱団Lalariで練習していた当時OB男声による演奏と結びつけられなった己を恥じた。
- 第2ステージ:男声合唱組曲『アイヌのウポポ』
- 採譜:近藤鏡二郎/作曲:清水脩
指揮:前川和之(1988年卒)
- I. くじら祭り
- II. イヨマンテ(熊祭り)
- III. ピリカ ピリカ
- IV. 日食月食に祈る歌
- V. 恋歌
- VI. リムセ(輪舞)
昨年7月に行われた第43回立教大学グリーフェスティバルの再演。ただし昨年のステージは創部100周年記念で集まった50何名かによる特別編成だったが、このたびは半分くらいの人数。
第43回立教大学グリーフェスティバルのリポートでも触れたが、立教大学グリークラブ現役が同時代の作曲家に委嘱した数少ない男声合唱曲(1961年初演)。
演奏は、不揃いな箇所が散見されたのが気になった。半年ほど前いっぺんステージにのせた組曲だから練習不足ということではあるまい。個々人の自発性や民族音楽を題材にした音楽ならではの野性味を求めてのことなのかなと推測するところだけど、そういうアプローチは清水脩作品と相性があまりよろしくないのかもしれない。
ステージアンコールは、北村協一先生の指揮法レッスンで取り上げられた曲のひとつで、北村先生から「この曲を歌うときは音取りをきちんと丁寧に行うように」などのご指導を受けたという曲紹介のあと、清水脩編曲「最上川舟歌」。
- 第3ステージ:運命の歌 〜 Schicksalslied Op.54〜
- 作詩:Johann Christian Friedrich Hölderlin/作曲:Johannes Brahms/編曲:北村協一
指揮:小森輝彦/ピアノ:三澤志保
熱量と説得力たっぷり、息もつかせぬステージ。小森先生からは「揃えようとは考えず、ひとりひとりが表現せよ」というご指導を受けているそうで、実際おそらく録音を聞くと入りの子音などが乱れていたのだろうけど、第2ステージと違い全く気にならなかった。
ステージアンコールは、Gustav Mahler作曲「リュッケルトの詩による5つの歌曲」より「私はこの世に忘れられ(Ich bin der Welt abhanden gekommen)」の男声合唱編曲。終演後ロビーにアンコール曲の情報が張り出されたが、この曲の編曲者は記載がなかった。その代わり歌詞の和訳つき。長年ご指導を仰いできた皆川達夫先生と久邇之宜先生が亡くなられてから初めての単独演奏会ということで、追悼の意が込められているのかもしれない。
終演後、お誘いをいただきレセプションにお邪魔する。小森先生のスピーチを拝聴する機会にあずかることができて有難かった。最後まで居たかったけれど予約した新幹線の都合で泣く泣く中座。
改装された渋谷駅、構内は迷わずに行けたけれど、その前段階に至るまで、すなわち駅の入り口から改札へ行くまでが分かりづらく新幹線を乗り過ごすかとヒヤヒヤしながら全力疾走し辛うじてスケジュール通り帰宅できた。