カテゴリー: 鑑賞の感想

「Nコン2009全国コンクール」TV観覧記: 高等学校の部

「Nコン2009全国コンクール」TV観覧記: 高等学校の部

結局3日連続で、Nコン2009こと第76回NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部の全国大会TV中継を見ました。ここまでガッツリ視聴したの生まれて初めて。

課題曲

どこも冒頭のスローテンポな部分がモタり気味に聞こえたような。ここ、後半の爆発に向けてエネルギーを溜め込むところだと理解してるんで、走り出しそうになるのをこらえるみたいに食い気味で歌うのがいいと思うんですよね。

あと、トップクラスの高校生でも2拍3連のリズムは鬼門なのか、限りなく「付点4分音符+付点4分音符+8分音符」に近づいてしまいブレーキをかけている学校があったような。

自由曲

ハイレベルすぎて論評できることがありませんです。

選曲もコンクール向けレパートリーが中心であまり耳にする機会のない曲ばかりだったのですが、音を聞いたことのある曲が2曲ありました。CDを持っている「祈りの虹」第1曲と、せきが立教大学グリークラブ4年のとき女声が定期演奏会最終ステージで取り上げた「動物詩集」終曲。後者は直接歌ったわけではないし、混声版・女声版の違いもありますが、にもかかわらず懐かしくなりました。

特別ステージ:クラス合唱選手権

本編自由曲がシリアスなものばかりなので、一般視聴者にとっては肩こりをほぐすのに役立ったのではないでしょうか。

ここでようやく男声合唱が出てきたのは嬉しかった。一世風靡セピアみたいなユニゾンばかりだったのが惜しかったですが。

THE BOOMの「風になりたい」をカバーした組で自然に手拍子が鳴り出したのは、音楽(楽曲・歌い手とも)の力なんでしょうね。

最後の組の高校、司会者の山田アナウンサーがOBだったというサプライズ。それで山田アナが起用されたのかな。

ちなみにもう一人の司会者・藤井アナウンサーはNコンPR番組「ハモリ倶楽部」にも出ていて、そこで小学生・中学生時代に合唱部員だったことを明かしています。

2階席ゲスト。

大谷氏は今回自由曲で取り上げられる作曲家陣の作品をよく取り上げる合唱指揮者。さすが、的を射た解説でよいですね。

パックンマックンのパックン、ちらほら「ハーバード大学グリークラブ出身」と言ってましたが、ここ男声合唱団として名門なんですよ。ハーバードグリーはいろんな人に合唱曲を委嘱していて、有名どころだとプーランク「酒の歌」とか。武満徹「芝生」もハーバードグリーの委嘱作ですが、技術的にハードルが高すぎてギブアップし法政大学アリオンコールが初演することになったという代物だったりします。そして、その手の難物になじみの薄い男声合唱団だったのであろうということは、パックンのコメントの端々から何となく感じられました。

「Nコン2009全国コンクール」TV観覧記: 中学校の部

「Nコン2009全国コンクール」TV観覧記: 中学校の部

忌明け前で家を無人にできない状況下、昨日・本日と家人が外出していたので、せきが留守居せざるを得ず。

で、昨日に引き続き、Nコン2009こと第76回NHK全国学校音楽コンクール中学校の部の全国大会TV中継を見ておりました。

課題曲

いきものがかりヴォーカル・吉岡聖恵さんの歌い口の呪縛がどこかしら合唱団に残ってたのかもという印象を受けました。

吉岡さんは一文節一文節を大切に歌う人。ただ、オーソドックスな合唱とピアノで真似ようとするとフレーズが細切れになりやすい。

また、吉岡さんには語尾を念押しする傾向があります。あれはあの歌声とPAとバンド系サウンドだから成り立つ歌唱法。オーソドックスな合唱とピアノでの演奏なら息の長いフレージングとのバランスを考える必要が生じるように思います。

自由曲

なぜか鈴木輝昭作品を取り上げた学校の大半に共通して「歌詞が棒歌い」という特徴を感じました。

最初は書法のせいかと思ってましたが、「都の春」を歌った三重大学教育学部附属中学校は単語の頭を捕まえ直しているのが伝わったので、やはり演奏者の問題なんでしょうね。

もし木下牧子氏みたいにディクションに厳しく注目する人が審査員にいたら、かなり順位が違っていたのでは。

合同合唱「茜色の約束」

スペシャル合唱団による書き下ろし編曲、いつもは軽く公開リハーサルした上で演奏するんですが、今回は手紙朗読だのいきものがかり生演奏だの他の企画がてんこ盛りだったせいでしょうか、いきなり本番でしたね。合同でのリハーサルは開幕前にでもやったのかな?

放送席ゲスト

秋川雅史さん、宗教曲だからということでプーランクの演奏前に「原点回帰」と言ってしまったこと、実演を耳にして後悔したんじゃないですか? プーランクは確かにグレゴリオ聖歌の影響を自作に生かしてますが、あくまでも近現代の作曲家です。

大沢あかねさん、バラエティでは賑やかに騒ぐ場面の多い人なんですが、今回それなりに番組のカラーに沿ったコメントを発していて、ちょっと見直しました。昨年の森下千里さんみたいな合唱部経験者だったらもっと深いことが言えるんでしょうけど。

「Nコン2009全国コンクール」TV観覧記: 小学校の部

「Nコン2009全国コンクール」TV観覧記: 小学校の部

Nコン2009こと第76回NHK全国学校音楽コンクール小学校の部の全国大会TV中継を、拙サイト「日本の絶版・未出版男声合唱曲」更新作業の合間に見ておりました。

全編通して、小学生はみなさん一生懸命に歌い、練習の成果を発揮していたと思います。

課題曲。

2曲どちらも部活動・コンクールでなくたって気軽に歌える取っつきやすさですけど、こうして様々な演奏を聴いてみると、技術的な完成度を高める上での落とし穴がちらほらあるのですね。

「ここからいちばんとおいところ」については、フレーズ歌い始めの裏拍でうまく乗りきれず、テンポがもたり気味の団体が目立ちました。エンディングの課題曲全員合唱でも、ここで微妙に遅れて足を引っ張ってる人が結構いたような。

「夢の太陽」は、スキップする(と講評で作曲者が表現していた)リズムと、言葉を立てるディクションとの両立がポイントだと思いました。

自由曲。

起伏の激しいものが好まれるようです。単純に聴き映えするってこともあるのでしょうし、小学校の部の課題曲は例年ずっと同じ色合いで終始する傾向にあるためその対比でということもあるのでしょう。

ただ、譜面上のメリハリにばかり頼ってるのか、指揮者の演出が歌い手に表現を求める方向(これもこれで大切である)ばかりで、間合いの取り方やテンポの揺らし方など指揮者にしかやれない細工があまりなされていないような印象を受けました。特に11団体中4団体が取り上げた「風と木のオペラ」なんて、コテコテにテンポをいじる遊びがしやすそうな曲なのに。

「星つむぎの歌」、今日の午前中に平原綾香さんの歌う原曲を聴いてみました。しみじみと味わい深い曲ですね。

この味わいが合同合唱でも損なわれなかったのは何よりでした。ただひとつ惜しむらくは、全パート歌詞を歌う大サビのオブリガードが主旋律を食ってしまった部分がなきにしもあらず。

いきものがかり 15歳へのエール

いきものがかり 15歳へのエール

去る10月3日(土)夕方にNHK総合テレビで放映された「いきものがかり 15歳へのエール」を視聴。

NHK学校音楽コンクール中学校の部の課題曲「YELL」の関連番組です。

最初に断っておきます。今年の放映済Nコン関連番組で撮影されたシーンが何割かを占めてます。よくいえば無駄が少ない。反面、ケチだの横着だのなどと悪く受け取った人もいるかもしれません。

オープニングは、いきものがかりの3人が、夏の日に誰もいない神奈川県立音楽堂を訪問するシーン。ヴォーカルの吉岡聖恵さんは神奈川県出身、中学校時代は合唱部員で、当時も今も県大会会場である神奈川県立音楽堂は思い出の場所なんだそうです。この番組のために新たに撮りおろされた、ほぼ唯一のシーンだったような。

続いて、いきものがかりの3人が出雲市立第一中学校を訪問したときの模様。

吉岡さんによる叫び練習は今年5月に放映された「いきものがかりの合唱部にエール!」でも流れたものですが、課題曲作詩作曲者でもあるリーダーの水野良樹さんが「将来何をしたいか」と第一中学校合唱部員に尋ねる場面は初オンエアだったような。

栃木県の大田原市立川西中学校の臨時合唱部員が「YELL」に取り組む模様のVTR。このくだり、いきものがかりは登場してません。「Nコンマガジン ハモリ倶楽部」9月号で流れた映像を再編集したものですね。

いきものがかりが「YELL」を作曲する場面と、セルフカバーシングルをレコーディングする場面の映像。水野さんはギターをかき鳴らして口ずさみながら、A4判の紙にワープロで打ち出した歌詞にコードネームを付ける形で作曲していたっぽいです。あと、セルフカバーシングルをレコーディングする場面では、A4判の歌詞シートに編曲者・松任谷正隆さん(ご存じユーミンの伴侶)のお名前が書き足されていたような。

このへんだったように思うんですが(うろ覚え・自信なし)、課題曲を作詩するにあたって水野さんが「中学生はごまかしのきかない年代だから、本気になって向かい合って書かなきゃ」みたいな抱負を語っていました。

そして、今年のNコン神奈川県大会でのいきものがかり。本編終了後のサプライズゲストということで、出番前は3人そろって出場校の演奏を見ていました。最初は控室でモニターを通してでしたが、「もっと近いところで生の演奏を見たい」というリクエストから照明ブースに移動。

吉岡さんは混声版の演奏に「男声が入ってくるところはサウンドが重厚になって讃美歌みたい」という感想を漏らしていました。もし吉岡さんが「ハモリ倶楽部」9月号で流れた仙台市立西山中学校男声合唱団による演奏を聴いたらどう感じたか、ちょっと気になるところです。

サプライズゲストとして舞台に登場したあとのくだりは一部「Nコンマガジン ハモリ倶楽部」9月号でも流れました。

Nコン神奈川県大会には、水野さんが学生時代ずっとお世話になっていたピアノの先生が来ていたそうで(先生ご本人の姿は映らず、水野さんのコメントのみ)、その先生は「YELL」が歌われるのを聞いて「まるで中学生のころの水野君を見ているようだ」と言って大泣きしたとのことです。それについて、水野さんご本人は「15歳の時の自分にも繋がる歌詞をちゃんと書けたんだな」と感想を述べていました。

エンドロール。この番組を含む今年のNコン関連番組で中学校を取材した模様の断片が次々流れていました。

昨日4日にNHK教育テレビで再放送がありましたが、そのときは新潟ユース合唱団の練習の真っ最中だったので見てません。

あと、10月9日の深夜(10月10日未明)にNHK総合テレビで再々放送があるそうです。


※ご参考:NHKの番組表の解説ページ(ウェブ魚拓

ハモリ倶楽部 9月号

ハモリ倶楽部 9月号

「Nコンマガジン ハモリ倶楽部」の、9月19日に放映された回について。
今回はゲストの芸人は登場せず。
その代わりなのかどうか、顧問の辻秀幸氏がオープニング途中で登場し「今回で最終回」と宣言。副部長の藤井まどかアナウンサーひとりが最終回であることを事前に知っていたという体裁で、ゴリ部長らとのやりとり。
辻氏は番組終了までずっと出演。辻顧問のブログで最終回収録の報告をしたエントリに 皆様から「殆ど出てないジャン」とか と書いてあったのはそういうネタフリだったのですね……。
合唱部訪問VTRは2本。いずれもリポーター芸能人はなし。
1本目VTRの訪問先は大田原市立川西中学校。
統廃合により今年度限りで川西中がなくなるため、川西中としてのNコン出場も今回が最後。
一同、金賞獲得に向け気合が入る。特に女子部員は、ライバル・大田原市立黒羽中学校(来年度からの統合先)の演奏を聴いて以来、触発されて練習に熱がこもるようになった。
そしてNコン栃木県大会本番。川西中・黒羽中とも選外だったが、悔いを残さず一生懸命頑張ったということで自らを納得させる川西中メンバー。
VTRの2本目は「ハモリ倶楽部 6月号」でも訪問した仙台市立西山中学校男声合唱団の追跡レポート。
部員勧誘企画として学内で歌ったことが功を奏したらしく、メンバーが倍増していた。
こちらもNコン金賞めざして奮闘。宮城県大会では、緊張をほぐすため移動中の乗合バス車内でも練習したり、舞台袖でお互いの肩をマッサージしあうも部長が強く肩を揉まれすぎたり。結果は奨励賞。
いつもNコンで同校は、特別に許可を得て課題曲を実音でオクターブ下げて男声3部で歌っている。今年の「YELL」もそれで歌ったが、本来の編成である女声でよりも演奏効果が発揮されていたように思いました。
VTR最後で「来年度から女子部員を入れませんか?」と尋ねられ、拒絶する部長。スタジオでは6月号のときと同様、ハモリ隊を名乗る女性出演者を中心に「混声のほうがいいのに」という流れになり、「男声合唱もいいよ」というフォローが皆無だったのが男声合唱愛好者として残念。
続いて、Nコン特別企画「クラス合唱選手権」予選報告。
合唱指揮者の大谷研二氏・加藤洋朗氏・辻氏がノートパソコンの画面を見ながら動画を審査するシーンがあり、辻顧問だけカメラ目線で一瞬ポーズを取っていたような。
Nコン全国大会出場校の発表。辻顧問からのアドバイスつき。
「ロングトーンバトル」。
今回はグランドチャンピオン大会と銘打ち、これまでの最長記録を出した先月出場の男子部員と、彼に挑戦する形で8名の新規参加者が出場。その中には、ゴリ部長と、今回の前半で取り上げられた大田原市立川西中学校男子生徒がいた。
グランドチャンピオンに輝いたのは前回のチャンピオン。
ゴリ部長は史上最短の1秒で終了し、辻顧問から叱られていた。本人の言い訳は「モニターに映る自分の歌い顔を見て噴き出してしまった」。
エンディングは出演者一同、涙、涙(という体裁で)。
全体の感想。
部活動の青春群像をバラエティ番組的ノリでまとめたもので、NコンのPR番組としては贅沢、4回で終了というのがもったいないと思いました。来年度こういう番組は作られるのでしょうか?