小千谷市民オペラ2022「カルメン」覚書(その3:2022年の1月から5月第1週まで)

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小千谷市民オペラ2022「カルメン」についての覚書、「その1」および「その2」の続きです。合唱団だけの練習を書いた記事としては後編にあたります。

前回の「その2」では、2021年の歌い納めとなった12月26日の「アフタークリスマスコンサート」まで書きました。


2022年に入ってから、品田広希先生による通常練習に加え、様々な先生による練習も始まりました。


1月15・16日の通常練習のあと、1月22・23日に村上惇先生がいらっしゃり、ポイントを絞り込んだフランス語の発音指導をいただきました。ブルボン朝時代のフランス音楽がご専門のテノール歌手です。公演のポスター等では告知がなかったのですが、本番当日に配布されたパンフレットにはスタッフ一覧に「フランス語ディクション」としてお名前がクレジットされています。

村上先生が代表を務めるオフィスフレンチバロックのTwitterアカウントでなされた以下のツイートは、小千谷市民オペラ2022「カルメン」にかかわった件とも関係があるのではと私は思っております。


村上先生レッスンのあと合唱団だけの練習はなく、その次は2月11・12日、演出家・飯塚励生先生による初めての立ち稽古でした。このときが、児童合唱と一緒に練習した初めての機会となりました。

ニューヨーク育ちのご本人は「Call me “LEO”」とおっしゃるので、当ブログでも以降「レオ先生」と呼ぶことにします。

レオ先生は感染症対策について様々な専門医から情報を得ているとのことで、不織布マスクの上に布マスクを重ねて着用しておられたり(不織布マスクの密着性を高めるため)、二酸化炭素濃度計を持参したりなどしておられました。演出でもしばしば「Distance!」と連呼してました。飛沫による影響を少しでも減らすためと、多いとは言い難い合唱団の人数を舞台を広く使うことでカバーするためという、2種類の目的によるものとのことでした。

レオ先生のご指導の中で「自分以外のパートや前奏・間奏・後奏なども歌えるようにしておくこと。そらで歌える状態になっていれば尺が体で分かり、指定のタイミングまでにするべきことが逆算できる」について、ここに記しておきます。これはオペラの演技ばかりでなく、たとえばポリフォニーのアンサンブルなどでも役立つように思われます。

私はレオ先生からいじられることが多く、早々にお名前を覚えていただきました。本番当日まで、レオ先生が合唱団に知らせたいことがあるときは私にコンタクトを取ることが多かったです。

この日レオ先生に存在を認識していただいた合唱団員がもう一人いて、第1幕の中盤でカルメンから顔を斬り付けられ怒り狂う女工の役を演じることになりました。以来、レオ先生はこの団員さんを役名「マニュエリータ」と呼んでおられました。


翌2月13日は、指揮者・河原忠之先生による初めての音楽稽古。前日まで静岡でIL DEBUの公演に出演し、その前後に抗原検査だかPCR検査だかで陰性であることを確認の上で小千谷入りしました。

河原先生は、まず児童合唱をご覧になりました。子どもに対するご指導を見て私が最初に感じたのは「あ、北村協一先生のメソッドと一緒!」。立教大学グリークラブ現役当時、および卒団してからの数年間が蘇りました。おかげでそのあと自分たちがご指導をいただくときも(北村先生と異なる点も多少あったものの)一言一言が腑に落ち、すぐ対応することができました。

軽やかでleggieroな表現のためということで、事前練習よりぐっとアップテンポになった曲がしばしばありました。

この日、練習のあと、記念ということでピアノソロを2曲、弾いてくださいました。時には力強く、時にはデリケートな、その鳴り響きといったら!! 弾く前に「自分がオペラの現場で素晴らしいと思うことのひとつは、多くの様々な人が同じ目標に向かって力を結集していくところ」とおっしゃってましたっけ。

なお河原先生は小千谷市民オペラ2022「カルメン」を最後にオペラの指揮活動をやめるとのことでした。


2月22・23日、3月6・7日、3月13・14日、3月20・21日、4月3・4日は合唱団だけの練習でした。ただし3月13・14日は音楽と無関係な用事で欠席しました。

2月22・23日の練習では、最初に品田先生が舞台での所作についてゼロから手ほどきをしてくださいました。端的に言えば、姿勢や、歩き方や、会話するときの目など。私は過去3回オペラに出演しましたが、このようなご指導を受けるのは初体験で、基礎を身に着けていないまま出演した過去3回の我が身を恥ずかしく思いました。

そのあとは、もっぱら2月11・12日のレオ先生レッスンで示していただいた基本方針を深めていく立ち稽古を繰り返しました。単に指示をおさらいするばかりでなく、指示を受けていない瞬間について舞台上でやってよいことダメなことなどを品田先生は演出助手のような形で細かく示してくださいました。例えば、ソロプレイでなく積極的に他の共演者と絡み合ってゆこうとか、音楽に合わせて振り付けする「演技」でなく心の動きから生まれる演技をなどと繰り返しおっしゃってました。おかげで合唱団員は段取りに縛られるものとは一線を画した演技ができたように、手前味噌ながら思います。


キャストの中に、フラスキータ役で出演した<ahref=”https://www.facebook.com/mormon.semi”>ソプラノ歌手・関萌子さんがいらっしゃいます。萌子さん(私と同姓なので下の名前で)は小千谷市出身ということもあって時々合唱団の練習に顔を出してくださったり、団内連絡用LINEグループに参加してくださったりし、他のキャストの皆様と合唱団との距離を縮める役割を果たしました。

3月に入ってからソリストおよび合唱に助演として参加する皆様による演出稽古が都内で行われ、萌子さんはその様子をLINEグループで知らせてくださいました。2月11・12日の稽古から変更された部分が結構あり、少なからず合唱団員は驚きました。


4月7日、レオ先生の稽古が急遽追加されました。このとき間に入って合唱団のスケジュールをレオ先生に伝えたのも萌子さんだったようです。前日に演出スタッフ諸氏が会場の様子を視察に小千谷に来た関係ということらしく、舞台監督の幸泉浩司さんもおみえになり、当日の舞台やセットについて説明がありました。

このときも萌子さんから聞いていた変更点から更なる演出の変更がありました。そこを踏まえて私は、細部は本番直前の場当たりで把握することにし、まずは大枠で流れをとらえるというスタンスで練習に臨むことにしました。


4月17・18日、4月24・25日は合唱団だけの練習。演出稽古を積み重ねてゆくにつれ各シーンを反復するペースが上がってゆきました。

ある日。舞台(に見立てたスペース)から退出する際に気の抜けた挙動をした合唱団員を見つけた品田先生から悲しみや怒りを含んだ口調で「合唱団員の中には歌うことが嫌な人も演技することが嫌な人もいるだろうけど、せめてそれは表に出さないでほしい。今回の公演には様々な人の思いが詰まっている。そうした人たちの思いに水を差さないでほしい」という、この練習でただ一回であろう一言をいただきました。これがきっかけで練習場に緊張感が戻り、先生が何かおっしゃる間に発せられる私語も減りました。

そういえば、確か4月17日、同じ施設の別室で河原先生と練習していたオーケストラのもとに合唱団が移動し、いわゆるオケ合わせが行われました。このとき合わせたのは1曲ないし2曲だけだったような。


本番直前の週で追い込みモードへ突入することに備え、ゴールデンウイーク中は体力温存などのため練習が組まれませんでした。ただ、4月25日から合唱団だけの練習としては次回の5月7日まで何もないことに不安感をおぼえる人がいて、4月29日、5月2日、5月4日の3回、合唱団員のみによる非公式の自主練習が企画されました。

4月29日、私は出勤日で不参加。

5月2日に会場へ出かけたら合唱団員のほか品田先生がいらっしゃいました。「もしも皆さんが本番までダメージが残るほどの無茶をするようなことがあったら、自分は公演監督の権限でストップをかける」とおっしゃったあたりから、おみえになった理由を私は察しました。そんなわけで練習は品田先生のご指導のもと進められました。5月2日についてはほぼ音楽稽古、5月4日については立ち稽古(ただし当初の予定より大幅に時間が短縮された)でした。


5月7日は合唱団のみの練習としては最終日でした。練習前、品田先生による舞台メイク講座が催されました。そのあとは今まで同様、立ち稽古のおさらいが繰り返されました。



ところで、2022年に入り、公演成功の機運を高めるための企画がいくつか繰り広げられました。

1月19日から3月22日まで、闘牛場で公演を行うための各種設営費用を募るクラウドファンディングが行われ、2,285,000円のご支援が集まりました。

4月に入ってから、小千谷市内の飲食店16店舗が参加し「おぢやカル麺プロジェクト」が行われました。オペラ「カルメン」にちなんだプロジェクト期間中限定のオリジナルメニューが提供されるというものです。さらに、スタンプラリーとして3店舗の限定メニューを食べた人にそば処 和田「特製地粉へぎそば」乾麺もしくはわたや「みどりのラー油」と、クレープハウス果実の星野屋「割引券」がプレゼントされました。この企画は当初4月28日まででしたが、本番当日まで延長されました。私もスタンプラリーに挑戦し、乾麺をいただきました。おぢやカル麺プロジェクトのポスターはオペラ公演のポスターとともに市内のあちこちに張り出されていました。

また、公演オリジナルTシャツが作られました。合唱団員用(3色が用意され、そのうち私は2種類を1着ずつ購入)と、合唱団員以外の出演者用でデザインが違うとのことでした。さらに、おぢやカル麺プロジェクトに参加した手打ちらーめん勝龍でこのTシャツが販売されました。

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