作曲家の三善晃氏が去る10月4日午前に心不全で亡くなられました(文化功労者の三善晃さん死去 作曲家 – 47NEWS(よんななニュース))。どうぞ安らかに。
日本合唱史において三善氏出現以前/以後がひとつの境目をなすともいえるぐらい、大勢の後進作曲家へ直接間接多少を問わず影響を及ぼしたことは、既に他のどなたかが指摘なさっているであろうと思います。
パナムジカに楽譜・CDリスト「三善晃追悼ページ」が設けられています。ただしリストアップされているのは三善作品だけを収録した商品だけで、氏以外の作品も併録された商品は別に検索して探す必要があるみたいです。
せきが演奏に参加したことのある三善作品は、今のところ次の4曲です。
- 二群の男声合唱とピアノのための「路標のうた」(1993年「第42回東京六大学合唱連盟定期演奏会」合同演奏アンコール)
- 男声合唱版『唱歌の四季』全曲(2004年「第3回東京六大学OB合唱連盟演奏会」立教大学グリークラブOB男声合唱団)※初演
- 『五つの日本民謡』より「佐渡おけさ」「ソーラン節」(2009年「第1回 にいがたコーラスアンサンブルフェスティバル」新潟ユース合唱団)
- 混声合唱版『唱歌の四季』全曲(2011年「レディースクワイヤJune 2011コンサート」、2012年「第9回アカンサスコンサート」)
新潟ユース合唱団で歌った「佐渡おけさ」「ソーラン節」については、2009年10月22日付け記事「あさって歌う2つの民謡合唱曲」に記しました。また、『唱歌の四季』、特に男声合唱版のことは、2012年1月11日付け記事「三善晃編曲『唱歌の四季』にまつわる折々」に記しました。
あ。『唱歌の四季』は終曲「夕焼小焼」だけ先行して、2003年「第24回立教大学グリーフェスティバル」合同演奏アンコールで歌ったことがあります。
客席で生演奏に接したことのある三善作品は意外と少ないように思います。覚えている限りだと順不同で『のら犬ドジ』『動物詩集(女声合唱版のみ)』『三つの抒情(オリジナルの女声合唱版と、福永陽一郎編曲による男声合唱版)』『嫁ぐ娘に』「雪の窓辺で」『唱歌の四季(同声3部合唱版)』『三つの夜想』『縄文土偶』「ゆめのはじまり」『地球へのバラード』『遊星ひとつ』『蜜蜂と鯨たちに捧げる譚詩』「その日 —August 6—」ぐらい。なお、最初の2つはせきの現役時代に立教大学グリークラブ女声合唱団が演奏に参加したステージです。
実演体験から、音取りは難儀でも、楽曲の姿が分かってくると霧が晴れたようになり、労苦が喜びに転化するという感覚を味わってきました。そこに客席や録音録画で見聞きした経験を重ね合わせると、三善作品は音楽の流れに沿った起伏が明確で、しばしば強いカタルシスを伴う曲が多いという印象を抱いております。
三善氏は多くの合唱曲を残しましたが、混声合唱や女声合唱のために書かれたものが大半で、男声合唱作品は十余作です。
オリジナルの男声合唱曲、もしくはご本人による男声合唱編曲を、以下に列挙しました。譜面が出版されているものは曲名から版元の情報ページにリンクを貼っています。なお、2024年4月14日にデータを更新しました。
- 男声合唱とピアノのための『三つの時刻』(1963;1986復刻/丸山薫/ピアノ)カワイ
- 道(1969/伊藤海彦/ピアノ)NHK出版→音友[「男声合唱のための グリークラブ・ソングセレクション I – リフレイン」収録
- 男声合唱のための『王孫不帰』(1970/三好達治/ピアノ,スレイベル,木鐘)全音
- 男声合唱のための『五つのルフラン』(1977/無伴奏)編曲集;カワイ
- 男声合唱組曲『クレーの絵本 第2集』(1979/谷川俊太郎/無伴奏)混声版あり;カワイ
- 男声合唱とピアノのための『縄文土偶』(1985/宗左近/ピアノ)カワイ
- 二群の男声合唱とピアノのための「路標のうた」(1986/木島始/ピアノ)カワイ
- 男声合唱とピアノ(四手)のための『遊星ひとつ』(1992/木島始/4手ピアノ)カワイ
- 男声合唱と連弾ピアノのための連詩「いのちのうた」(1993/三善晃[構成]/連弾ピアノ)未出版
- へんしんのうた(1993/三善晃/無伴奏)音友[「男声合唱のための グリークラブ・ソングセレクション I – リフレイン」収録
- 男声合唱のための組曲『だれもの探検』(1994/木島始/無伴奏)カワイ
- 男声合唱と四手ピアノのための「一人は賑やか」(1996/茨木のり子/4手ピアノ)独唱曲からの編曲;混声版あり;カワイ[日本合唱指揮者協会(編)「リーダーシャッツ21」収録]
- 『唱歌の四季』(2004/2手または4手ピアノ)女声・混声版からの編曲;未出版
かつて『三つの時刻』と「路標のうた」の楽譜は合本で販売されていたのですが、ODP化に伴って別々になったんですね。
音源について、現時点では『王孫不帰』『遊星ひとつ』「一人は賑やか」『だれもの探検』全曲や『五つのルフラン』収録曲の一部が収められているCDがパナムジカで購入できるみたいです。『三つの時刻』『クレーの絵本 第2集』『縄文土偶』「いのちのうた」「へんしんのうた」については、クール・ジョワイエによる「いのちのうた」で、『五つのルフラン』全曲については晋友会合唱団による「唱歌の四季」でカバーできるのですが、残念ながら入手困難となっています。
動画サイトでも音源や映像がいろいろ転がっています。著作権的にOKっぽいものだと、法政大学アリオンコールのOBさんがYouTubeで公開している同団現役の演奏会動画が挙げられます。
「公的な作品リストには掲載されていない」ため上記から除いた作品について、参考までに安藤龍明氏のツイートを紹介しておきます。
三善晃《五月》《いづかたに》 男声合唱曲。おそらく無伴奏。
1964年5月13日、東京男声合唱団第13回演奏会にて初演(砂防会館ホール)。指揮は佐藤眞か渡辺顕麿のどちらか。作詩者は不明。前年に男声合唱とピアノのための《三つの時刻》が作曲されているが、それに続く男声合唱曲となる。— 安藤龍明/Tatsuaki Ando (@scaffale_fonico) 2013年10月5日
後年、男声合唱のための《王孫不帰》(1970)について「第二曲目の男声合唱曲」と語っている(http://t.co/uisZUiYA9a)。件の2曲は作曲家によって「破棄」となったのか、作曲家の記憶から忘れられたのか。三善晃の公的な作品リストには掲載されていない。
— 安藤龍明/Tatsuaki Ando (@scaffale_fonico) 2013年10月5日
東京男声合唱団の創立五十周年記念誌によると、「その頃のTMCの力では指揮者を満足させるまでには至らなかった様です」とある。同団で演奏されたことは確実であるが、その後の再演記録は確認できない。私事になるが、以前、とある男声合唱団に蘇演を検討いただけないかと伝えたことがある。
— 安藤龍明/Tatsuaki Ando (@scaffale_fonico) 2013年10月5日