久邇之宜先生 逝去

独唱・合唱との共演が多かったピアニスト、久邇之宜先生が本年2月15日に亡くなられました。マスメディアでは報じられていないようですが、晩年のお勤め先だった東邦音楽大学の公式サイトに訃報が載っています。


クローズドな場では亡くなられた当日のうちに久邇先生の訃報が速報として流れ、翌日には葬儀などについての情報が出回っていました。翌々日の朝、早稲田大学グリークラブOB会によりご逝去が公になりました。東邦音楽大学による記事が公開されたのは同日夕刻です。

なお、法政大学アカデミー合唱団OB会の公式サイトによると、昨年11月に発行されたOB会の会報で久邇先生が病気療養中でいらっしゃることが伝えられていたそうです。


私が久邇先生のピアノで歌った曲目を列挙します。このリストのみ敬称略で、いわゆるハシゴ高は「高」表記で代替。

  • F. P. Tosti作曲/北村協一編曲『トスティ歌曲集』
  • 高野喜久雄作詩/高田三郎作曲「男声合唱組曲『水のいのち』」
    • 1992/11/28
    • 「第83回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」第4ステージ
    • 北村協一指揮
  • A. Copland作曲/Ray Wilding-White編曲「At the River」
    • 1992/11/28
    • 「第83回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」アンコール
    • 駒沢孝敏指揮
  • 星野富弘作詩/新実徳英作曲「男声合唱とピアノのための『花に寄せて』」
    • 1993/12/5
    • 「第84回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」第4ステージ
    • 北村協一指揮
  • Leconte de Lisle作詩/G. Fauré作曲/北村協一編曲「Lydia」
    • 1993/12/5
    • 「第84回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」アンコール
    • 北村協一指揮
  • P. I. Tchaikovsky作曲/福永陽一郎編曲『チャイコフスキー歌曲集』 ※ドイツ語版
    • 1994/11/20
    • 「第85回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」第3ステージ
    • 渡辺亨(学生)指揮
  • 宮沢賢治作詩/鈴木憲夫作曲「男声合唱曲『永訣の朝』」
    • 1994/11/20
    • 「第85回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」第4ステージ
    • 北村協一指揮
  • Victor-Marie Hugo作詩/R. Hahn作曲/北村協一編曲「Si mes vers avaient des ailes」
    • 1994/11/20
    • 「第84回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」アンコール
    • 北村協一指揮
  • 黒人霊歌集
    • 1995/5/3・4
    • 「第42回 東京六大学合唱連盟定期演奏会」立教大学グリークラブ単独ステージ
    • 北村協一指揮
  • 黒人霊歌集 ※六連の再演
    • 1995/12/12
    • 「第86回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」第2ステージ
    • 北村協一指揮
  • 伊藤海彦作詩/荻久保和明作曲「男声合唱曲『季節へのまなざし』」
    • 1995/12/12
    • 「第86回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」第4ステージ
    • 北村協一指揮
  • A. C. Adam作曲/Alan Simmons編曲「O holy night」
    • 1995/12/12
      「第86回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」アンコール
    • 北村協一指揮
  • 堀口大學訳詩/南弘明作曲「フランスの詩による男声合唱曲集『月下の一群 第1集』」
  • A. Heyduk作詩/A. L. Dvořák作曲/福永陽一郎編曲「Als die alte Mutter」
    • 2001/2/18
    • 「第1回 立教大学グリークラブOB男声合唱団リサイタル」アンコール
    • 高坂徹指揮
  • G. F. Händel作曲/福永陽一郎編曲「Ombra mai fu」
    • 2001/11/5
    • 「第92回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会」アンコール(現役OB合同)
    • 高坂徹指揮
  • 谷川俊太郎作詩/新実徳英作曲「男声合唱とピアノのための『ことばあそびうたII』」
    • 2002/4/27
    • 「第2回 東京六大学OB合唱連盟演奏会」立教大学グリークラブOB男声合唱団単独ステージ
    • 高坂徹指揮
  • S. Foster作曲/福永陽一郎編曲『From The Sunny South』
    • 2003/11/1
    • 「第2回 立教大学グリークラブOB男声合唱団リサイタル」第2ステージ
    • 高坂徹指揮
  • 三善晃編曲『唱歌の四季』 ※男声合唱版初演
    • 2004/5/9
    • 「第3回 東京六大学OB合唱連盟演奏会」立教大学グリークラブOB男声合唱団単独ステージ
    • 高坂徹指揮
  • D. Donnelly作詞/S. Romberg作曲/北村協一編曲「Golden Days」
    • 2003/11/1
    • 「北村協一追悼演奏会 Love。」Love。メモリアル合唱団 男声ステージ
    • 佐藤正浩指揮
  • F. P. Schubert作曲「Psalm 23 (Gott ist mein Hirt)」
    • 2007/2/24
    • 「北村協一追悼演奏会 Love。」Love。メモリアル合唱団 混声ステージ
    • 畑中良輔指揮

補足。

第92回 立教大学グリークラブ男声定期演奏会ではアンコール全曲が現役OB合同により演奏されました。ステージ本編が現役のみで演奏された指揮者についてもです。現役・OB男声どちらの公式サイトにも現時点で書いてないので、以下に記載しておきます。

  • 堀口大學作詩/多田武彦作曲「或る誕生」(男声合唱組曲『雪国にて』第2曲)
    • 北村協一指揮
  • G. F. Händel作曲/福永陽一郎編曲「Ombra mai fu」
    • 高坂徹指揮/久邇之宜ピアノ
  • 「Michael」
    • 丸尾友作(学生)指揮
  • 「神共にいまして」
    • 皆川達夫指揮

学生指揮者アンコール「Michael」は、「Michael, Row the Boat Ashore」で始まる、いわゆる黒人霊歌です。アカペラで歌ったような気がしますけど記憶が定かではありません。


本題に戻ります。

北村先生や畑中先生が指揮する練習での久邇先生は口数が少なく、職人よろしくピアニストに徹しておられました。

高坂さんステージの練習では時折、大学での学生指揮者練習ではしばしば、コーチ的な立場でご指導をいただきました。ヴォイシング(作編曲における和音の配置)に着目したアドバイスが私の印象に残っています。

あるとき、とある先輩がとある演奏会に対する評として「久邇先生がオクターブなどでミスタッチするのは演奏が熱を帯びている証拠だ」とおっしゃっていました。

一方、先生ご本人は『月下の一群 第1集』の「人の云ふことを信じるな」前奏・後奏(特に、某有名曲のパロディで乙女の祈りを茶化すくだり)でかなりの創意を加えた演奏をしておられ、こちらは作曲者公認とのことでした。


私がOBになってから先生と言葉を交わさせていただいたことが何度かあります。六連などの楽屋にお邪魔申し上げたことも何度かありましたし、法政大学アカデミー合唱団の演奏旅行の公演がわが地元にある長岡市立劇場で開催されたとき菓子折持参でご挨拶に伺ったこともあります。2007年3月14日でした。そのとき「米菓よりもお酒のほうが嬉しい」とおっしゃったのは久邇先生だったかスタジオ全の駒崎さん(カメラマン、故人)だったか。

そういえば、とある演奏会のパンフレットで久邇先生のプロフィール写真が裏表(左右)反対に印刷されていたと、その写真を撮影した駒崎さんから指摘されたこともありましたっけ。


久邇先生のお話を最後に伺うことができたのは、2015年2月7日に行われた「立教大学グリークラブOB男声合唱団 第4回リサイタル」のレセプションだったはずです。東邦音楽大学のお仕事が忙しいとおっしゃっていたような記憶があります。


久邇先生による生演奏を最後に拝聴したのは、2019年8月18日に小金井 宮地楽器ホール 大ホールで行われた立教大学グリークラブOB男声合唱団の第6回リサイタルでした。赤い杖をついての入退場が難儀そうでした。

ドイツ語歌唱指導を務めた小森輝彦氏がアンコールの一環としてRichard Strauss作曲「Allerseelen」を久邇先生のピアノとの共演で独唱したのは今にして思うと貴重なパフォーマンスだったように思います。


享年から逆算すると私が立教グリーに入団したとき久邇先生は40台前半でいらしたはずです。今の私は当時の先生よりも齢を重ねていることに気づき、己の至らなさに愕然としました。


末筆ながら、久邇先生からいただいた数々のご指導とたくさんの素晴らしい音楽体験に感謝申し上げます。

どうぞ安らかに。

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