せきが混ぜてもらっている合唱団Lalariは昨年、いわゆるクラス合唱曲と呼ばれる系統のピアノ付き合唱曲を2作品ほど演奏した。
昨日の谷川俊太郎作詩/木下牧子作曲「春に」に続き、本記事で取り上げるのはもう1曲にあたる福島県南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生(構成・小田美樹)作詞/小田美樹作曲/信長貴富編曲「群青」。
成り立ちなど
「群青」の成り立ちや背景などについては、楽譜の刊行者でもあるパナムジカ出版から出ている坂元勇仁著「明日も会えるのかな? 群青 3.11が結んだ絆の歌」に詳しい。なお、この本が発売されて程なく読書感想文を当ブログに書いたが、いわゆるネタバレは最小限に抑えたつもり。
様々なバリエーション
合唱団Lalariが演奏したのは混声3部版だが、混声4部版や同声2部版や男声4部版や女声3部版も存在する。それぞれについてオーケストラ伴奏版・吹奏楽伴奏版のスコアおよびパート譜が用意されているし、混声4部版と同声2部版については英語詞バージョンも出版されている。さらに、信長氏が編曲する前の原型にあたるバージョンを収録した「青の三部作 — 群青・青の絆・青の軌跡 オリジナル版楽譜集 —」も出版されている。これらを見比べると様々な発見があって面白い。
出版譜の前書きに載っている編曲者のライナーノーツで、最初に出版された混声3部版・混声4部版・同声2部版のみに記載され、あとから編曲・出版された男声4部版・女声3部版では別の文章に差し替えられた段落がある。曰く《もともと単旋律だけでも充分に成立する曲なので、例えばサビの部分(D・E、並びにH・I・J)だけハモり、その他の部分はユニゾンで歌うなどのように、歌い手の状況に合わせて臨機応変に対応していただいて構わない。曲の部分カットについても同様である。》。引用中、括弧内のアルファベットは練習番号のことで、原文では□で囲われている。ハーモナイズされた箇所をユニゾンで歌っても構わない点については男声4部版や女声3部版にも当てはまるものと理解しても大丈夫であろう。部分カット、すなわち短縮演奏については楽譜の1ページ目に脚注として記されている。
なお、合唱団Lalariが三条市音楽祭でこの曲を歌ったとき、練習番号C・Gのパートソロを独唱にした。本番前最後の練習日に急遽取り入れた試みだったが、想定外に説得力の高い演奏効果が得られたことを記しておく。
ビート感覚
さて、この曲の攻略ポイントは、拍頭(オンビート)から16分音符だけ先行して突っ込むシンコペーションにあるといえよう。これがきちんと処理できないと加齢臭が漂ってしまう。
前記事「春に」攻略メモで書いた16分音符単位のパルスを身体に染み込ませるのも無駄ではないけれど、「群青」についてはそれだけでは恐らく足りなくて、ポップス的に16ビートのノリを表現できるだけのリズム感が要求されるように私は思う。ドラムスもしくはリズムマシーンによる16ビートのリズムパターンと一緒に練習してみるというのも一案かもしれない。
16ビート的な合唱曲でも、例えば信長氏のオリジナル作品である「一詩人の最後の歌」(『新しい歌』終曲)ではピアノが16ビートっぽい音型で共演するからまだしも、「群青」でそういう助けがあるのは転調後のサビぐらいなのが厄介。ちなみに原型にあたるバージョンでは転調前後を問わずサビの一部でピアノが16分音符によるアルペジオを部分的に弾く。