せきが参加している合唱団Lalariでは、2022年11月3日に行われた「第18回 三条市音楽祭」合唱の部と、2022年12月11日に行われた「第19回 リリックホール コーラスフェスティバル」と、2023年6月18日に行われた「第64回 新潟県合唱祭」の3回、岡倉ケンジ作詩/周藤諭作曲の混声合唱曲集『空のキャンバス』を全3曲まるごと演奏した。そのときの経験で感じたことを振り返り・まとめとして記す。
基礎知識
曲集『空のキャンバス』についての基礎情報は、作曲者のnoteにまとめられている。ただnoteではパナムジカ(小売店のほう)の商品販売ページにしかリンクされていないので、この記事ではパナムジカ出版の紹介ページのほうにリンクしておく。
せきの手元にある楽譜は混声4部合唱版(合唱団Lalariで歌ったバージョン)、混声3部合唱版、女声合唱版、男声合唱版の4種類。
演奏可能な人数
混声4部合唱版と男声合唱版は四重唱(1パート1名)、混声3部合唱版と女声合唱版は三重唱(1パート1名)で演奏可能。ただし省略可として記譜されている音符をカットしたり、人数や音域に制約のある団向けと思われるossiaを採用した場合。
合唱団Lalariは各パート1〜2名で歌ったし、重唱でも演奏は成立する。でも譜面に細かいパッセージがないあたりから推測するに、恐らく合唱版は規模がLalariの倍以上の団体を想定して書かれているのだろう。
なお、複数バージョンの同時演奏は想定されていないように思われる。男声合唱版は「花」「傘」のキーが異なるし、混声3部合唱版は「空のキャンバス」の女声とピアノにこのバージョンしかないOssia(恐らく、音域に制約のあるSoprano向け)があるので。
拍節
3曲に共通する特徴として、弱拍や裏拍で始まるフレーズが多いことが挙げられる。ただし髙田三郎作品みたいに弱起で統一されているわけではなく、時々強拍で始まるフレーズも混ざる。
弱拍や裏拍で始まるフレーズを歌う場合、テンポに乗り遅れ、演奏が鈍重に陥る事態が起こりやすい。なので歌い手側にはインテンポの感覚や、音楽を前へ前へと推進していくフレージングが要求されるように思われる。
「傘」転調後、練習番号Eのくだりでピアノがビート感を強調している。Lalariの練習で、この箇所をピアノパートだけ弾いていただきピアノがやっていることを把握したうえで歌うということを試みたら、合唱の音がかなり変わった。
「花」固有の留意事項
作曲者・周藤さんとX上で下記のようなやりとりをした。
周藤さんの「花」。合唱のみで演奏OKと譜面に書いてある。でも中間部のピアノソロが後続の曲想・テンポ変化を促しているため、あれをカットすると「ください」と「こんな」のつなぎに工夫が要る。指揮者がいれば工夫しやすいが、指揮者なしの無伴奏4重唱では難儀だと、歌ってみて感じた。
— せき (@chor16seki) January 20, 2023
テノールの腕の見せ所ではあります(汗) https://t.co/CyFvUPvZkM
— 周藤 諭(すとう さとし) (@satoshi19830527) January 20, 2023
指揮者なし無伴奏カルテットで歌う場合「こんな」以降のテノールパートソロは歌唱力だけでなくアンサンブルリーダーとしての能力が求められますよね。
あと、その前の「ください」をどう収めるかが鍵となりそうに思いました。— せき (@chor16seki) January 21, 2023
ア・カペラで歌う場合は前奏にあたるピアノソロの有無についても同様。
「空のキャンバス」固有の留意事項
指揮者なしで歌う場合、68〜75小節目あたりは歌い手一同が拍を正確に刻まないと揃わないので練習に苦戦した。
87〜88小節のパートソロ「なにを」、混声4部合唱版はAltoが潜りやすいため、他パートがパートバランスの取り方やクレッシェンドの加減を工夫するほうがよさそう。譜面を見る限り恐らく男声合唱版も同様。