「しおん秋のコンサート Vol.13」に続き、かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールに移動し「創部100周年記念 第114回立教大学グリークラブ混声定期演奏会」を聴いてきた。
出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
現役の定期演奏会を聴きに出かけたのは、以来。
会場に着いたら開場までだいぶ時間があったので「しおん秋のコンサート Vol.13」の感想をTwitter改めXにポスト。以下に記すことも、Xへのポストに加筆したものです。
入場。フロントのスタッフさんに終演予定時刻を尋ねたところ、20:40〜20:50頃との返答。予約していた新幹線の都合で終演まで聴けないことが判明した。
エール
- 立教大学校歌「栄光の立教」
- 編曲:辻荘一
指揮:高橋美紀子(女声学生指揮者) - Rikkyo College Song「St. Paul’s will shine tonight」
- 編曲:鶴岡陽一
指揮:原田和弥(男声学生指揮者)
いずれも混声での演奏。各編曲については当ブログの「Rikkyo Songs 合唱版のこと」という記事にまとめてあるので、そちらをどうぞ。
校歌は遅めのテンポ、概ね安心して聴けた。
「St. Paul’s will shine tonight」は男声の刻みで走る傾向と、女声がところどころ「Saint」で下からしゃくって入る傾向がみられた。
第1ステージ
- 「ルネサンス・ポリフォニー選集 宗教曲編【同声版】」から
- 指揮:田中豊輝
男声のみによるステージ。辻荘一名誉部長が「これを歌わないと立教グリーは立教グリーでなくなる」と言い残したルネサンス宗教曲、ただし男声は久しく取り上げてこなかったモテット。
演奏会パンフレットの企画ページに「100周年ランキング!」というコーナーがあり、最も演奏回数の多かった男声合唱曲として『Missa Mater Patris』『Missa O Magnum Mysterium』『Missa Pange Lingua』がトップ3としてランクインしていたのだが、種を明かせば男声定期演奏会の皆川達夫先生ステージでこの3作品を順繰りに演奏した時期が十数年ほど続いていたという事情がある。更に黒岩英臣先生が皆川先生を継ぐ形で現役男声を指揮したときはルネサンスもの以外の宗教曲を取り上げることも多かった。あとはグリーフェスティバルの混声ステージくらい。そんな状況が恐らくニ、三十年ほど続いている。
実際の演奏は、今は全般的に粗削りだけど、ハモりは上々で、何年もかけて磨き上げてゆけばきっと伝統を取り戻せると感じられた出来栄え。
第2ステージ
- 女声合唱とピアノのための組曲『夢の意味』
- 作詩:林望/作曲:上田真樹
指揮:高橋美紀子/ピアノ:山北響斗
組曲全曲の演奏。夢うつつの描写として紗がかかったかのような色合いが求められる楽曲と私は認識しているが(歌い手がどれほど狙って表現しようとしたかは判断しかねるにせよ)そこらへん的確に音になっていたように感じられた。
上田作品ならではの頻発するハイトーンは、わが現役当時の立教女声では歯が立たなかったであろうけど、今の現役は立派に歌いこなす。
何名ものソロは皆さん見事。ソロでの発声や表現を合唱でできるようになると更によし。小さくまとめて合わせにゆこうとし過ぎなように見受けられた。
とXにポストしたところ、現役女声のお一人から反応をいただいた。翌週に行われたOB会総会およびレセプションでこの人と挨拶し、いろいろ話すことができた。
第3ステージ
- 男声合唱のための『中島みゆき名曲セレクション 〜誕生〜』
- 作詞・作曲:中島みゆき/編曲:下薗大樹
指揮:原田和弥
「時代」「宙船」「横恋慕」「ヘッドライト・テールライト」「誕生」の全5曲。編曲者はCancaoNova(カンサォン・ノーヴァ)という合唱集団の指揮者でもある御方ですね。立教男声としては珍しいポップスのステージ。
原曲のエネルギー、それを十二分に活かす編曲、歌い手の熱量、ホールの響きなどが相まって、説得力の高い演奏。ブラボーが飛んだのもむべなるかな。
ただ第1ステージでも同様だったが、近年の傾向として、フレージングにまで手が回っていないように見受けられた。特に低声系。
また気になったのは、たとえば中島みゆき本人が「ヘー・エッD ライT テー・エL ラ・ア・アイT」みたいに歌っている箇所を「ヘッ・ド ライト テー・ル ライト」みたいに発音していた点。もしかするとあえて原曲を聞かずに練習を重ねたのかもしれないが、歌詞の入れ方くらいはオリジナルに寄せたほうがよかったのでは。
余談。学生指揮者の原田くんと翌週に行われたOB会総会およびレセプションで挨拶する機会を得た。そのときに彼がCombinir di Corista(コンビーニ・ディ・コリスタ)のメンバーとして全日本合唱コンクール大学ユース職場一般の部の全国大会に出演すると知り「そこで自分はスタッフしてますよ」と言ったら驚かれた。全国大会で私は審査員誘導を主に担当したが、Conbinir di Coristaが出た混声合唱の部の後半はピアノ出し入れ(2台ピアノを使う団体があった)の助っ人として舞台袖にいたので、再び彼と挨拶できた。Conbinir di Coristaには立教グリーの団員が何名か参加しているそうで、その応援に首都圏から新潟まで駆けつけた現役生もいた由。
第4ステージ
- 女声合唱とピアノのための交響詩『有明の海』から
- 作詩:川崎洋/作曲:野田暉行
指揮:湊晋吾/ピアノ:田村祥子
パンフレットによると《「有明の海」は2002年開催の第93回女声定期演奏会で演奏された曲であり、その2002年は今年の現役生が生まれた年である。創部100周年を記念する定期演奏会において、立教大学グリークラブの歴史を語るのに相応しい曲であると考え、選曲した》とのこと。
全4曲のうち演奏されたのは「いのちの海」「干潟」「かなしみの海」で、第3曲「鳥」はカット。
人数が学生指揮者ステージから大幅に減ったかわりに(練習スケジュールとの折り合いがうまくつかず『有明の海』はオンステしなかった部員が多かったと後で伺った。今どきの大学生はそういう価値観なんだなあ。時の流れよ)一人一人が歌で表現しようとする度合いが高く、いきいきした演奏。
新幹線の都合で第5ステージ『おらしょ』とアンコールは諦め、後ろ髪を引かれつつ会場を去る。最寄りの青砥駅で、中座した先輩諸氏を何名か見かけた。