6月22日に行われた「第55回新潟県合唱祭 in 加茂」に、男声合唱団「どんぐり」という団が出演していた。そこでオリジナル曲を演奏したことが目に留まり、35周年記念コンサートを開くという告知もあったので、加茂市民会館まで聴きに出かけた。
加茂市民会館に着いたのは開演の15分ほど前。最初、合唱祭が行われた大ホールに足を踏み入れそうになったものの、今回の会場は向かいの小ホールであった。当日券を買うとき「用意していたチケットが完売したので半券がありませんけど、いいですか?」と尋ねられる。
客席としてパイプ椅子が200席だか300席ほど並んでいた。もちろん満席。
- 第1部〜男声合唱団「どんぐり」のステージ
- 指揮:外山哲也/ピアノ:森田雅代
- 前を見つめて
(作詞・作曲:鈴木洋/補作・作曲:石川昇/伴奏編曲:兼松千里) - 男声合唱組曲『柳河風俗詩』より 柳河
(作詩:北原白秋/作曲:多田武彦/独唱:高橋直人) - 男声合唱組曲『柳河風俗詩』より 梅雨の晴れ間
(作詩:北原白秋/作曲:多田武彦) - 証城寺の狸囃子
(作詞:野口雨情/作曲:中山晋平/編曲:岩河三郎) - TSUNAMI
(作詞・作曲:桑田佳祐/伴奏楽譜:Shion Music/男声合唱編曲:外山哲也) - 『三つの汽車の歌』
(編曲:岩河三郎) - 合唱組曲『のぎく讃歌』より わたしの時間
(作詞・作曲:鈴木洋/編曲:外山哲也) - 合唱組曲『のぎく讃歌』より はじめてのうた
(作詞:上林洋子/作曲:外山哲也) - 合唱組曲『のぎく讃歌』より 小道の花も雑草も
(作詞:古俣キヨ/補作詞:林正実/作曲:鈴木洋/編曲:外山哲也)
ホスト合唱団の単独ステージ。団員さんの軽妙なMCに沿って進められた。
この団体はもともと視覚障碍者の集まりだったが、結成から10年ぐらい経って晴眼者もメンバーに加わり、今回は出演メンバー14名のうち視覚障碍者5名という編成。にもかかわらず、無伴奏曲でも縦の線がきちんと揃っているのは見事なものである(もちろん指揮者は普通にタクトを振っている)。視覚障碍者メンバーは晴眼者の片腕につかまりながら入退場した。そういう団だからということもあり、来場者の中にも白い杖をついた人や盲導犬を連れている人が何名かいらした。
「前を見つめて」は団オリジナルのテーマソング。
岩河三郎氏編曲作品のうち「証城寺の狸囃子」は同声・女声合唱のための「童謡絵巻 第1巻」、メドレー『三つの汽車の歌』は同声・女声合唱のための「童謡絵巻 第2巻」に収録されている3部合唱曲。どちらも訪問演奏などでお客様と一緒に楽しむレパートリーらしい。「証城寺の狸囃子」では、狸の顔のお面をつけた鉢巻きを装着しての賑やかな演奏だった。
他のステージでもそうだが、十数名規模の男声合唱に適したハードルの低いレパートリーを探すのに苦心しているようで、アレンジものでは女声・同声合唱曲を男声に転用した選曲が大半を占めた。
合唱組曲『のぎく讃歌』は同団公式サイトの曲紹介コーナーに詳しい。もっとも、公式サイトでは14曲が列挙されているが、このたびのMCでは15曲と紹介されていた。
- 第2ステージ〜男声合唱団コール・ブリューテのステージ
- 指揮:押見榮喜/ピアノ:小林ちひろ
- 少年時代
(作詞:井上陽水/作曲:井上陽水・平井夏美/編曲:悠木昭宏) - 波浮の港
(作詞:野口雨情/作曲:中山晋平/編曲:岩河智子/補作:E.O) - 知床旅情
(作詞・作曲:森繁久彌/編曲:寺島尚彦/独唱:小倉喜男七) - 宇宙戦艦ヤマト
(作詞:阿久悠/作曲:宮川泰/編曲:猪間道明) - 愛の讃歌
(作詞:Edith Piaf/訳詞:岩谷時子/作曲:Marguerite Monnot/編曲:今村康)
賛助出演合唱団の単独ステージ。加茂市で活動する「草笛コーラス」と三条市で活動する「花コーラス」の男声メンバーを中心に昨年9月に結成された団体で、それぞれの団名から1文字ずつ取った「草花」のドイツ語が団体名とのこと。ホスト合唱団とほぼ同規模ながらも、人数を感じさせない重厚なサウンドであった。
団の皆さんがNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」にハマっているようで、Palpitation(ときめき)という単語がパンフレットやMCにやたら登場した。
1曲目の編曲者・悠木昭宏氏は「おかあさんといっしょ」「母と子のテレビ絵本」などに曲を書き下ろしている作曲家。指揮者・押見氏から中学時代にピアノや歌を教わったつながりとのこと。
「波浮の港」補作でクレジットされている「E.O」については説明がなかったはず。もしかすると指揮者Oshimi Eiki氏かな?
「宇宙戦艦ヤマト」は版元消滅で譜面が入手困難となっている編曲(詳しくは当ブログの記事「サニーサイドミュージック社 廃業」をどうぞ)。団員や指揮者にそういう譜面を集めている方がいらっしゃるのであろうか。
- みんなで歌おう
- 夏の思い出
(作詩:江間章子/作曲:中田喜直) - 花は咲く
(作詞:岩井俊二/作曲:菅野よう子)
休憩明けは、スタンダードナンバーを皆で一緒に歌うという趣向。いちおう一同ユニゾンという前提ではあるが、出演者の方々は折々でハモりやオブリガードを歌っていた。
- 第3部〜合同合唱
- 指揮:押見榮喜(前半4曲)・外山哲也(後半3曲)/ピアノ:小林ちひろ
- 学生時代
(作詞・作曲:平岡精二/編曲:江口泰央) - いい日旅立ち
(作詞・作曲:谷村新司/編曲:荻久保和明) - 男声合唱組曲『月光とピエロ』より 月夜
(作詩:堀口大學/作曲:清水脩) - 男声合唱組曲『月光とピエロ』より 月光とピエロとピエレットの唐草模様
(作詩:堀口大學/作曲:清水脩) - 男声合唱とピアノのための『つぶてソング 第1集』より フルサト
(作詩:和合亮一/作編曲:新実徳英) - 男声合唱とピアノのための『つぶてソング 第2集』より 街を返せ
(作詩:和合亮一/作編曲:新実徳英) - 男声合唱とピアノのための『つぶてソング 第2集』より 重なり合う手と手
(作詩:和合亮一/作編曲:新実徳英)
押見氏が振ったのは、懐かしい編曲もの2曲と、日本男声合唱界の記念碑というべき組曲から2曲。
外山氏が振ったのは、新潟県合唱祭 in 加茂でも演奏した「つぶてソング」。東日本大震災後のフクシマをわがこととしてとらえたいという選曲意図と、プログラムに説明あり。MCによる詩の朗読つき。
最後、アンコールがわりに、ふたたび一同で「花は咲く」。ステージのみならず客席からも対旋律・副旋律が聴こえた。
出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
なかなか心温まる演奏会で、楽しめた。1時間半だか2時間だかが瞬く間に過ぎた。あわせて、こういう活動をやっている人達がいることを知らなかった我が不勉強さを恥じるところでもあった。