第78回NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)新潟県大会、前日の高等学校の部に引き続き、中学校の部を聞いてきました。午前の小学校の部は失礼させていただきました。
隣の新潟県民会館でAKB48のチームB公演があったため駐車場は満杯、車の駐め場所探しに難儀しました。
以下、各団体のデータと極私的寸評を書きます。例によって、ご気分を害された方がいらしたらごめんなさい。
1. 上越市立直江津東中学校……奨励賞
- 自由曲
「ありがとう」 - 〔女声合唱のための『ありがとう』より/谷川俊太郎作詩、石若雅弥作曲/無伴奏〕
- 指揮:金子央〔教師〕
- ピアノ:内山美央子
この団だけオンステ人数を数え忘れました、すみません。十何名かだったような……。
特に課題曲はタンギング唱法のおかげか、ソルフェージュがとてもきっちりしていた。この練習法が威力を発揮したのは、ポピュラー音楽はインテンポで演奏することが基本だからであろう。
指揮者のこっち氏とは終演後しばらく喋った。「今回の課題曲はいろいろ勉強になった」とおっしゃってたっけ。
2. 長岡市立西中学校……奨励賞
- 自由曲
「虹の輪の花」 - 〔宗左近作詩、大田桜子作曲/無伴奏女声〕
- 指揮:明田川結佳〔教師〕
- ピアノ:家後千秋
女声22名。
息はよく流れている。ただ語頭の鳴りがいまひとつなのがもったいない。
松下耕氏の無伴奏作品と相性がよさそうな団。
この団だけ、自由曲出だしの音を取ってすぐピアニストが舞台から退場していた。
3. 上越教育大学附属中学校……銅賞
- 自由曲
「祝い唄三つ、」 - 〔混声合唱と一台四手ピアノのための『南島歌遊び』より/日本民謡、横山潤子作曲〕
- 指揮:遠藤好子〔教師〕
- ピアノ:宮越大地〔3年/課題曲・自由曲とも〕、楚山沙希〔3年/自由曲〕
課題曲は女声25名+男声10名。自由曲は女声18名+男声12名で、男子1名が大太鼓を叩いていた。
自由曲はもともと同声2部と1台2手ピアノのための曲で、この団体の委嘱でトランスクリプトしたバージョンらしい。委嘱団体ならではの思い入れもあってか一生懸命な演奏。もうちょっと日本民謡っぽい歌唱スタイルのほうが個人的には好ましく感じるけど。
4. 十日町市立水沢中学校……奨励賞
- 自由曲
「響きあう命」 - 〔西部敏彦作詩、瑞木薫作曲/ピアノ付き混声3部〕
- 指揮:矢野伸治〔教師〕
- ピアノ:石川潤
女声24名+男声11名。
吹奏楽部員と選択音楽の授業を受講する3年生で構成される特設合唱部。中越大会では銀賞だったが、審査員のお一人が「部活として定常的に活動する合唱団じゃないのに、これほどまで歌えるのは素晴らしい」と熱烈推薦したおかげで県大会に出場が果たせたと風の噂で耳にした。
課題曲前半で主役と脇役の分担がはっきりしているのが素晴らしい。
瑞木氏の合唱曲を聴くのは初めて。ピアノと合唱との関係性が独特で面白い。瑞木氏にとって合唱畑、特に学校音楽の仕事は居心地が悪いものらしく、ブログなどで「もう合唱からは足を洗う」と何度もおっしゃっているが、そういう発言を氏にさせてしまったのは合唱界にとって損失かもしれない。
5. 新潟市立内野中学校……奨励賞
- 自由曲
「III. きもち」 - 〔混声合唱とピアノのための『ひみつ』より/谷川俊太郎作詩、鈴木輝昭作曲〕
- 指揮:星野朝子〔教師〕
- ピアノ:岡田朝子
女声17名+男声10名。
声と息の混ぜ方を加減することで音色を変えているのが面白い。自由曲は難儀そうな曲だがよく頑張った。
男声が立派だし、自由曲のSopranoの高音も見事。欲を申すなら、特に課題曲でAltoがもっと鳴ってほしかったかな。
6. 新潟市立宮浦中学校……銅賞
- 自由曲
「霧明け」 - 〔女声合唱のための無伴奏小品集『愛のとき』より/木島始作詩、高嶋みどり作曲〕
- 指揮:鷹雄昌子〔教師〕
- ピアノ:斎藤愛子
女声35名。
高校生と遜色のない音色。
課題曲でAltoが薄過ぎるように感じたが、自由曲になったらAltoが鳴りだした。意識的にバランスを変えてるのであろう。
7. 新潟市立東石山中学校……奨励賞
- 自由曲
「さくら」 - 〔御木白日作詩、大熊崇子作曲/ピアノ付き女声〕
- 指揮:佐久間みつ子〔教師〕
- ピアノ:黒川佳穂〔3年/課題曲〕、遠藤夏実〔3年/自由曲〕
女声33名。
こちらは、いかにもな童声合唱ふうにサウンドを作っている。ただ今年の課題曲とは馴染みにくいトーンだったような。声区転換の技術を身に着ければ、もう一段ステップアップしそう。
演奏開始早々に咳き込みが聴こえた。また、演奏中にもかかわらずしゃべっているおじさまがいた。
8. 新潟市立小針中学校……銀賞
- 自由曲
「都の春」 - 〔女声合唱とピアノのための組曲『獅子の子幻想』より/蓬莱泰三作詩、鈴木輝昭作曲〕
- 指揮:関根京子〔教師〕
- ピアノ:八子真由美
女声35名。
声がよく出ているし、パートパートの役割分担もきっちりしている。昨日の長岡高校を思い出した。
9. 長岡市立青葉台中学校……銅賞
- 自由曲
「さくら」 - 〔御木白日作詩、大熊崇子作曲/ピアノ付き女声〕
- 指揮:若林由美子〔教師〕
- ピアノ:近藤紫織〔3年〕
女声24名。
フレーズの収めかたが丁寧。
自由曲で「花」の語頭の子音Hをちゃんと発音しているのも効果的。ただ、同じ語頭のHでも「春」「響いて」ではよく聞こえなかったような。子音を立たせる方法は、瞬間的なボリューム以外に、時間をかけて発音するアプローチもあるのだ。
10. 新潟市立東新潟中学校……銀賞
- 自由曲
「その2 伝説 嗚咽」 - 〔無伴奏女声合唱のための『南島歌遊び』より/福島雄次郎作曲〕
- 指揮:梅山洋子〔教師〕
- ピアノ:川内菜央
女声33名(ただし、そのうちAltoに男子生徒1名)。
課題曲のSopranoオブリガードをsoliにしたのがこの団体だったかな。あの編曲はそう処理するのが正解だと思う。
自由曲で音色を使い分けていたのも素晴らしかった。
11. 長岡市立栖吉中学校……奨励賞
- 自由曲
「ヒカリ」 - 〔瀬戸沙織作詩、松下耕作曲/ピアノ付き混声3部〕
- 指揮:中村佳美〔教師〕
- ピアノ:今井慶子
女声17名+男声10名。
課題曲の歌い回しはここが一番こなれていて、flumpoolのノリに近かったのではと思う。自由曲ものびのび歌わせつつ、アンサンブルとしてのまとまりもある。それだけに声がいまひとつ飛ばないのは残念。
私事ながら、せきは仕事で昨年度下半期この学校に週1〜2回お邪魔していたという御縁がある。顧問・副顧問の両先生に本番終了後お目に掛かって御挨拶できたのは幸い。
12. 糸魚川市立糸魚川中学校……奨励賞
- 自由曲
「虹」 - 〔森山直太朗・御徒町凧作詩作曲、信長貴富編曲/ピアノ付き女声〕
- 指揮:小川敦子〔教師〕
- ピアノ:山崎希美〔3年/課題曲〕、加藤怜奈〔3年/自由曲〕
女声29名。
課題曲は転調後の煽りが見事。
自由曲は語頭があまり聞きとれなかった。やっておられたなら申し訳ないのだが、森山氏によるセルフカバーバージョンを聞いて表現法のイメージトレーニングなどしてはどうか。
13. 上越市立城西中学校……奨励賞
- 自由曲
「狩人アレン」 - 〔中村仁策訳詞、Henry Purcell作曲、青島広志編曲/無伴奏女声〕
- 指揮:中村奈見子〔教師〕
- ピアノ:岩船杏子
女声28名。
課題曲は、第1パート(Soprano)がひこってたのと、第2パート(Mezzo Soprano)が薄めに聴こえたのが残念。
自由曲は打って変わってしっかりした演奏。特にsoliが見事だった。
14. 新潟市立赤塚中学校……奨励賞
- 自由曲
「2. 人間」 - 〔女声合唱組曲『未来への決意』より/片岡輝作詩、鈴木憲夫作曲/ピアノ付き〕
- 指揮:石橋まどか〔教師〕
- ピアノ:真島佳代
女声29名。
声がよく出ている。「けなされ」の子音Kを最もしっかり出していたのがここだったかな。反面「言う」の処理がいまひとつとも思った。
15. 新潟大学教育学部附属新潟中学校……金賞
- 自由曲
「IV. うそ」 - 〔混声合唱とピアノのための『ひみつ』より/谷川俊太郎作詩、鈴木輝昭作曲〕
- 指揮:相馬直子〔教師〕
- ピアノ:大塚紗歩子〔2年〕
女声25名+男声10名。
とても丁寧な演奏。
自由曲は結構チャレンジングな選曲だと思うのだが健闘していた。もう少し男声がたくさんいたら、より安定感が増すであろう。
それにしてもこの自由曲のピアノって、作曲者が三善晃門下ということがありありと分かる響きですな。
16. 妙高市立新井中学校……奨励賞
- 自由曲
「人生が1時間だとしたら」 - 〔高階杞一作詩、横山潤子作曲/無伴奏女声〕
- 指揮:金子聡美〔教師〕
- ピアノ:鈴木希美
女声21名。
ダイナミックレンジの幅はここが最大だったと思う。
ものすごい熱演ぶりを見て、終演後こっち氏に「直江津東中さんと新井中さんで指揮者と歌い手を交換すれば面白い演奏になりそう」と軽口を叩いた。
演奏が終わったのは16時半過ぎ。表彰式の最後まで見届けたかったが、17時35分スタート予定とのことで断念し、18時から黒埼で行われるえちごコラリアーズ練習に出かけた。そのあとのことは「2011/08/17の日記(夜の部)」をご覧くださいませ。
この大会の模様は、8月27日(金)10時からEテレ、8月30日(火)16時からNHK-FMで、どちらも新潟県ローカルで放送される予定だそうです。