三条市中央公民館へ「三条フェスティバル合唱団 第15回定期演奏会 〜作曲家・田中達也先生をお迎えして」を聴きに出かけてきた。
出演者・スタッフ・来場者の皆様、お疲れ様でした。
- 「東京混声合唱団愛唱曲集 ローレライ」より
- 編曲:若林千春
指揮:佐藤匠(以降のステージも同じ)/ピアノ:下村江里(以降のステージも同じ)
- 庭の千草
- 埴生の宿
- 峠の我が家
- 月の砂漠
若林さんの編曲は、編曲者ご自身のファンタジーを展開するタイプのもの。後半に演奏された田中達也さんの編曲とはスタンスが異なり、それによるコントラストが興味深かった。
- 混声合唱とピアノのための『はじまりの木』
- 作詩:和合亮一/作曲:田中達也
- はじまりの木
- まばたく木
- 対話の木
- 求める木
ここから、演奏会サブタイトルにもお名前のある田中達也さんの作編曲による演目。田中さんも来場し、何度か登壇して指揮者との対談パートが設けられた。
まずはオリジナル作品。「30〜40代の歌い手のため」に書き下ろされた組曲を1〜2世代ほど年配の合唱団員が歌うことで、人生経験を重ねたことによる寄り添い加減に深みが加わったように感じられた。
- ささやき
- 作詩:和合亮一/作曲:田中達也
この団の委嘱で書き下ろされ昨年の初めに初演された。その初演は聴き逃したが、同年の三条市音楽祭での再演を聴くことができた。そしてこのたびの再々演。
和合さんの詩は作風が多彩で、このたび取り上げられたテキストはいずれも柔和で独特の抒情に溢れた詩。どことなく草野心平を連想するのは福島県という共通点だけではなさそうに私は感じる。
また田中さんの合唱作品も幅広い作風。たとえば実演を聴いたことがある『シーラカンス日和』(もう9年も前の「The Premiere Vol.3」で初演)や『わたしの水平線』(昨年、立教女声が取り上げた)や『この日を捕えよ』(今年5月の六連で初演)や、出版前に譜面を見せていただいた『朝の交響』などと大いにタッチが異なり、興味深かった。
- 時代を彩った名曲たち 〜田中達也先生の編曲から〜
- 編曲:田中達也
- 東京キッド
- 東京ブギウギ
- 地上の星
- Jupiter
ここでも指揮者との対談コーナーあり。このステージだけ演奏者一同は団オリジナルのTシャツに着替えていたが、田中さんは背広のまま。
ここで演奏されたものには出版社の委嘱で書き下ろされた編曲が含まれる。そういう曲の実演に接する機会は少ないのだそうで、田中さんはお喜びであった。
もうひとつ、田中さんの発言で印象に残っているのは、ポップスを合唱に編曲する際のスタンスを尋ねられての返答「原曲を聴いたときと同じ景色が見えるような編曲を心がけている」。合唱だと歌パートの発声スタイルや共演楽器が原曲と異なるケースが大半だけれど、田中さんの編曲は確かに原曲のキャラクターが最大限に生かされており、職人芸と呼んでも過言ではなかろう。
余計かもしれないことを付け加える。佐藤さんが合唱指揮者として独立してから合唱入門者向けの企画を手掛けるようになったが、そこでは田中さんの編曲が何度も取り上げられている。あと、田中さんと佐藤さんは脱サラして専業の音楽家になった点が共通する。
アンコールは田中さん編曲による「東京ラプソディ」。客席から手拍子が自然発生したことが編曲および演奏会の成功を物語るように思う。